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ジョルジュ・サンド(著)『愛の妖精』を読む。


ジョルジュ・サンドの名前は聞いたことがありました。しかし、一冊も読んだことがありませんでした。そもそも、この名前は、男性?女性? ジョルジュとはフランス語でジョージのことなので、この名前は男性の名前です。じゃあ、この人は男性かというと違うのです。女性です。本名はアマンディーヌ=オーロール=リュシール・デュパンです。ややこしいのですが、つまり女性が男性の名前で小説を書いているのです。

どうして? フランスの十九世紀は革命の時代でした。革命の時代とはカール・マルクスなどがまだ生きていて、フランスは共和制になるための戦いが続けられていたのです。ジョルジュ・サンドもこの活動に参加したり、文壇にデビューするためにも男性名の方が都合が良かったのかもしれません。

活動的で意欲的な彼女の姿が目に浮かびます。

この『愛の妖精』というタイトルの小説はフランスの田園地帯が舞台です。この小説は妖精という言葉から連想されるファンタジー的な物語とは少し異なります。

この場合の妖精とは主人公がファデットという女の子の名前で、このファデットは「小悪魔」という意味の方が近いのです。フランス語のタイトルは「小さな(女の子)ファデット」となっています。洗礼名はフランソワーズです。この名前は物語の後半になって「なるほど!」と思えるようになります。このファデットと双子の男の子、ランドリー(弟)と、シルヴィネ(兄)の物語です。

物語の始めから中盤そして最後の場面になるまで、とても面白い小説ですので、ぜひ読んでみてください。

1851年の作品ですが、現代のラノベのような古典です。

感じるのは双子の兄、シルヴィネの心の動きです。最後の場面になるとこの物語はシルヴィネの物語なのかもしれないなあと思うほどです。

シルヴィネの心の動きを克明に描写すること。そして、ファデットの言葉や行動を通して、本当の愛とは何かという問いが提示されていると思います。

ファデットはいつも冷静です。いや、感情的になることもあるのですが、芯は冷静で、理性的に行動します。その理性が人々に影響を与えていきます。

恋は盲目と言うけれども、真の愛は冷静なのだなあと思います。自分を律することができる、あるいは強い意志で計画を実行することができることこそ、真の愛……

こう考えると、愛の概念が少ししぼんでしまいそうですが、ファデットの姿を見ていると人から認めてもらうには、必要なことなのだなあと思います。

幸せは、そんな冷静な心の先にあるのだなあと……




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