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ひもが結べないこどもと親の期待

私は都内で小中学生向けのシェア工房を運営しています。

シェア工房はいろんな道具や材料があって、こどもたちが思い思いに工作をする場所です。やりたいことがない子にとっては拷問のような場所です。それでも来てくれる子がいるので細々と続けています。

今日は保護者の方からいただいた相談をうけて、伝えるのって難しいけど伝えることをサボっちゃいけないよね、と自戒をこめて。

ということで、こちらがいただいたご相談です。

うちの子はサクッと作って満足しているんですが、親としてはもっと作りこんだり夢中になってほしいと思っています。また飽きるとダラダラしているのも不安です。

「こどもは満足」「親は不満」というギャップ。このギャップを埋めるための解決策は二通り。

大人がこどもの気持ちに寄り添う
大人が満足できる内容に変える

うちのシェア工房は前者の考えなので、後者の考えの人は別天地を探してほしい。今時楽しませつつ完成度の高いものを作れるところはたくさんあるからきっと見つかります。大丈夫!

分かりやすい例えで二者の違いを説明すると”操り人形を作りたい”、というときに前者は「ひもの結び方を教える」、後者は「ひもを主催者があらかじめ結んでおく」という違いがあります。

ところで皆さんのお子さんは蝶々むすびや堅結びできますか?

これまで300人以上の子どもたちが工房に来てますが、一人で紐を結べる子は体感で5%くらいです。

紐の結び方を教える→やってみる→できない→嫌になる場合でも30分近くかかります。できるまで頑張る!という根気のある子の場合、ひもを結ぶだけで1時間近く格闘する場合もあります。格闘する間はかなり集中力も使うので、ぐったり疲れます。

たかだか90分~120分の工作の時間です。完成までさせることはこども達にはこんなに難しいということを大人は知っておく必要があると考えています。

でも一生紐を結べないわけではないので、焦る必要もないと思うんです。

体が発達し指先が器用になれば簡単に結べるようになるし、結べなくてもいろんな便利グッズがあふれているので、生活に困らなければ結べる必要すらないと思うんです。だからどちらの考えが優れているではなくて、どちらを選びたいかってだけです。ここは親が選んだほうがいいと思います。


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ふたつめのポイント。うちはシェア工房なので作るものは自由なんですが、こどもの気持ちになって考えてほしいのは「自由は困難」ということです。こどもに質問するとたいがい「自由がいい」って答えます。だって自由が欲しいしそれがどれだけ難しいかを知らないから。

でも自由というのは全部自分で決めなきゃいけなくて、これは大人でもメチャメチャ難しいことじゃないでしょうか?

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ちょっと想像してみてほしいのですが「今から30分以内に上にある材料と道具で好きなものを作ってください」って言われたら何を作りますか?

「ここにある材料」「使える道具」「自分のスキル」「どこかでみて素敵だなと思ったもの」「今欲しいと思っていたもの」。大人だとこれらの情報を駆使してスマホも使って作るものを決めて作って・・・それでも30分は厳しいと思うんです。(30分という時間設定は、こどもは大人の3倍時間がかかるという私の目安から逆算してます)

この難しさを知っていると、こどもの気持ちに寄り添うことができるはず。どんなに雑に見えても大人にとって下らないものに見えても、「自分の頭で考え、自分なりに何かを生み出そうとしたことがただ素晴らしい」と思え、心からこどもの頑張りを称賛できるようになります。

でもこんなくだらないもの・・・と感じながらうわべだけ褒めると、本人はどんどんやる気や自信を無くしていきます。こどもはちゃんと感じている(自分がそうだったのでよく分かる)。生まれてほんの数年のこども。彼らに対して期待が大きくなりすぎないよう大人の方がコントロールしないと可哀そう。

作ったものや努力の跡をなんでも喜ぶ(どこを誉めたら分からないという場合は、作るという行動したことを喜ぶ)ことで自信をつけながら育ってほしいと思います。

以前書いたこちらの記事もよかったら。

最後に「飽きるとダラダラしちゃう件」について。

人が夢中になって取り組むことには条件があって

自分の実力よりちょっと簡単であること
何度も作り直して試行錯誤できること

身も蓋もないことぶっちゃけるとプライド高い子ってこれができなくて…( ;∀;)

自分も実力ないのにプライドばっか高い人間だったので気持ちは分かるんですけど・・・プライドがなくなってからの方が毎日発見がたくさんあって楽しいんですよね。

たとえば牛乳パックと輪ゴムでつくる”パッチンカエル”。実は最近まで作ったことなかったんですけど、すごく簡単なのにゴムの可能性を体験できる優れた工作です。こども達に教えてもらってしばらく改造して遊んだりゲーム作ろうとしてたんです。

パッチンカエルで遊んでる私を横目に「そんなの作ったことある」「つまんない」で終わらせる子もいます。

そうなっちゃうともっと輪ゴムでおもしろいもの作れないかな?とか次の興味に繋がっていかないし、そう言った手前「もっとすごいものを作らなくちゃいけない」と自分を追い込んでしまうので、

できないくらいなら・失敗するくらいなら・何もしないってなる。

自由であることはヒマを自分で作ることもできるので「それでも良いじゃない」と割り切れないと親も子もどんどん苦しくなっていきます

この思考に陥らないためには「大人がびっくりするようなものを作ってほしいという期待」は絶対表に出しちゃあダメだと思うんです。「すごいもの作ってきてね」「何か作ってきてね」と別れ際に言っちゃあダメなんです。

もちろん大人の期待にちゃんと応えられる子もいるんですが、かなり少数です。

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私にとってこのシェア工房は、自分の4人の子どもをどう育てたいかを考えながらやってきたことで、工作はあくまで子育ての手段。上手に工作できるようになってほしいというようなことは考えずに運営していて、参加する方にも最初にその説明はするもののやはり期待外れになることが多々あります。そういうわけですごく独特で万人受けしないけど、共感してくれる人とこどものやること・考えていることの面白さをこうして分かち合いたいと思います。









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