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2-9 たのしい受験指導への道(後編)

ボクのクラスの大学受験組は,「大学をAO枠で受験する子たち(5人)」「大学を指定校推薦枠で受験する子たち(6人)」「公募推薦枠で受験する子たち(3人)」がいました。結果から言えば,全員第一志望に合格!今回は,その中で「公募推薦枠」の3人の子たちに注目を当てた資料です。

●いわゆる,「スクラム組んで」

★☆色々な先生とやることで,自分の強みと直す部分を明確にできたのがよかった。数人の先生とたくさん回数を重ねるのもいいけど,自分がやった感想としてはたくさんの先生と数をこなしたほうが,自分が思いもしなかった質問をしてくれたりしてそこから答え方の幅も広がってよかったと思う。
あと,自分の行く学科や学部と直接かかわる先生とやると,他の先生より専門的なことを質問してもらえるのでいい練習になる(ナミさん)。
★☆忙しいのに時間をつくってくれて練習しやすい環境作ってくれたりと、とにかく,先生たちの優しさに感動した高3の冬でした。
P.S.上村先生は試験の前の日,4時間くらいつきっきりでアドバイスしてくれてあれだけ言われたから絶対受かってやろうと思うきっかけになりました(タキモトさん)。
★☆私はたくさん練習して自信をつけないとだめなタイプだと分かってたから,最初は辛かったけど,たくさん色んな先生と練習して良かった~~。あと,欲を言うと,面接官が2人いると結構雰囲気とか違うから,もう1,2回やっとくとなお良かったかもしれん。(タケナカさん)

3人の生徒に共通して「いろいろな先生とやれてよかったー」という感想を残しています。とかく、担任は自分ひとりで頑張ろうとするかもしれないけれど,自分(教師)にとっても,生徒にっても,他の先生に協力してもらうのは必要不可欠なのかもしれません。(でも,気持ちよく引き受けてもらうために,「事前に相談しとく」とか,面接役の先生用に履歴書や質問書の用意,今までの記録などを準備しとくと,「頼まれやすさ」という意味でも,「誠意の伝わり感」という意味でもよいのかもしれません 笑。それに,モノが揃ってると,年上の先輩教師に対しても,少しは頼みやすくなりました。ボクの気分的に 笑)

面接指導を「担任が見る」か「他の先生が見る」かは,子どもたちにとってはおおよそ関係ないようです(メンタル的に関係ある子も少しいるけど)。逆に「担任だとやりづらい」とか「やりやすすぎて困る」とかいろいろ言ってくるし(笑)。

でも,すぐに他の先生に頼る子が現れると「オレじゃないのか…」なんて担任が気にしちゃったりも(笑)。

●本 『たのしい進路指導』 の活用

この本でもたくさん引用させてもらっている『たのしい進路指導』。

試験本番が近づくとき,著者の中さんは,本文の中で,学期後半に配る進路だよりに対して,下記のように書かれています。

3学期はいよいよ試験などの本番がやってきます。本番前は子どもたちは「これで失敗したら終わりじゃないか」と考えて極度に緊張し不安になります。そこで「しっかりしろ!」と叱っても逆効果。それより,こんな時期こそ「どっちに転んでもシメタ!」という考え方を子どもたちに知らせたいもの。「人生というのはそういうものだ」「失敗したって終わりじゃないんだ」ということを知ることが,じつは子どもたちにとって一番のはげましになるのです。「応援者としての先生」の出番です。

(『たのしい進路指導』 -子どもたちの不安と関わる- 中一夫著 仮説社)

中学生に対しての進路指導通信ですが,不安な気持ちは中学生も高校生も一緒。むしろ,高校生の方が人によって進路は様々。失敗して浪人もありえたりするから,不安もひとしおなのかもしれません。

そんな中さんの進路通信。最初は「中学生に向けた文章だから,打ち直したり,一部は自分で考えたりするべきか…」と頭をよぎったのですが,「伝えたい内容は一緒!」と思いなおし,そのままコピーして,朝読の時間あたりに読んでもらう材料としたのでした。試験1~2週間前から,朝印刷して渡すように(推薦入試を受ける子たちだけに渡していたけど,全体に配ってもよかったかな)。その感想は…

