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香水のエピソード

みんなすごいな。
って思いながら、では自分は?って考えた時、わからないって考えるようになりました。

何もわからないと思うようになってからかなりの時間が過ぎました。

どうしても子どものことを守りたかった。
実家にも迷惑をかけたくなかった。
そして自分が努力したら何かができると思っていました。

何にもわからないままここまで来てしまいはしたけれど、少し止まってしまいそうになっています。

こんな無理なこと、父が生きていたら多分すごく叱られていたんじゃないか?と思うことが増えました。

でもやめることができなくて。
自分でもわかりません。


少し前に読んだ上野千鶴子さんのエッセイに亡くなられたお母様が残した菫の香りの香水を少しずつ使っていたというエピソードが書かれていました。
お母様への複雑な思いをふり返られながら残された香水を少しずつ使っていく。
おなじ香りの香水は探しても探しても見つからなかったのだそうです。
減り続けていく香水を惜しみながら、それでも使う。

香水の持つ力と、女性らしい思いと、お母様への複雑な思い。

そういういろんな事々を読むことで自分の意識が広がっていき考えが深まりました。

上野さんはお父様がお母様の最期をずっと見守り続けて大切にされているのを見て、お母様はしあわせだったんだと思われたのだそうです。

人が生きていつか向こう側に行くことは確実に決まっていて今を生きることにひたむきになることが一番自分を大切にすることなんだと思うけど、行き暮れてしまった時、立ち止まってしまった時、自分を救ってくれるのは一体なんだろう?そういう疑問が湧いてきて止まらなくなっています。

失敗を繰り返すうちに、自分が今まで守られてきたことを強く感じて、感謝の気持ちが湧くとともに、自分自身に対する不安も少しずつ膨らんで、怖くなっています。

そして新たに周りのしっかりと歩いている人たちに対して尊敬の気持ちがふつふつと湧いてきて、自分ももっと頑張らないといけないと考えました。

ずるい人、曲がってる人、そういう人達もきっと生きるために一生懸命な人ばかりです。

私が真っ直ぐひたむきに頑張る以外仕方がないということなんだと思います。
でも今はできなくて。


上野さんの香水のエピソードと、上野さんのお母様が亡くなられる前、家族みんなに反対されてもお父様がお母様の看護を自分がすると決めて貫いたこと、その文章は私の心に深く突き刺さり、重く強く残りました。

「愛する」という言葉の意味を理屈ではなく感じてその言葉に痛みさえ感じました。

そんなふうに「愛」というものを大切にできる、してもらえる人って、この世の中にどれくらいいるんだろう?
そう考えると、なんていうか、家族の愛、お父様からお母様への愛だけではなくて本当に深い慈しみの気持ち。
そういうものを深く感じて泣きたいような気持ちになってしまいました。

そこには本当に人の尊厳を大切にしようとするお父様の思いがあらわれているように感じて、上野さんのありかたの底にはそういうご両親のありかたがあるのではないか?とさえ感じてしまいました。

上野さんはそういうご両親のことを文章にされることでご自分の心や思いや体験をあらたにとらえ直されていて、そして自分自身の理解も深められていて、考えを切り替えられるきっかけにさえされているようにも感じられました。
それを読んだ人たちはまたその文章に喚起されて自分自身の考えに触れることができる。
読書をすることの意味は、他の人の考えに触れていくことで自分のことを知るきっかけを作るということでもあるのかもしれないと感じました。

菫の香りの香水のこと、香水を使って気持ちの切り替えをしているという女優さんの言葉でそっと思い出すことができました。

素敵なエピソードですよね。


ありがとうございます。 嬉しいです。 みなさまにもいいことがたくさんたくさんありますように。