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会社から中堅が抜けた話

(学生時代描いた水彩画をトップ絵に)

3年前に書いた記事を掘り起こしました。
今だらこそ、転職して一年と半年だったからそこ言える話を今、思い出しつつ、ドキュメントにまとめてみた。

前置きとして、これはある特定のブラックと言えばブラック、その時代だったら普通のこと、ゲーム業界自体が過渡期に起きた出来事の伝記として読んでもらえれば幸いです。



​​●前提となった諸問題

​​・不安の幕開け
遡ること、10年前…
​​2010年頃、会社の方針で毎年100人採用という無茶な目標が掲げられた。
​​その頃、開発タイトルは全て黒字と言っても良いほど会社は好調で、それでもタイトル数を増やせるほど、社員は居なかった。
​​それまでに多くの人が会社を辞めていったという経緯もあった。

​​今まで多くて40名ほどの新卒採用だった為、100名採用は多いと感じており、大多数の開発者は得体の知れない不安を感じていたが、当時は物量に対しては人をあてがう事がまだまだ主流であったため、そこまでこの不安が何なのかは考えず、聞き分けの良い後輩が増える事を歓迎するムードだった。

​​100人取れば、当然数合わせの為に出来ないヤツも採用。
​​当然だ、新卒給料は上がってる訳じゃない。今まで切っていた人材も採用してかさましするしかない。
​​質ではなく数でノルマが設定されていればなおさらである。


​​・中堅の多忙
​​開発タイトルがPS3からPS4に移行していく中、技術的難易度や物量の増加により、
​​中堅以上の一人当たりの仕事のキツさや難易度も増加した。

​​覚えないといけない技術や知識にも増して、以前より複雑で大量のタスク、そのタスクをこなす若手を管理する為に、仕事を進める上での開発プロセスの熟知(マネジメント)も、以前より求められる様になった。
​​※人によっては海外外注管理などのグローバルスキルも求められるようにもなった。



​​●見えない中堅の悩み

​​そんな大変な時代の変革期に、更なる中堅への精神的な追い討ちが待っていた。
​​コーチングスキルなど、目に見えないものの評価が追いついていなかった。

​​今の若者に対して厳しい指導はNGになっており、自分達が教わった頃の目で盗む、腕で見せるという暗黙のコーチングが通用せず、教える側もマインドセットの再設定が必要になり、有能な中堅からコーチングは片手間でやるような事ではないと気づいていった。
​​勉強する者、なんとか誤魔化し無かった事にする者、様々な方法で回避していった。

​​※やり方を変えられない中堅(30代〜)はパワハラまがいのコーチング?で煙たがられ、フロアから弾かれ、社内の隅に追いやられる事に…。



​​●トップ層はコーチングを学ばない

​​成果が上がらない時、トップから中堅層に苛立ちが募り、それが中堅層の諦めに繋がった。
​​過去の体育会系(今でいうところのパワハラが当たり前)時代がトップなので、いわゆる「やればできる」などの精神論の叱咤激励を飛ばすだけで具体的な打開策を教えてくれない。
​​それもそのはず、トップは今のゲーム開発の複雑さや、求められる技術を知らないしその知識は持ち合わせない。

​​昔から、上からは叩かれ、今の時代は下には優しくという不条理な立場(ロスジェネの最後の世代)となる。
​​ここ数年は、他社より格安の給料で中堅層がこの会社にいる意義を完全に見失ってしまった。

​​かくして、増える若手と、疲れ果て辞める中堅ベテランという循環が生まれた。



​​★時代背景:予期せぬ時代の変革(おさらい)

その後、転職していく中間が大量に生まれその背景となるコンシューマのゲーム開発を取り巻く業界の状況もそれに影響していた。、

​​・ソシャゲで収益を上げた会社が次にブランド価値向上のためにコンシューマ業界に乗り込んできた事

​​・ハードスペックが常に高くなり続け、外資を中心に日本のコンシューマ開発が各分野で重宝される様になった

​​・後半はコロナ禍になり、ゲームの需要が増え、賃上げが加速し、各社人の争奪戦が始まった転職しやすくなった事


​​●業界ゴロが中堅を追いやる

​​他社に関しても状況は同じく、世は大転職時代を迎えており、他社からの転職者も増えていた。
​​中には、他社でそれなりのポジョンだったかなり有能(?)なキャリア入社の人達も増えていき、トップ層はそういった今まで会社に無かったスキルを持ったキャリア人材をいきなりリーダーに抜擢していった。

​​その結果、キャリア層と中堅とのゲーム開発の方針の違いで揉め事も増え、中堅とトップ層との軋轢は更にましていった。


​​●なぜ改善されないか

​​・伝達されない現場の問題
​​中堅層が辞める時は、良くしようという気持ちは既になく、諦めた精神状態の為、どうせ言っても変わらないという思いがある。

​​ましてや、転職が当たり前になりつつあるこの業界において、何か会社に嫌ごとをいって、今後の取引きが不利になる。
​​その為、上に問題を共有して会社を去る事をしなくなった事により、問題は残ったままで気付かれず、棚上げされた。

​​※上から押さえ込まれた世代なので、その発想すら無い可能性も。
​​ また、上も傲慢で下からの意見を真摯には聞かない。そういう時代(過去)の上下関係。

​​また、タイトル数が増えた事でベテラン以上のトップは現場(実装)を離れたており、
​​現場で起きている事を正しく認識するのに時間が掛かったというのも運が悪かった。


​​●どうすれば良かった?

​​100人採用、という数から入るのではなく、もう少し人数を絞って質を確保し、
​​その分、中堅以上の社員の給料を上げればよかった。

​​新卒をとればとるほど中堅が疲弊するという事を理解し、
​​「これから若手が増えるので、今のゲーム開発業務に追加して若手育成の業務もお願いする事になるのでベーアップします」という流れになればよかった。


​​●これから

​​中堅以上の評価軸は、今までは何かの分野に秀でた人、リーダーなどが評価されやすい時代でした。
​​これからは、人の為に人の真の成長の為、考えて動ける人を今よりも評価する、という事が必要になると思われる…。

​​・人の真の成長とは
​​業界も成熟しつつある昨今。
ベテランの我々ももう良い大人になり、昔みたいな働き方は人に強要すべきではないし、年老いてからはこの働き方は続かない。
後世に託すところは託しつつ、成功も失敗も、あなたのものだと、若手に言えるくらいの度量を持てるかどうかにかかっているんだと思います。
そして、人としての真の成長は、自分ではなく他者に頼られるか、頼れるか、そういった世間や世界、時代のような、水に溶けていくかの如く、気がつけば居なくなっていて、良い思い出となれる人になれるかどうかなんだろうなと思います。

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