★☆受験についての失敗談とか載ってたけど,結果みんな良い思い出になってたり,成功してるから,笑っちゃいけないんだけど,読んでておもしろかった(タキモトさん)。
★☆朝読にちょうど良い!!あのとき,なんか精神不安定だったから(笑)。(タケナカさん)
★☆先生が書いてくれた紙(後述参照)とリンクしてて,つなげて読めた。今読み返してもいいこと書いてるなぁーと思います。(ナミさん)

試験直前の時期だったからこそ,中さんの想い通り,生徒たちの心にそっと寄り添うことができたんじゃないかな。

使ったページ(候補含む)は

「自分にあった職業って」,「とりあえず決めることのすすめ」

「自信を持っていきるために」,「ある学校選択の話」

「ミスした時に」,「どちらに転んでもシメタ」

「大人への第一歩」,「不安と緊張の中で」,「今からここから」

※ というわけで,『たのしい進路指導』は,中学校の先生に限らず,どの校種の先生にとってもおすすめの本です。近くの書店に売ってなければ出版社(仮説社)かAmazonあたりで。

●進路通信に添えて。

★☆「先生の紙」は,予想外すぎて,うれしすぎて,すっごいパワーになった。実は泣きそう(笑)。特に私は,先生になりたいから,やっぱり先生になって自分もこれしたいーってすっごいモチベーション上がった(これも本番持ってった)。(タケナカさん)

この竹田さんが書いている「先生の紙」というのは,前述させてもらった「中さんの進路通信」に添えた,ボクのメッセージです。「中さんの進路通信のそのままコピーでいいじゃん!」と方針を決めたものの,本のコピーを渡すと「私たち高校生とは全然別の出来事」と感じてしまう可能性があるじゃないかと思い,進路通信と目の前の子たち,そして担任のボクの橋渡しみたいなことができたらという想いで,毎回B5/1枚の紙を添えることにしたのでした。

(全文は別記事で)

★☆先生もいろんな人生の経験してるんだなぁ~って思って,その通信見た時は人生なんとかなりそうって思った。でも読んでたら,感動した。(タキモトさん)
★☆あやかとまゆと先生と時々,他の人の話も出てて読みやすかったです。へーって思うコラム的な内容があったのもよかった。(ナミさん)

(ボクが添えたメッセージたち)

「完璧を求めすぎず」「人間であるから」「絶望はあるのか」「誰だって不安」「早めに決めたらエラいのか」「短所はホントか」「面接準備の悩みは」「苦労は余計か」   (全文は別記事で)

ところで,進路通信&メッセージを渡したところで,その場や口頭でリアクションが返ってきたわけではありません。すぐに目を通さないことだってあります(特に授業の課題テスト当日の日とか 汗)。

だからと言って「読んでいない」「何も感じていない」と判断するのは違うようです。そのことは感想文でも見えてくるけれど,他にも,「先生!私明日通院で休むから2日分のアレ(進路通信と先生の紙)くださ~い!」なんて言われたこともあれば,直接「進路通信とあの紙ど~う?」とボクが聞くと,生徒それぞれの感想を語ってくれました。こうやって,揺れ動く進路の時期だからこそ,ふと立ち止まったり休みたいときに,触れる文章・考え方があるといいなと思ったのでした。

 

※  一方で,「ただでさえ進路の時期で教師も忙しいのに,こんなのを書くなんて・・・」と思われた方がいるかもしれません。でも,あくまで『たのしい進路指導』に掲載されている進路通信を紹介するために「オマケでつける文章」のようなつもりでした。時間もない中で「そのまま本のコピーを配ろう」と思っていたのですが,中学生に向けての文章が主なため,何かを添えて「これは中学校の先生が書いた文章だけれど,みんなにも通じる所がたくさんあるよ」と伝えたかったのです。

だから,文章量が少なくても,うまくまとまらなくても,本が補ってくれます(笑)。そんなつもりで書いていた文章ですから,かける時間も,家に帰ったあとの15~20分程度。たまには1時間くらい時間がかかってしまった時もあるけれど,あくまで「その子に対して手紙を書く」みたいな気持ちでキラクに書いたのでした。

