TANIMURA Shogo

谷村省吾。名古屋大学教授。専門は物理学、とくに量子論。twitter https://…

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谷村省吾。名古屋大学教授。専門は物理学、とくに量子論。twitter https://twitter.com/tani6s

最近の記事

ステイホームしている間に勉強しよう、考えよう。1:力学の問題の解答

2020年4月24日にnoteに投稿した問題(ツイッターで広報)の答えを解説します。まず、どんな問題だったか、振り返ります。 問題 2つの物体が一直線上を等速運動していて、衝突し合体する、という状況を考えます。空気抵抗や衝突音の発生は無視できるとします。さて合体後の速度はいくらでしょうか? 問題は、これだけと言えばこれだけのことです。ところが、運動量保存則を使って出した答えと、エネルギー保存則を使った答えは一致しません。 合体後の速度 V について2通りの答えが出ました

    • ステイホームしている間に勉強しよう、考えよう。3:力学系の対称性の問題

       マニアックな問題を出します。  問題:量子化と古典極限という関係で対応しあう古典力学系と量子力学系で、対称性が異なるケースをできるだけたくさん見つけてください。  ラグランジュ形式で定式化される古典力学にはネーターの定理というのがあり、連続対称性(無限小変換が定められるような対称性)から保存量の存在が導かれます。ハミルトン形式の古典力学なら、連続対称性と保存量の存在は同値です。  量子力学でも、対称性と保存量の存在は、ほぼ同義です。ところが、量子系では離散対称性も難なく定義

      • ステイホームしている間に勉強しよう、考えよう。2:量子力学の観測問題

         いっぺんにちゃんと書くのは大変なので、おおざっぱに書きます。  量子論にはEPR(Einstein–Podolsky–Rosen )のパラドクスと呼ばれる問題があります。「量子論はミクロの世界の実在を完全には記述していないんじゃないか」とアインシュタインたちが疑義を申し立てたのです。のちに、ベルは、実在性と局所性という物理学者にとっては当然に思える仮定にもとづいて、ある物理量の平均値について成り立つはずの不等式を数学的に導きました。ということは、もしもこの不等式が成り立たな

        • ステイホームしている間に勉強しよう、考えよう。1:力学の問題

           世の中は大変なことになっています。人々が病気にかかって亡くなってしまうのは悲しいことですし、そういった事態を避けるために奮闘している人たちがたくさんいますし、いろいろな不便や損害を余儀なくされている方たちもたくさんいます。一方で小中高校・大学などに通えずに、不安を抱えている若い人たちもたくさんいると思います。  私の名前は谷村省吾といいます。名古屋大学の教授です。私は大学で物理を教えている者ですが、とくに4月・5月の連休中、じっと家にいて退屈している生徒・学生に向けて数学や

        ステイホームしている間に勉強しよう、考えよう。1:力学の問題の解答

        • ステイホームしている間に勉強しよう、考えよう。3:力学系の対称性の問題

        • ステイホームしている間に勉強しよう、考えよう。2:量子力学の観測問題

        • ステイホームしている間に勉強しよう、考えよう。1:力学の問題