400字の部屋 ♯10 「珈琲 4」

 数学の講義を受けている間、仏原は締切が迫っているフランス文学のレポートの構想を練っていた。レポート作成に集中したいが、苦手な数学の方も来週がテストなので止む無く出席してみたものの、講師が話す内容が全く頭に入って来ないので、ならばレポートの方を少しでも進めようとノートを広げてみるも、まだ脳が働いていないのか、ただ時間だけが過ぎていった。ヤバイと思い、缶珈琲を一口飲んで再びノートに向き合い、バルザックやゾラといった名前を書くと言葉が繋がり出し、この機を逃すまいと缶珈琲を一気に飲んで、何とかレポートの骨格を書き上げた。骨格さえ出来れば、後は必要な情報を図書館で調べるのが主で、時間も大体予想出来る。仏原は大きく背伸びをした。そう云えば、バルザックって珈琲をガブガブ飲み乍らあの大量の小説を書いていたんだっけ。怪物バルザックを支えた珈琲の力、侮れんな。空の缶珈琲を指で叩き乍ら、仏原はそんな事を考えていた。

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