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「誰でも来ていい」って本当ですか?(20220319南九州新聞掲載)

何回かに分けて、うちの法人であるNPO法人ルネスかごしまが運営する「ひだまりカフェ」のこと(誰かの居場所を運営すること)について書かせていただいています。

今回は「誰でも来ることができる場所を作ること」について

世の中には、「(基本的には)誰でもおいで」と言っている場所がいくつかあります。地域によってはその選択肢が多岐にわたることもあるでしょう。しかし、そのじつ、本当の意味で、誰でもに対してウェルカムな場所は少ないのではないかと思っています。

たとえば、(100~200円などの少額であっても)有料であるところ。運営のためには、お菓子や飲みものを用意するためには仕方がない、と考える主催者も多いと思うのですが、それによって失われるものを考えてみましょう。まず、経済的に厳しい方の参加を制限してしまうこと。もちろん、日本には絶対的貧困の世帯は少ないですから、困窮状態にある方でも払おうと思えば払えない金額ではないでしょうが、経済的にひっ迫していると、ほんの少しのお金であっても、それを出すことが心理的負担になり、足が遠のいてしまうケースもあります。その意味で、無料でおこなう方が望ましい(と考えます)。なあに、最近は特に「居場所を作る」ということに対しては、補助金や助成金を出すところがたくさんあります。申請書や報告書を作るのは確かに手間ですが、本当にお金に困っている(ということは、それ以外のことでも困っているかもしれない)人が、無料で来ることを通じて、その方の命が守れるケースもあるかもしれない。そう考えれば、手間や労力を惜しむところではありません。

次に、地域や環境、障がいの有無などを制限しているところ。どこそこのコミュニティに属していないといけないとか、特定の疾患の人だけを対象にするとか。もちろん、そういう居場所が果たす役割は別にあるわけですが(たとえば、閉ざされた場所での親密度を上げるとか)、少なくとも、「誰でも来ることができる居場所」が目指すところではありません。

営業や勧誘、宗教や人脈作りを主にしているところ。これもあまり良くないと思います。「押しの強い人」がいれば「押されてしまう人」ができてしまいます。とはいえ、「ひだまりカフェ」では、設けてあるルールは「自傷他害のおそれが無い限り、なにをしてもいい」というものだけです。それにしては、人が集まるところなのに、営業目的の方はほとんど来られませんね。特に注意とかしたことは無いのですが、なんとなくの雰囲気なのか、営業目的では目的を果たせないことにすぐに気がつくのか、私にはよくわかりませんが、「あの人に勧誘されて困っている」といった相談が来ることもほとんどないです(全くないわけではない)。

ひょっとしたら、参加している方に、「この場所は自分たちが作っているんだ」という意識があるのかもしれません。「自分たちの安全安心な場所を維持するためには、それなりの雰囲気を作る必要があり、それなりの振る舞いをしよう」という意識が。

だとすれば、そのような雰囲気を作り、参加している人に「自分たちで作っている」という主体的な気持ちを持っていただくためにはどうしたらいいのか、そのことが、一番難しいのかもしれません。

お読みくださりありがとうございます。 いただいたサポートは、NPO法人ルネスかごしまが行う「生活困窮家庭・ひとり親家庭支援」に全額使わせていただきます。