外の風
公園の噴水の近くに来ると小さな子どもだった頃の思い出がよみがえってくる。
こんなにお天気のいい晴れた日は何もかも忘れてしまって青空の下、公園の噴水の飛び散る水を見に来るのが一番いいと考えてここに来てみた。
そうしたら薔薇の花が満開で、辺りには甘い香りが満ちていて、ほんとに夢のようだった。
ずっと家から出られなかった。
子どものこと、母のこと。
でも今は少しだけ解放されて時間ができた。
空気が美味しい。
深呼吸をして見る。
薔薇の香りが含まれているきれいな空気を吸い込むと、今までのうちにこもっていた自分から元の自分に戻っていける、そういう気持ちに自然になれた。
晴れている。
青い空がくっきりと私の今を映し出し悲しい気持ちにさせるけど、薔薇の香りは容赦なく降り注ぎ、包み込み、私の内も外もみんな薔薇色に染め変えて心を晴らしてくれるのだった。
雲が流れていく。
どこまで飛んでいくのだろう?
聞いてみても、答えてはくれなくて。
水しぶきを上げながら噴水は勢いよく冷たくて透明なきれいな水を噴き上げて子どもをよろこばせている。
きゃあきゃあとはしゃぐ子どもの声が、まわりを華やがせてくれて輝きを増している。
こんなふうに外に出て、深い息ができる日が来ることを知らないでいたけれど、思いがけなくここに来てこんな景色を見られたことは幸運と言うしかなくて。
空がこんなに青いのを自分で見る日が来るなんて。
生きてきてよかった。
本当に。
優しい風が運んでくるのは甘い甘い薔薇の香りと子どもたちの歓声。
噴水の水しぶきはきらきらと日光を反射して、飛び散って、弾けて。
虹が見えた気がした。
噴水の向こう側に。
小さな虹が浮かんでいる。
こんなふうに生きてることをよろこべる日が来るなんて。
生きていてよかったな。
生きてきてよかったよ。
ありがとうございます。 嬉しいです。 みなさまにもいいことがたくさんたくさんありますように。