習慣によってAI化する人間
「AIに仕事を奪われる」
そんなことが囁かれるようになったのは10年ほど前だったと思いますが、ここ1、2年で急に現実味を増しているように思います。
ChatGPTが話題となり、InstagramやTikTokではAIを使って動画作っているんだろうな、とわかる動画も増えています。
AIがもたらしたもの。それは仕事を奪われるという恐怖だけでなく、逆に言えば今まで人間がやっていたこともどんどんAIに任せようという効率化の波です。
この風潮のせいなのか、最近はInstagramをはじめ様々な場面で「自己研鑽」「自己投資」「自己規律」と言う言葉を目にします。
このような動画は主に独身の男性、大学生から20代までを対象にしていて、「男磨き」と題して自身の生活を発信しています。
特に強調されているのは、「習慣の大切さ」です。意志の力だけでは自分自身をコントロールできない。だからやるべきことを習慣化することで、誘惑に負けないようにしよう、と。
例えば、朝6時起床、日光浴、散歩、瞑想、朝食、筋トレと有酸素運動をこなし、さらに副業や勉強をしてから会社や大学に向かう。
しかもこの習慣、ルーティーンは「科学的根拠」によって武装されます。「朝瞑想を10分間する人はストレスが軽減するという実験結果があります」みたいに。
このような生活に惹かれる人、特に男性は少なくないと思います。誘惑に負けず、淡々とやるべきことをこなす姿、かっこいいですよね。
何を隠そう、 僕自身もこのような「自己研鑽」に勤しんだ時期がありました。と言っても2ヶ月ほどですが。
なぜ2ヶ月で辞めてしまったのか。意志が弱いんだと言われればそこまでですが、一言で言えば「自分を失うのが怖い」と感じてしまったからです。
自分の意志は当てにならない。だから科学的に正しいルーティーンを守り、より良い自分になろう。
そこには「成長」「合理性」はあれど、「自己」も「感情」も「余裕」も、「思いやり」もありません。
とにかく成長が至上目的、ゴールになりうるのであればそんな生活も悪くないのかもしれません。しかし、僕はどうしても「成長」が目的だと思えなかったのです。
僕にとって「成長」は手段です。人生を楽しむため、他の人を喜ばせるため、そして幸せになるための手段として「成長」がある。
以前「暇と退屈の倫理学」の作者である國分功一郎教授がインタビューの中で語っていました。
「人間がAIに仕事を奪われると恐れるのは、自分がアルゴリズム化しているから。AIが人間に寄っているのではなく、人間がAIに寄っているのだ」
と、こんな趣旨だったと思います。
成長を目指し、習慣に身を沈めるさまは、まさに人間がアルゴリズム化しているように感じられました。
将来、もっと科学技術が進化した時、人間の脳にAIを組み込むという議論が起こるかもしれません。そうすれば合理的な判断しかしないし、誘惑にも負けないし、犯罪も減るかもしれません。
でも、僕は誘惑に抗いつつもたまには負けたいし、余計なこともしたいし、無駄を愛していたい。人間らしい非効率的な生き方を楽しみたいと思っています。
最後までご覧いただきありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
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