見出し画像

もしもの備えは「人の輪」から

ある町内会長が若かった頃、海外の空港で銃乱射事件が起きたその場に居合わせてしまった事があったそうだ。幸い町内会長自身は被害には遭わなかったが、ひどく心細い思いをしたという。当然飛行機は全て止まり、先の計画はことごとく変更しなければならない。今晩どこで過ごすかも決まらない。もちろん日本語でのサポートなど無い。でも、そこでたまたま出会った同じ境遇の見知らぬ日本人の顔を見た時、心からホッとしたという。

話に引き込まれていた私もホッとした。

不思議なことだ。たまたま出会った、同じ境遇の、見知らぬ人。この最後の「人」の文字が「日本人」となるだけで、なんともホッとするのだ。これがさらに「知り合い」だったらどんなに心強いだろう。これが人の輪の力だ。

その町内会長は地域の防災という観点から、町内会自治会連合会を動かして大規模なフェスを起こした。その後数年間、秋の1日は芝生の上でフラや軽音楽のステージを楽しみながらフリマや飲食を楽しんだ。しかし町内会長が代替わりすると、フェスはすぐ取りやめになった。楽しいイベントは下準備が大変なのだ。この遊びの1日を通して地域住民が出会う自然な交流は楽しさばかりが目について、本来の目的が理解されないようになっていった。しゃっちょこばった「防災イベント」なんて決まりきった人しか出てこない。昼間っからビールも飲める、地元野菜も買える、となると、参加者の幅がぐっと広がる。

残念だなあと思いながらも、そういった地域活動は人によって変わるものだ。もちろん私にはできない。

そんなできない私に、「チラシ作ってくれない?」と声をかけてきた人たちがいる。かつてのママ友たちだ。チラシならできるぞ。「地域の小さい子や新米ママたちが安心できる場を作ってあげたい」「うちの孫も一緒に遊ばせたい」「公園でお話会やろうって言ったら、子どもたちのためにってたくさんパフォーマーが現れた!」楽しそうに語る姿にこちらも心動かされた。ママ友といってもそんなに親しくしていたわけではない人たちが、いつの間にか心豊かな地域のリーダーになっていた。

「喜んで!」とばかりに引き受けたのがこちらのチラシ。

皆様どうぞおいでください

子どももシニアも笑って学べる!〜とコピーを入れたら、大きく頷かれた。「これ、これよ。これなのよ。何しろみんなお互いがお知り合いになるところから始めないとさあ、いざって時に動けないじゃない。でも笑って築いた関係でないと、長続きしないでしょう。」

防災袋も大事だし、食料などの備蓄も大事、耐震化なんてもっと大事。でも、ご近所さんとの普段の関係が良ければ、きっと、混乱の中でも力を合わせて立ち直っていけるのだと思う。

いやいや、そんな絆が発揮される機会がないのが一番良いのよ。ただただ楽しく、地域で遊べたらそれが一番。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?