ステイホームしている間に勉強しよう、考えよう。2:量子力学の観測問題

 いっぺんにちゃんと書くのは大変なので、おおざっぱに書きます。
 量子論にはEPR(Einstein–Podolsky–Rosen )のパラドクスと呼ばれる問題があります。「量子論はミクロの世界の実在を完全には記述していないんじゃないか」とアインシュタインたちが疑義を申し立てたのです。のちに、ベルは、実在性と局所性という物理学者にとっては当然に思える仮定にもとづいて、ある物理量の平均値について成り立つはずの不等式を数学的に導きました。ということは、もしもこの不等式が成り立たないような実験結果が出たら、実在性と局所性の少なくとも一方は間違っているいうことになります。ところが量子論にもとづいて計算すると、ベルの不等式が成り立たないケースがあることが予測されました。そして、実際、実験してみると、ベルの不等式の破れが確認されました。
 ベルの不等式の破れの検証実験によって局所性または実在性のうち少なくとも一方は放棄すべきであることが実証されました(他にも微妙な言い逃れの可能性もなくはないのですが、さすがに苦しい言い訳になります)。私自身は、測定されていない物理量の値の実在性が放棄されるべきだ、と考えています。しかし、世の中には、「量子論は非局所的である」と主張する人がしばしばいます。中には、超光速で伝達する非局所的量子相関を用いて絶対的同時性が定められるかもしれないと言う人もいます。
 さて問題ですが、ベルの不等式の破れは、いったい何を意味しているのでしょうか? 「局所性が破れている」と言う人は、何をもって局所性を定義し、それがどのように破れていると言うのでしょうか?

 
この問題は、容易に決着のつく問題ではないので、私から模範解答のようなものを示すことはできません。この問題を読んで解答を考え出してくださった方は、解答を私のツイートへの返信の形で書いていただくか、ご自分の解答をツイッターかブログか note などに書いてブログなどへの案内を「#ステイホーム勉強の答え」のようなハッシュタグを付けてツイートしていただくかするとよいと思います。

この問題に関するツイート:
https://twitter.com/tani6s/status/1253632061769826305

参考文献:
1. 『量子の地平線 揺らぐ境界―非実在が動かす実在』日経サイエンス 2013年7月号(別冊『量子の逆説』に再録)
http://www.nikkei-science.com/201307_036.html
http://www.nikkei-science.com/page/sci_book/bessatu/51199.html
2. 『量子もつれ実証 アインシュタインの夢 ついえる―測っていない値は実在しない』日経サイエンス 2019年2月号
http://www.nikkei-science.com/201902_064.html
3. 『アインシュタインの量子論不信が開いた新世界 長年の論争に決着「量子論が正しく、局所実在論は誤り」』朝日論座 2019年03月18日
https://webronza.asahi.com/science/articles/2019031300002.html

この記事が参加している募集

おうち時間を工夫で楽しく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?