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うちには専門分野(専門とする領域)が無くてですね。

NPO法人をやっていると言うと、「どんなことをやっているのですか?」と聞かれることがある。NPO法人が扱う領域は広いので、それも当然と言えば当然のことと言える。普段は「困っておられる方のお話をお聴きして、これからのことを一緒に考える活動をしています」と答える。実際に団体の活動内容を定義する「定款」にも、そのようなことを書いているからだ。(本当の実際には「この法人は、生きづらさを感じるあらゆる年代の方に、傾聴、及びカウンセリングを用いて、あるいは、就労支援、生活支援、学習支援を通じて、その生きづらさを緩和し、住みよい地域社会を醸成することを目的とする」と書いてある。6年やっているのでやっていることも少し変わってきていて、たとえば今やっている「居住支援」などについては書いておらず、本当は変更した方がいい。)

とはいえ、「困っておられる方のお話をお聴きして、これからのことを一緒に考える活動をしています」とお答えして、納得というか、理解してくださらないことが多いのも事実だ。だから、「で、なにをやっているのですか?」と聞かれることがある。たしかに、この答えでは具体的になにをやっているかは伝わらないだろう。

なので、「誰でも来ることができてお茶を飲んだりお話をしたりしなかったりする『ひだまりカフェ』とか『フリーコーヒー』とか居場所みたいなこととか」「生活困窮の方向けに食糧支援をしたりとか、病院とか役所に同行することもあるし、シェルターもあるので居住支援とか学習支援とかすることもあって」とまあ、だいたいこのへんで別にそこまで聞いてないですよという相手からは「ああ、福祉なんですね」とか言われてしまったりするのでこちらとしても「まあそんな感じです」とか答えてしまったりするんだけど。

なかなか一言では言い表すのが難しいぐらい、いろんなことをやっている団体ではあるのだけど、その理由は(大きく分けると)2つあって。

1つには、「人の困りごとには領域が無い(領域横断的なものが多い)」ことが挙げられる。

以下は警察庁が令和4年にまとめた「令和3年中における自殺の状況」であるが、この中では「自殺の原因・背景」として「自殺の多くは多様かつ複合的な原因及び背景を有しており、様々な要因が連鎖する中で起きている。 (「経済・生活問題」や「家庭問題」等、他の問題が深刻化する中で、これらと連鎖して、うつ病等の「健康問題」が生ずる等)」としている。
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R04/R3jisatsunojoukyou.pdf

支援対象となる人の抱える困りごとは、単独で存在するものは少なく相互に絡み合っていて(つまり、省庁分断的な対応や、なんらかの単独の制度やサービスだけでは解消しきれないものが多いということ)、専門領域を持たない(とはいえ、個々の事例や事象に関しては専門的な知識や技量をもって対応することが求められる)ことが、対象となる人を支えるための必要条件になるということがある。そうであることが必要だから、専門領域を持たない。
*うちは「ひきこもり」や「不登校」「DVなど家族関係」などを扱うケースが、割合としてはたしかに多いことは多いんだけど、それはどちらかというと、他に適切に対応している機関や制度やサービスが無いことが主な原因だと思っています。たとえば、「高齢者福祉(介護など)」についてうちが扱う割合が低いのは、他に適切(かどうかはともかくとして)な対応する機関やサービスがあることが主な原因だと思っている(包括的に対応が求められる場合には、各機関やサービス事業者と連携して支援にあたることがあります*高齢者世帯における引きこもりの問題など)。

そして、もう1つ、うちが様々な事象を扱う原因があって、これはきわめて個人的なことなのですが、代表である私個人の興味・関心が、世の中の様々なものに渡っている、ということです。団体のスタンスが代表個人の興味で決まっていいのか、という気はするのですが。

アスペルガー的気質、と言ったら語弊もあるかもしれないんだけど、私は基本的に興味関心があるものに対して、どっぷりとのめり込むことがある一方で、飽きっぽいところもあって、ひとつの領域を究めることにあまり関心が無いというか。だからといって「広く浅く」というのでは自分で納得できないところがあるので、「広く深く」という、矛盾した方法を取ってしまいたいと思ってしまうのです。

*まったくの余談ですが、将棋も麻雀も、特定の戦略とか得意な戦法を持つことを目指さず、いろんな戦法で、しかもそれなりに強くあることを目指す(全盛期の羽生さんのように)のですが、まあ、そういうスタンスの常道として、すべてが中途半端になるということはあると思います。支援とポーカーについては、それら以外には賭けたことが無いくらいの時間と情熱を持ってやっているので、中途半端に終わることはなさそうだと思ってます(思いたいです)。わりと命賭けてるしな。

「スペシャリスト」か「ゼネラリスト」か、という議論は、仕事とか専門性とか職人気質とかの話でもされることがあるわけですが、個人的にはその2分法(どっちかしかないからどっちを選ぶのか)というのも、あるいは旧時代的な考え方なのかなと。

一言で言うと、欲張りなのですよ、私が。

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