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ウィズコロナ時代の地域経済活性化を考える「シン・ちいクラ・カイギ」 京都で開催【前編】

ウィズコロナ時代に合う地域の経済活性化について考えるイベント「シン・ちいクラ・カイギ」を9月9日京都にて開催しました!

会場は京都信用金庫様の施設「QUESTION」(撮影のため一時的にマスクを外しています)

オンラインとリアルを組み合わせたハイブリッド型のイベントで、当日は全国各地から合わせて220名もの方が参加してくださったんです👏関西で開催されたイベントですが、全国の皆さんの関心や知恵、思いが集まり、さまざまなエッセンスを各地域に持ち帰っていただけたかなと思います。
当日のイベントの様子をリポートしていきます✏️

「シン・ちいクラ・カイギ」とは

シン・ちいクラ・カイギは、2017年から「地域クラウド交流会(ちいクラ)」を開催している京都信用金庫と但馬信用金庫、サイボウズが、コロナ禍の影響を受けた地域経済の再活性を考えることを目的としたイベントです。サイボウズが開催ノウハウを提供する「ちいクラ」を、ウィズコロナ時代に合わせてさらに加速させよう!と開かれました。

地域の事業や経済を支える全国の信用金庫役職員や、行政・市区町村・支援機関等の創業支援担当者向けに、コロナ禍の起業家を支える新しい創業支援を紹介するほか、全国の経済を盛り上げるための「新キャンペーン」を発表などを行いました!
(地域クラウド交流会については↓のページをご覧ください)

最初に主催者を代表して、サイボウズの中村龍太がご挨拶。

着物を着て登場!

コロナ禍でしばらくリアル開催ができず、開催方法の模索を続けてきた「ちいクラ」。この日たくさんの方がお申し込みをして参加してくださったことに感謝を伝えたうえで、「これからの地域をさらに元気にするために、たくさんの気づきを持ち帰ってほしい」と挨拶しました。

京都信金×但馬信金×サイボウズ パネルディスカッション

そして今回の目玉のひとつとして注目を集めたのが、京都信用金庫の榊田隆之理事長、但馬信用金庫の宮垣健生常務理事、サイボウズの青野慶久代表取締役社長によるパネルディスカッション。
モデレーターは、慶應義塾大学大学院 特任准教授の古里圭史さんが務めてくださいました。

パネリストとモデレーターはこちら!

今年の6月まで信用組合に勤めていたという古里さんは、
「今日の基調講演の趣旨は、地域に根付いて金融事業をしている信用金庫の皆さんがどういうことを考えながら地域に向かっているか、そして、コロナの文脈の中で地域経済に何が必要なのか。また、榊田理事長と宮垣常務理事がいらっしゃるので、まさに先進事例として取り組まれている事例についてご説明いただきます。しっかりと今日きていただいている皆さんに持ち帰っていただいて、地域に還元して地域を元気にしていく形に繋がっていけばいいと思います」と挨拶しました。

会場には榊田理事長(奥)と古里さん(前)のお二人。

まずは京都信用金庫の榊田理事長から事例の紹介。アツい金融の話をダイアログ(対話)する、というお気持ちで「時代の潮流変化とこれからの金融のあるべき姿」というテーマで講演を行ってくださいました。

「変化が多岐にわたって、急ピッチでダイナミックに起こっているので、皆さん戸惑って先行きが見通しにくいとか、ついていけないとか、ネガティブなインパクトを受けるのも事実だと思うんです。これをどう捉えて、柔軟に対応するのか。21世紀のどんな人にも共通する大きなテーマじゃないかなと思っている。今日はこれをベースとしながら進めていきたいと思います」

まず榊田理事長が挙げたのが「排除→包摂」。
金融業界は、「金融排除」から「金融包摂」に変えていかないといけないと話します。

「本来こういうセクターにこそあたたかくないといけないにもかかわらず、一般論だけれども、冷たい。これは大きな社会課題だと思います。これは金融に関係する人間が共通してやるべきことではないかなと思う」と力強く話しました。
具体的には、スランプ(経営支援)先・スタートアップ(創業)先・スモール(小規模事業)先にこそ、気を配って包摂していく、これが今バンカーがやるべきこと。ただの財務支援だけでなく、「お客様の事業の発展」や「お客様のくらし」に対し、親身に対応する「おせっかいバンカー」であることが大事だと話しました。

「おせっかいバンカー」ポスターも制作した、京都信用金庫さん。

榊田理事長は
「『おせっかいバンカー』は、信用金庫の本来のあるべき姿として一人一人が実践していくことが欠かせない」と話します。

また、21世紀はまさしくネットワーク=人と人とのつながりが必要だとし、
「お金の融通をするのはやって当たり前。それプラス、知識や情報をつなげていく、そういった付加価値が必要。それを提供できるコミュニティマネージャーになることが求められるんです。地域のことは信金マンに聞いたらなんでも答えてくれる、誰かを紹介してくれる、ソリューションを提供してくれる…そうした人たちがいっぱいいる地域はクリエイティブで魅力的になる。このことを実践するのも街角の金融機関の役割ではないかなと思います。地域でバラバラにいる人たちが、地域のコミュニティマネージャーがいることによって繋がっていく、豊かな関係性ができていくというのがいい。そうした役割を担う人がたくさんいて、そうした方々同士が繋がっていくのが大事」