●当日に向けて

 そんな面接練習と進路通信を配る日も今日が最後。翌日は推薦入試の日のこと。ボクは3人に対してエールを書いたキットカットと,手紙を渡したのでした。こういう「一大イベントの時には手紙やお菓子でエールを送る」というのは高校生たちのマネ。大学の推薦入試にチャレンジする子は予定通り3人だったので,負担感もなく,サラっと書くことができました(しかも,本文のほとんどは『たのしい授業no.457』で紹介されている山路敏英さんの<受験生を励ます年賀状>のマネ。そのままマネできるのはありがたいな)。

タケナカさんへ  2017.11.18  
いよいよ本番を迎えました。「うまくいかなかったらどうしよう」なんていうことばかり考えてはいませんか? もちろん推薦で合格するのは素晴らしいことだけれど,たとえ落ちても次の選択肢が用意されていればいいのです。一般受験だって用意されています。「たかが受験」です。失敗しても,人生が狂うわけではありません。でも,「されど受験」です。とりあえず目の前のハードルを全力で飛び越えましょう。今までのまゆの努力に自信をもって,悔いの残らないようにがんばってください。
そして,もしも第一希望がかなわなかったとしても,長い人生「どっちにころんでもシメタ」は必ずあるのです。それは目の前の「希望」がかなったときより,はるかに大きいものかもしれません。
― 「そんなこと言ったって,ただの<なぐさめ>でしょ。」と思うかもしれません。そんなときは,担任,高野を思い出してみてください。第一希望ではない,北海道の教員になっているけれど,なんだかたのしそうに仕事をしてるように見えませんか…?
「どっちにころんでもシメタ」
あらためて,これがボクから受験生のまゆに贈る言葉です。
そしてもう一言。スケジュールでは,小論文を受けた後,面接ですね。たとえ小論文がどんな出来であろうと,面接が終わるまではクヨクヨしないこと。だって,例えだけど,「彼氏が昔の彼女のことを今でも気にしたり,スマホをいじったりしていながらまゆとしゃべっていた」ら,なんだか不快な気持ちになるでしょう。面接官に,全力のまゆを見てもらいたい…。魅力をそのまま伝えたいですね。 
それに,自分が「難しかった!」と思っていたら,たいてい,隣の子だってそう思っています。受験ってそんなもんですよ。 悔いを残さずに!fight!

★☆前日は手紙もくれて最後まで諦めたくないと思ったのも先生のおかげ!!ありがとうございました(^-^)。テスト始まる前は余裕こいてみんなからもらった手紙読んでたけど,テスト始まった瞬間現実戻った感じがして一瞬真っ白になったのは今になっておもしろ話。早く受験終わってほしかったけど,今はさびしい気もするけど,もう戻りたくないと切実に思います。(田タキモトさん)
★☆。友達からの手紙とかいろいろとパワーグッズを持ってったので,パワーになった気がする。緊張はしたけど,やれるだけやる!ってふっきれたのが良かったのかもしれません。(タケナカさん)

●結果は?

 推薦入試の結果は,無事全員合格!です。倍率がそれほど高くない(1.1~1.5倍)とはいえ,模試の学力結果ではC~D判定だった3人。ボクも本人たちもホッとしたのでした。

 その後,1月に行われたボクが所属する研究会の教育研修の場には,学校の教師を目指すタケナカさん,ナミさんの姿が!研修に参加するのと合わせて,売り場でわたあめ器を売る姿はとても頼もしいものでした。参加費も高校生にとっては高い(4000円)のに,準備から含めて参加してくれたのでした。

また,卒業後はナミさん,タキモトさんから手紙が届きました。元気にやっているようだし,高校時代も良い思い出の様子。苦楽を共にしたからこそ,仲も深まるのかもしれません(担任も? 笑)。

 そんなはじめての高校3年生担任。そして進路指導。迷うこともたくさんあったし,次に3年生を担任するときはもう少し計画性が持てればなぁ~とか,研究会の進路指導分野の文章をもっと読んでおきたいなぁ~など,まだまだ勉強不足の部分もあります。けれど,彼女たちの感想文を読んで,「押しつけない,嫌がられない進路指導」はできたんじゃないかな。

