小川国夫(著)短編集『アポロンの島』を読む。
昨日、Twitterを見ていたら、
「どうしたらもっと早く読めるようになりますか? 読みたい本がたくさんあるのです」
という質問がありました。
小川国夫や永井龍男の作品は、とても速読なんてできません。それどころか二度、三度と読み返さなければ、その良さがわからないのです。
小川国夫の短編集『アポロンの島』を読みました。
文章が細切れで、読み方によってはつたない文章のような感じを受けます。
しかし、短い文章と文章の間にある空間やリズムには独特なものがあり、好む人にとっては、心地よいものです。
この短編集には合計二十二編の短編、掌編が入っています。小川国夫の若いときの作品集です。
作者の「若さ」を巧妙ではない文章が表しているような気がします。
私が良いと思った作品は、あまり皆さんが話題にしない「海と鰻」です。
ツネという女の子と浩が川で鰻を見つける。浩はツネの兄である浜司を呼びに行く。浜司はこの鰻を捕まえる。ツネが家に鰻を持って帰ると、父が「鰻を焼いて浩の家に持っていけ」と言う。浩の父親がうなぎが好きだから……。浩はツネに申し訳なくなって……。
子どもたちの素直な心がよく出ている作品です。忘れられない作品です。
この短編集の二十二編の中で、自分のリズムに合致し、余韻が残る作品は、わずか三編か四編なのかもしれません。その他の作品とその時の自分の心とは平行線のままかもしれません。しかし、残りの作品も読み進めることで、自分に合った作品を見つけ出す手がかりを与えてくれます。つまり、残りの作品も永久に交わることのない平行線ではなく、不思議な縁で作品と読者の心の交点を演出する名脇役であることは確かです。
小川邦夫の短編集は、作品と読者の心が、平行線と交点を行き来しながら、不思議な平面を作っています。その平面は、日本ばかりでなく、地中海の島々や北欧にまで広がっているのです。
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