コミュニティマネージャーによって、バラバラに点在している人がつながる

京都信用金庫さんでは、11月に滋賀の膳所支店をリニューアル。若手職員のみ7名に任せるのだといいます。従来の金融の仕事は午前に集約し、午後はコミュニティマネージャーとして活動するための時間にするそうです。

コミュニティマネージャーの活躍が期待される膳所支店

「社員が輝いていないといけない、ワクワクした人の集団でないといけない。成長できる組織でないといけない。地域を良くするために企画し自分で考える時間を作る。それを社内でシェアして、共感の共有で会社を変えていく」と榊田理事長。
古里さんは「京都信用金庫さんは今榊田理事長がお話になったことを体現している」と感銘受けた様子でした。

つづいては但馬信用金庫の宮垣常務理事。
但馬信用金庫さんは「相談相手からビジネルパートナーへを」旗印に掲げており、今回はその中でもリレーションシップバンキングに軸足を置いた取り組みを紹介してくださいました。

宮垣常務理事

拠点とする豊岡市などの但馬地域は少子高齢化や過疎化が進んでいる地域。1946年から人口減り続けていて、それに加えて少子高齢化、コロナ禍で地域としての危機感は高いといいます。

「このままいくと但馬信用金庫のエリアは厳しいよね、オワコンになっていくかもしれないよね、と思っているし、自治体もコロナでかなり税収が減ってきている中で、公助の部分で今以上のものを期待するのは厳しいというのがある。自助・公助だけでは私たちの地域の未来は薔薇色とは言えない
参加している皆さんの地域によってはまだまだ既存のやり方で行けるところもあると思うが…その中でどうしたらいいかなということを考えながら取り組んでいる」
と宮垣常務理事は話します。

リレーションシップバンキングを深めるために取り入れているのが、土・日・祝日にZoomによる相談窓口。
現在は宮垣常務理事も含めた一部の管理職で回しながら、コロナ禍でも関係を深めるための取り組みとして行っているといいます

ありがたい土日の相談窓口

また、「ほとんど全ての金融機関は、ビジネスを加速させる本業支援とビジネスの軌道修正をする事業再生に力を入れられていると思う、そこに但馬信金はビジネルを新たに生み出す『地域プロジェクト創り』を3つめの軸として設けて三位一体でやっていくことに力を入れている」と話します。

0→1を作り出す『地域プロジェクト創り』にも注力することで、本業支援や事業再生の精度も上がる。さらに、金融機関が単なる交渉相手ではなくビジネスパートナーになって0から一緒に作っていく「伴走者」のような役割を担うことがこれからの時代に欠かせないといいます。

但馬信用金庫さんでは、地元でさかんな「かばんづくり」を産業観光的に昇華する「カバンコワーキング工房」を企画したり、創業事業者支援として地域クラウド交流会を行うなど積極的に地域のプロジェクトづくりに励んでいることが紹介されました。(前回の「第7回 豊岡 地域クラウド交流会」の記事はこちら

直前の京都信用金庫さんとは異なり、限られたリソースの中でさまざまな施策に励む但馬信用金庫さんの事例を聞いて、古里さんも「地方に所在してリソースも足りてない金庫も多いが、但馬信用金庫さんの先進的に取り組んで具現化しているところに勇気づけられた方も多いのでは」と話しました。

最後はサイボウズ青野から。IT企業の目線で「地域の金融機関に期待すること」をテーマに基調講演を行いました。
直前の宮垣常務理事の言葉を受けて「オワコンと見ていない、めちゃ期待している」とした上で「金融機関こそ地方創生の要」と青野。

青野慶久代表取締役社長

「地域クラウド交流会ってとてもいい。地域を活性化するには起業家を支援しないといけない、やっぱりGAFAのように…という人はいるが、日本でまずやるべきは『地域の起業家を育てること』。住民の方々が幸せになるサービスを生み出す人、地域が幸せになる事業をを支援する仕組みが大切」と話しました。

全国各地でたくさんの笑顔を生み出してきた「ちいクラ」

さらに、地方の中小企業の2大問題として「人手不足」と「非効率」をあげました。

地方の中小企業の2大問題

「魅力的な職場づくりとデジタルを活用した効率化で解決していくのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)。よく「デジタル化、デジタル化」と言われているが、トランスフォーム、組織が変わっていくことが大事。組織ごとデジタル時代に合わせたように変わっていく、すると魅力的な組織と効率化が実現できる。」
そしてノーコードのクラウドによって、地方の金融機関の方がITコンサルとして活躍している事例を紹介。
会場にいた人たちも興味深そうに聞き入っていました。

最後にパネリスト同士の質疑や会場からの質問に答えて充実のパネルディスカッションは終了。
京都、豊岡…それぞれ違った特色の街で、その個性にあった取り組みがなされているのがよくわかりました。
ちいクラを通してどのような起業家支援が行われたのかは、つづく後編で詳しく紹介していきます✏️