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『万葉集』を読む (春野)

そもそも万葉集の最初にはどんなことが書かれているのでしょう? どんな歌があるのでしょう? それは編集者(持統天皇や柿本人麻呂)の意図があるにしても、興味深いですね。

その冒頭の歌(1番)は・・
篭毛與 美篭母乳 布久思毛與 美夫君志持 此岳尓 菜採須兒 家告閑 名告紗根 虚見津 山跡乃國者 押奈戸手 吾許曽居 師吉名倍手 吾己曽座 我許背齒 告目 家呼毛名雄母

こもよ みこもち ふくしもよ みぶくしもち このをかに なつますこ いへのらせ なのらさね そらみつ やまとのくには おしなべて われこそをれ しきなべて われこそをれ われにこそは のらめ いへをもなをも

まったく意味がわかりません。


そこで漢字混じりにしてみました。

籠(こ)もよ、み籠持ち、掘串(ふくし)もよ、み掘串持ち、この岳(をか)に菜(な)摘(つ)ます兒(こ)、家聞かな、告(の)らさね、そらみつ大和の国は、おしなべてわれこそ居(を)れ、しきなべてわれこそ座(ま)せ、われにこそは告らめ、家をも名をも

これでもわかりませんね。

なぜなら雄略天皇(仁徳天皇の孫)という、ある意味伝説の中の天皇の歌なのです。古い形なのです。しかし、なぜこれが万葉集の最初にあるのか、それはたぶん持統天皇(女性)の「お気に入り」だったのだとしか思えないのです。

さて、その意味を私なりに解釈してみると・・

場面は春の初め、乙女たちが連れ立って山菜を採っている……
あの子の持っているその籠(かご)はとってもいい、ほんとにいい。そして、手に持っている山菜を掘るための串もいい、かわいい串だ。この丘で山草を採っているあの子の家の名を尋ねてみようか、あの子の名前を尋ねてみようか……あの子たちは知らないかもしれないが、私はこの国の大王なのです。だから私に家の名をあなたの名前を教えてください……

という、まあなんというか、おおらかな歌なのです。

つまり、私のお嫁さんになってくださいという歌なのです。

リズムも良くて、加山雄三の「お嫁においで」のような感じなのかしら、とか考えます。

持統天皇(天武天皇の妻)は激動の人生を送りました。若い時期には、山越えをして一家を守り、戦いを乗り切り、夫が亡くなっても、熱い思いを諦めず、人から何を言われても、やり遂げる……そんな女性でした。

ああ、だからこそ晩年は、おだやかな心持ちこそ、欲しかったものだったのでしょう。

この長歌が冒頭にあるおかげで、万葉集は、言葉だけではない、心を歌う、歌集になっています。

写真は以下からお借りしました。
大亦観風の『万葉集画撰』 《春野》
奈良県立万葉文化館 蔵



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