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⽯川県珠洲市& 早稲⽥⼤学地域連携ワークショップ 2024 最終報告会に参加しました

こんにちは、サイボウズソーシャルデザインラボ災害支援チームのsayaka*です。このたび、「⽯川県珠洲市& 早稲⽥⼤学地域連携ワークショップ 2024 最終報告会」に参加しました。


早稲田大学 地域連携ワークショップとは?


「地域連携ワークショップ」は、早稲田大学が実施する単位取得を目的としない課外活動の教育プログラムです。学生たちは、連携先の自治体やその地域が抱える課題に対し独自の視点で解決策を検討し、自治体首長はじめ関係者に対して直接提案を行います。

早稲田大学は4年前より、本ワークショップを通して石川県珠洲市と関係を築いてきました。今回は、珠洲市から「被災地支援の現場から⾒える、珠洲の課題と可能性とは︖」というテーマが提示され、学生たちは震災復興中の珠洲市に赴きました。そして、支援に携わる方々へのヒアリングや情報収集を通して、課題と可能性を探ってきました。

私たちサイボウズ も、能登地震発生直後からkintone を活用した被災地支援を行っています。その活動が珠洲市の社会福祉協議会にヒアリングを行った学生たちの耳に入り、今回の聞き取りの依頼に繋がりました。支援の概要やkintoneの現状と課題など多岐にわたる質問に、災害支援チームの柴田と岩下が答え、最終報告会にもお声がけ頂きました。


⽯川県珠洲市& 早稲⽥⼤学地域連携ワークショップ 2024 最終報告会

【チームおいなり】 〜 支援活動と課題、そして可能性を探る~


最終報告会では、早稲田キャンパスと珠洲市をオンラインで接続し、約30名が参加しました。2つの学生チームが、それぞれの視点から珠洲市の課題と未来への提案を行いました。

まず【チームおいなり】は、珠洲市で活動する各支援団体の活動内容を、住民の生活再建、産業復興、資金援助など、多岐にわたる視点から報告しました。

情報伝達・連携 の課題を打破するために、
サイボウズ は kintone を活用した支援者支援を行いました。

また、チームの発表によると、各支援団体から共通して挙げられた現場の課題は、住宅における耐震構造、宿泊施設の不足、アクセス、高齢化が進む地域社会、水道復旧の遅れや関連業者の不足などがありました。一方、珠洲市の魅力・可能性にも多くの団体が言及しました。「人々のつながり」や「豊かな自然」など、共通の事柄を挙げていた点は印象的です。

チームおいなりは、これらのヒアリング結果を基に、具体的なまちづくりの提案を行いました。

地域資源を活用した産業振興、若い世代が残りたくなるような住みやすい街づくり、住民自身が主体的に地域活動に参加できる仕組みづくりなど、様々な提案が述べられました。

「災害に強いまち」に関しては、支援団体の意見を参考にしたとのことです。手洗いスタンドなどの導入など生活用水の確保、市役所への衛星通信機器や発電装置設置による情報インフラ強化、また「子供たちの遊び場が必要」という声から、「荒れ地や空き地の有効活用:平時は公園、有事はヘリポートとして活用」などの提案が挙げられました。

発表後には、活発な質疑応答が行われました。特に、今回の提案を具体的な活動に繋げていくための継続的な関わり方について、質問が寄せられました。

これに対し、学生からは、今回の活動を通して珠洲が身近な存在になったという実感や二拠点活動への意欲、大学側からは大学内のボランティアセンターの活用や卒業生ネットワークへの共有など、具体的な行動計画が提示されました。教員からも専門分野を生かした協力体制を構築する意欲が示されました。学生と大学が一体となって、4年前から続く活動の中で得られた関係性と今回の貴重な経験を融合させ、更なる活動へと発展させていこうという強い意志が感じられました。


【チームすずっしー】 〜 現場の声から見えた連携の現状とDXの可能性 ~


【チームすずっしー】は、「令和6年能登半島地震で特徴的だった点は何か?」「支援団体と行政の間で連携は取れていたか?(連携不足という仮説に基づいて)」という2つの質問を軸にヒアリング調査を行いました。