そんなことを思いながら,届いた手紙を何度も読むボクがいたのでした。

●卒業後に届いた手紙

高野先生へ
 こんにちは。本当は卒業式に手紙を渡したかったんですけど,私の準備不足で当日までに用意できなかったので,今,書いています。(笑)。
 高野先生は,1年生の時から授業でお世話になっていたけれど,まさか(?)担任になるとは思っていませんでした。面白くて,良い意味で先生らしくなかったので,困った時とかすぐに相談できました。特に進路を本格的に決めるとなった頃からは,本当にお世話になったなぁと思います。小・中・高と色々な先生と関わってきたけれど,ここまで親身になってくれたのは高野先生だけなような気がします。まぁ,それがかえって更に悩んだりすることになった時もあるけれど,(笑)一緒に頑張ってくれてるのが伝わってきて嬉しかったです。添削の時におごってくれたロイヤルホストのパスタもごちそうさまでした。
あと,1月にあったガトキンでの研究会も良い経験になった,というか単純に楽しかったです。色々な先生方の話も聞けたし,そんなに好きじゃないと思っていたわたあめもすごく美味しかったし(笑)冬休み中にわざわざ学校で下準備をして,ガトキンまで足を運んで良かったなと思います。タケナカさんと,わたあめを売りながら「高野先生の生徒と一緒に何かしてくれるところいいねぇ」って話もしたりして,タケナカさんのいつもの調子ですごく熱弁してましたよ(笑)。研修会,お誘いありがとうございました。
 4月からは,石狩翔陽高校に高野先生がいるかわからないけれど,もしいなかったとしたら寂しいかなと思います。
 でも先生が私に言ってくれたように,高野先生もどこでも大丈夫ですよ!(笑)。翔陽に残ることになったらまた遊びに行きます。あーちなみになんですが,2組の中で高野先生に何かお礼しようって話も出たんですけど,言い出したのが卒業式の直前で話が進まなさすぎてお蔵入りになってしまって…ごめんなさい。2組のエンジンブンブンかかる遅さを痛感しました…(笑)。とはいえ,私は3-2の担任が高野先生で良かったし,そのおかげ(もちろん2組のみんな含め)楽しい2年間でした。まだまだ先のことはわからないけど,私も頑張ります。長文失礼しました。体に気をつけて。どこかで会ったら,「やぁ」って言って下さい(笑)。本当にありがとうございました!H30.3 ナミ

高野先生へ
 卒業式の時に誰かに手紙書くっていう企画のやつ,遅くなったけど先生に書くことにしました。元気に働いてますか!!
 最近翔陽荒れていると風のウワサで聞いたけど,新しい学校はどんな感じですか,通勤はチャリで通ってるんですか?(笑)
 大学入って1週間くらいは環境と生活が変わりすぎて高校戻りたいってずっと思ってたけど,すぐに友達できて今はもう毎日Enjoyが続いてます!!!
 まぁ1つ言えるのは,周りが頭良い人ばっかりだからノートの取り方とかレポートの内容が自分のレベルと違いすぎて逆におもしろさを感じます(笑)。
 英語はクラス分けされて予想通り1番下のクラスでBe動詞から勉強してるけど,周りの人も彩夏と同じレベルだから,これまたびっくりしました。
 あと,頭良い人は堅いイメージだったけど,みんなおもしろくてノリノリだから藤女子にして良かったとつくづく思います。
 放課後はバイトとサークルをして,サークルは悩んだ結果,テニスを続けることにしました~!!北大系のサークルなのに北大の人一人しかいないし,2:8の割合くらいで男子ばっかりだけど,男子上手だからラリーしてて楽しいってことに気づいて友達と一緒に入ることにしました!という報告でした。高校の時の友達ともよく遊ぶけど,外見変わっても,みんな中身変わってないから安心します。
 今も月1くらいで1年生の時元4組だった人たちとバカみたいに騒いで仲良くしてます。高校も楽しかったけど,大学はその倍楽しいから毎日楽しく過ごしてまーす!!
 先生も変わらず,生徒想いのままで学校でも楽しい生活送ってください!!10年後くらいに会った時,ババアとおじいちゃん先生(仮)になってもちゃんと覚えててくださいよ!!!
 P.S お母さんが「先生元気にしてる~?」とつぶやいていました。
 以上。大学生のタキモトでした。

(おしまい)

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