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【そもそも大人、探究できてる?】TCS初代校長・市川力さん5/7 『探究対談』

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最近、学校のカリキュラムや学習塾で耳にする「探究」という言葉。なんとなく意味はわかっているつもりでも、「探究」とは、そもそも何なのか。これからの時代に必要な力についてアンテナを張っている人なら、1度は考えた問いではないでしょうか。

この「探究」の本質を、探究賢者とQ責任編集・炭谷俊樹が話していくのが、『探究対談』です。第1回目のゲストは、探究型の学びを行うマイクロスクール・東京コミュニティスクール(TCS)の初代校長であり、『探究する力』の著者である市川力さん

ラーンネットは設立から23年、TCSは設立から15年。時代に先駆けて探究型の学びを実践してきた2人が考える「本物の探究」とはなにか。実践してきたからこそ見える、今の景色とは? 「すみさん」「リキさん」と呼び合う2人が、15年前の出会いの様子から語りつくします。

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市川:僕がTCSを卒業した最大の理由は、一般的に「子どもを何とかしたい」という意識だけで学びが語られることへの違和感でした。大人は勝手に線を引いて、私は見守る人みたいに思っているけど、「子どもは十分探究しようとしている。むしろ大人自身が探究しようとしていない方が問題なんじゃないの」ってずっと思い続けていた。

これからの時代、40代や50代から学び始めたり、人生100年時代で、年金が当てにならないんだから、新しいキャリアを60代から始めたりしてもいいわけです。子ども「を」探究させるじゃなくて、「自分が学ぶ」「自分が探究する」と、大人も自分が学びの主体となって、お互い自分がやりたいことをやる。

その時に大人と子どもがタッグを組むと面白い化学反応が起きて、学びがうまく発展する。親子でもいいし、赤の他人の大人と子どもで全然構わない。そのために大人と子どもが一緒に学び、謎に取り組む場をつくり、今、実践しています。

——大人の学びに対しては、どんなことを?

市川:まずやるのは「Feel℃ Walk」です。 つまり「感度」を上げるために歩く。なんとなく気になるモノやコトを追い求めてただ町を歩いてみるんです。地域のまちおこしとして、土地の魅力を再発見しようということはよくやられていますよね。そんなときに、あらかじめ、ここの特産物は何で、どこでどんな伝統工芸品が作られていて、名所はどこでと決められてしまっている。

そうなるとどうしても「特産物から商品を作って売る」というようなだいたい出てきそうな解に縛られて、本当に面白くて、斬新なアイデアは出てきません。でも、目的もなく、ただぶらぶら歩いてみると、なんとなく気になるものに目がいったり、たまたま面白い人に出会ったり、どんどん予想外の思わぬモノ・コトに触れてしまう。

すると、それに触発されて、今まで考えたことのない思いつきが生まれてしまう。その思いつきをみんなで素直にシェアすると、ありきたりではない面白い発想に自然に育っていきます。それをそのまちの人に聞いてもらうと、「そんなことには気づかなかった!」とさらに面白い化学反応が起きて、新たな発見につながるんです。

こうした関わりの場が、僕が屋号としている「移動小学校」。いつでも、どこでも、誰とでも学べる場なんです。地方には、空き家はいっぱいあって、人々が集まって探究するスペースは豊富にある。そこで、みんなが発見したことをベースに探究しましょうと提案しています。

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——確かに、学びは学校の校舎の中だけのものではないよね。

市川:面白い発見はすぐに課題解決にはつながらないでしょう。でも、「Feel℃」が高まって、面白がって物事を見ようとする探究マインドを大人が持ち始めることがなにより大事だと思うんです。「Feel℃」は子どもと一緒に歩くことでさらに高まります。だから大人と子どもが一緒に面白がる場をつくることがカギなんですよね。

大人は「なんとなく」と言われても最初は疑心暗鬼で、こんなことして何の意味があるのかなぁなんて思いながら歩き始めます。でも、子どもがあちこち立ち止まり、色々見つけるのを目の当たりにして、ここには特に面白いものはなさそうだと思っていた大人の心が揺らぎだす。

子どもと一緒に面白さを再発見していくと、大人が子どもの頃の好奇心を取り戻して、自分が気になることに素直にしたがって面白がり始める。子どもの解像度の高さとフットワークの軽さに大人は刺激を受けて、好奇心のフタが再び開くんです。

——大人の探究ということで思い出したんだけど、この前ラーンネットのスタッフとスタッフの子ども達と一緒に旅行に行ったんです。京大の水族館に行って、研究員が案内してくれるツアーに参加して。ヤドカリの話で、僕らは「たかがヤドカリかい」と思ってるんだけど、その研究員の話を聞くと、めっちゃ面白くて。

研究員で朴訥としてて、話もそんなに上手でもないんだけど、みんなうわぁってなって。やっぱり、何かを好きな人っていいなと。

市川:19世紀に遡れば、ダーウィンなどのアマチュアが自分の好きなことに突っ走ってた。僕らはみんな、アマチュアとして対象愛に目覚められるんですよ。プロの研究者じゃなくても、アマチュアとして研究者魂をもてる。

たとえば、今までは「あの人は税理士だから税金のことを教えてもらおう」だったけど、「あの税理士さんは実はプリンにすごく凝ってるらしいよ!」という専門じゃないけれど、はまっていることがネタになる。そういった部分をみんなで出し合う場をつくると、楽しくなる。

大したものじゃなくていいんです。私の好きなことは、関心があることは、と力むから動けなくなる。なんとなくやってみたいなということをみんなで持ち寄って、そこに子どもも混ざって、とりあえず取り組んでみると探究マインドがオンになる。 で、一旦オンになると、もう戻れないんですよ。だって面白いもん。僕が言ってる「ジェネレーター」って探究マインドが常にONで、率先してなんにでも「対象愛」を示す人なんですよ。

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