400字の部屋 ♯13 「太陽 1」
無限と云える重さを持つ太陽が未来永劫データ化不可能な莫大なエネルギーを宇宙空間に放出し、その無尽の力のほんの僅かな幽けき量が我我の大地と大海に降り注がれて、植物が光合成により光のエネルギーを生命体の生存に必要な酸素に変換する事で我我はこの地上で生かされている。
凡ての源は天涯の太陽。
力とは太陽であり、太陽とは力であるというトートロジー。
凡ゆる事象を根底で支えているのは、宙に聳える太陽であり、目に見える太陽は目に見えない力、本当の力、を創っている。可視と不可視の一致、或いは実と虚のラインダンス。
遥かに広がる海の彼方で半分程その身を沈めた深紅の太陽は、正に神としか表現仕様の無い荘厳と圧倒そのものであった。タイチは大海原に沈みゆく神のモーションをじっと見詰めていた。ユーリは夕日で照り返された褐色の肌を晒して佇んでいるタイチの姿に、ギリシア神話のアポロンの像を重ねていた。