見出し画像

固定の教室もチャイムもない、1学年9人の小さな学校が、東京・中野にある?東京コミュニティスクールを訪ねてみた。

目次ページへ

おもしろいガッコウに出会うのって、なんでこんなに難しいんだろう? あちこちウェブサイトを見てみても、なんだかどこも似たりよったり…。説明会や公開授業に足を運んでみると雰囲気は多少わかるけれど、もっとリアルな声が聞きたいところ。

「こんなガッコウ探検してみた」では、各地の面白い学校やスクールに突撃訪問!在校生や卒業生、子どもの保護者やその学校を詳しく知る人などに案内してもらいながら1日密着し、その学校ならではのカルチャーや工夫を探していきます。

第一回は、東京・中野にある東京コミュニティスクール(以下TCS)を訪問。案内人は、娘さんをTCSに通わせている保護者の1人・ケイさん(仮名)。国立や私立の小学校をあちこち見学した上で、最終的にTCSを選んだというケイさん。どこが面白いのか、じっくり聞かせていただきました。

画像1

——朝8時20分に、TCSの前に集合した編集チームとケイさん。TCSは中野駅から徒歩7分の場所にある、ぱっと見は何の変哲もない3階建てのビル。

「本当にここがスクールかな…?」と思いながら建物に入ってみると、玄関では、子どもたちが慣れた手つきでiPadで入室チェック中。靴箱の上には、子どもひとりひとりの顔写真と好きなことや将来の夢が。

ケイ:1年生から6年生まで、みんなここに貼られています。TCSは1学年の定員が9人で、徹底した少人数制。普通だったら1クラスに30人位いて、学校全体では数百人規模の子どもがいると思いますが、TCSは6年生までの全校でも最大で54名です。

国の基準では、小学校は1クラス40人が上限となっていて、国公立小学校の全国平均は1クラス約29人と言われています。その人数の子どもたちを1人の先生が見て、それぞれの個性や進度にあわせたフィードバックをするのって、なかなか難しいだろうなと。

画像2

TCSは少人数制にこだわり、あえて文部科学省の認可をとらず、いわゆる非一条校(学校教育法の第1条に掲げられている教育施設にはあてはまらない学校)としてスタートしています。そのため「小学校」という呼称は使うことが出来ず、「マイクロスクール」と言っています。

人数が少ないからこそ、スタッフも保護者も、全員の顔が認識できるんですよね。「1年生のAちゃんは最近こんなことができるようになった」「3年生のBくんは今これにはまっているよね」みたいな、それぞれの子どもの個性を、すべてのスタッフが知っていて、保護者もかなりのことを知っている。これってすごいことだなあと思います。

みんなで子どもを育てている、親戚たちの大きな集まりみたいな感じかもしれませんね。

画像3

——2階へ上がってみると、ほぼワンフロアの大きな空間が。学年ごとの教室はないように見えるけど・・?

ケイ:TCSの大きな空間的特徴が、教室が区切られていないことだと思います。1番大きな2階の部屋は、床の色がオレンジ・ベージュ・グリーン・ブラウンに分かれていて、4つのゾーンはあるのですが、空間としてはひとつながり。なので、違う授業を同じ空間の端と端でやっているんですよね。

自分たちのクラスに集中しながらも、なんとなくお互いの気配を感じている。低学年にとっては「大きくなったらこんなことをやるんだな」っていう予習になるし、上級生にとっては「新しい1年生たちは元気がいい子が多いな」って思ったり。違う学年の子たちの雰囲気を日常的に感じられるのは、スクール全体のチームビルディングや学びの体験にも影響していると思います。

——ケイさんの言うとおり、風通しがよさそうな空間。「空間づくりと学びの体験」について、もう少し聞きたいです。

ケイ:ここは3〜4年生が使うことが多いとか、よく使うゾーンはあるけど、全ての場所を全ての学年で共有しています。なので、「次の時間は、自分はどの場所でこれをする」と時間割を都度確認して、自分でその場所に行くんです。

多くの学校では先生があちこちのクラスを移動して、子どもたちは教室で待っていればいろんな授業が入れかわり与えられる…という感じですよね。けれど、ここでは子どもが主体的に「次は何をやるぞ」と自分でそのクラスの道具なども用意して、動きます。小さなことですが、「来てくれる」のと「自分から行く」のでは違うかなと思います。

画像4

——確かに、座って待っているだけの受け身ではなく、自分で主体的に動くと心構えも変わりそうですね。

ケイ:チャイムもないし、授業と授業の間に休み時間がない場合もあります。チャイムって、子どもの集中を途切れさせちゃうこともあると思うんですよね。チャイムが鳴ったから止める・始めるんじゃなくて、いま自分は何をするかを判断してみんな動いていますね。

次の記事(2)はこちら




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?