【ジェネレーターとナビゲーター】TCS初代校長・市川力さん6/7 『探究対談』
——「ジェネレーター」という言葉が出てきたけど、ジェネレーターを定義するとどうなるの? ラーンネットではスタッフのことを「ナビゲーター」と呼んでいるのだけど。
市川:端的に言うと、どんな対象でも面白がってしまう人、好奇心が極めて高い人がジェネレーターですね。人間はみんな好奇心を持ってるから、その意味では全員ジェネレーター。でも多くの人は好奇心にフタをして、ジェネレーターをやめてるんですね。ジェネレーターは、フタをしないで自分の関心や好奇心を持ってあれこれやってみることを面白がる人です。
ジェネレートとは「何かを生み出すこと」という意味がありますよね。また、「発電する」という意味もあるように「エネルギーを発生する」ことでもあります。僕の役割は、子ども達と一緒に、対等な立場で、ともに試行錯誤すること。対等だから僕も自分の意見やアイデアを率直にぶつける。
それを聞いた子どもは、「面白いこというじゃんこのおっちゃん」と思って、大人の言いなりにならず、自分も素の意見を返してくる。さらにこれを見ていた他の子どももジェネレートされて、面白い発想を重ねてくる。
つまり、ジェネレーター自身が自分をジェネレートすることで、相手がジェネレートされ、そのうちお互いにジェネレートしあう連鎖が促進される。そしてこのプロセスの果てにアイデアやモノがジェネレートしてしまうということです。
——子どもたちと接する大人の影響は、すごく大きいですよね。ラーンネットは初期の頃、子どもたちに自由に動いてほしいなあと思って、ナビゲーターがあまり動かない、意見を言わないようにしたんですよ。そしたら子どもたちも全然動かない。なのでナビゲーターが動いたり喋ったりするようにしたら、子どもたちもよく動くようになった。
子どもって、大人をすごくよく見てるんですよね。ちょっと変わったことを言った子に対して「ナビゲーターはどう反応するだろう?」とか、よく観察しているんです。大人がネガティブに反応すると子どももそうなるし、ポジティブに反応すると、子どももそうなるんです。すごく影響力がある。
市川:ジェネレーターは、子どもが何か言った時に「どう指導しようかな」とか「悪いことを言ったから、良い方向のアイディアに修正しよう」とか、そういう戦略を一切練らない。むしろ「そうきたか!」と面白がって受けとめる。対象をコントロールしようという意識がないですね。
ここで大事なのが自分が面白いと思うことを伝えるのではなくて、相手が出してきたネタを面白がってしまうこと。天から降ってきたネタに反応し、その反応が周りに伝播していくと、全然アクティブじゃなかった子がジェネレートされて動き始める。それによってまた僕が影響を受けて、さらに増幅されてジェネレートして…と連鎖は止まらない。
——神経細胞が活性化していくようなイメージですよね。リキさんみたいに自分の好奇心でぐわーっと人を引っ張っていける人って、すごく貴重ですよね。自分自身がわぁーって溢れてる。
一方で、子どものそばで1人1人をよく見て、子どもに寄り添ってあげられる人がナビゲーター。そっちもやはり重要ですね。ジェネレーター的な要素が強い人と、ナビゲーター的な要素が強い人と、バリエーションがあるといいなと思います。1人の人がバランスよく両方の要素を持ってることもあるけれど、偏ることも多いだろうし両方のタイプが必要だろうなと。
数的にはナビゲーターがたくさんいたほうがいいですね。1人のジェネレーターが影響を与えられる数は多いけど、1人のナビゲーターが見られる子どもはせいぜい7人とかかなあ。ジェネレーターだったら、何百人相手でもやっていける。
市川:確かに何百人相手でもやれると言えるかもしれないけれど、それは、一緒にいる集団が僕のアイデアに同化するからでも、誰かの意見に同化するからでもない。誰もがそれぞれ自分の持っているアイディアの面白さに気づいて、ジェネレーターになってしまうからだと思うんですよね。
最初のジェネレーターは僕かもしれないけど、影響しあって活性化すると、まわりもジェネレーターになっていく。その辺のところを僕は今後、さらに理論的にも追究してゆきたいと思っています。
——ジェネレーターは、活性化っていうのがキーワードですね。自分の好奇心や関心にフタをしてる人に対して、関心があるということを気付かせる。
市川:そうです、そうです。
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