そして、今回の発表では「時間」と「活動内容」の2軸で、支援団体の活動を紹介しました。

「時間」で活動を紹介。
他にも医療支援、住居支援、避難所支援等々、様々なカテゴリーがありました。
「活動内容」それぞれの支援のカタチを紹介。
サイボウズは、被災地で起こりがちな孤立集落の問題に対して自衛隊と連携し、
トランシーバーアプリを搭載したタブレットを導入。
現場からの情報収集と共有をリアルタイムで行い、情報の可視化・共有化 を実現しました。


今回ヒアリング時に、サイボウズからの特筆すべき点として、今回の地震対応で石川県が初めて市町自治体の被災者データを一元的に集約する取り組みをおこなった話をさせていただきました。これは、過去の災害では見られなかった画期的な連携の形と言えます。

連携の在り方に関しては、発表後、支援団体の方々からもコメントが寄せられました。ピースウィンズ・ジャパンさんを始めとする団体からは、「2023年の地震の経験を活かし、今回の災害対応における行政、民間団体、NPO間の連携が、過去の災害時と比較して格段に向上していた」という意見が多く聞かれました。一方で、課題だけでなく、そうした連携強化の事例を学生たちには特にクローズアップして欲しいという要望も寄せられました。

初期段階から合同会議が開催され、スムーズな情報共有体制が構築されていたことが、迅速かつ効果的な支援活動に繋がったという声は、支援者支援・情報支援をおこなった私たちにとっても大きな励みとなりました。

しかし、各市町村でデータベースのフォーマットが統一されていなかったため、データ統合に時間を要するという課題も浮き彫りになりました。この課題を踏まえ、サイボウズでは全国各地の自治体を対象に、フォーマット統一に向けた取り組みを進めています。

また、今回のヒアリングで聞いた「現地の行政職員も被災者である」という言葉から、後方支援の重要性を実感。DXの力で被災地外からの支援が必要ではと考えたそうです。

kintone を活用した情報共有システムがあれば、被災地外からの遠隔支援も可能になります。


最後に、今回のテーマである珠洲の課題と可能性に関しては、こちらのチームも里山里海の魅力を挙げると共に、アクセスや人口減少、宿泊施設の不足といったものを挙げていました。これらの課題を解決するため、チームは以下の2つの提案を行いました。

1.バーチャル珠洲市(ドローンの災害対策への本格運用):
今回の災害でも活用されたドローンを、災害時の被害状況確認や遠隔医療の実現など、より広範囲に活用することで、アクセスの課題解決を目指します。

2.首都圏の自治体との縁組協定
群馬県川場村と東京都世田谷区の事例を参考に、縁組協定による関係人口の増加を図ることで、宿泊施設不足の解消や、平時からの関係構築による、有事の際の相互協力体制強化を目指します。

特に「アクセス」と「人口減少」は、珠洲市だけでなく、多くの高齢化した半島部が抱える課題です。チームすずっしーはヒアリングの中で、支援団体の方から「今回の能登半島の事例は、今後の半島部における災害対応のモデルケースとなるだろう」という意見を聞き、その重要性を改めて認識しました。そして、今回の災害での事例や良かった点は、積極的に発信していく必要があると考えています。


繋がる力、未来への希望


最終報告会では、学生たちの提案に対し、泉谷市長とWAVOC(早稲田大学 平山郁夫記念ボランティアセンター)松居所長から、講評と今後の期待が語られました。学生一人ひとりからも、珠洲市への感謝と、今後も関わり続けたいという強い思いが述べられました。

今回の報告会を通して、私たちも改めて、災害対応における情報共有の重要性、そしてICTが果たせる役割の大きさを実感しました。真摯に未来に向き合う姿を見せてくださった珠洲市の皆さま、早稲田大学の皆さま、このような貴重な機会をくださり感謝申し上げます。そして、能登半島の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。