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永井龍男短編集『青梅雨』を読む。


永井龍男の短編の読後感を書くのはとても難しい。きっと私の読み方が悪いのだろうが、一読しただけではその良さがわからない。

二度読んだときに、この言葉や文章ががなぜそこに配置されているのかがぼんやり分かる。三度読んだときに、なぜその言葉を使わなければならなかったのかを、なんとなく理解する。

永井龍男は俳人でもある。十七文字の俳句のあとさきに、言葉を加えて小説にした感じと言えば、お分かりになるだろうか。
小さな俳句をいくつも結びつけて、大きな俳句にしたと言えば感じがわかるだろうか。
短い小説ばかりなので三度は読むことをお勧めする。


例えば「冬の氷」と言う作品には畳屋の父親と息子の様子が頻繁に描かれているが、この親子は脇役で主人公ではない。主人公は登利と言う四十二歳の未亡人。この小説の主題は本当に細かく読まないとわからない。一ページごとに二、三箇所ダイアモンドのように輝く言葉に出会う、文章に出会う。

その言葉や文章を結びつけながら、情景を思い、心情を察しながら、少しずつ読み進める。
そんなふうに読まないと良さがわからない作品だ。

表題になっている「青梅雨」はこの小説が書かれた後に俳句の季語になったというから、永井龍男の代表作であるが、これも一度だけ読んで、そのまま二度と読まないのはもったいない。

今は秋だが、梅雨の時期にもう一度いや二度、三度読んでみようと思う。
実際の季節になってみるとまた感じ方が違ってくるだろう。
そういう意味でも俳句で綴った小説だなあと思う。


強さもある。清々しさもある……。

最後に俳人、永井龍男の俳句を一句。


山茶花の散るにまかせて晴れ渡り





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