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スタッフ全員で児童のサポートができるように! kintoneでつくる大日向小学校のDX【イベントレポ①】

3月16日、サイボウズ ソーシャルデザインラボは学校法人茂来学園大日向小学校(以下、大日向小学校)と「イエナプラン教育のためのICTキントーンを活用した学校教育モデルの実証実験報告会」をオンラインで開催しました。

学校などでの課題解決にITの活用が求められていますが、まだまだ現場には広がりきっていません。サイボウズのクラウドサービス「kintone(キントーン)」を使う大日向小学校やサイボウズの楽校ではどのようにツールを活用して、どんな取り組みを行なっているのかを発表。2校のkintoneの使い方を知っていただき、お読みいただいた皆さんのお役に立てていただけると嬉しいです!

主な登壇者はこちらの3人

◾︎4年前に始まった実証実験 「誰もが豊かに、そして幸せに生きることのできる世界」を目指して

サイボウズは2020年4月から大日向小学校と一緒にkintoneを活用した学校教育モデルの実証実験を行っています。「誰もが豊かに、そして幸せに生きることのできる世界をつくる」ことを目標に、学校教育の多様化に伴う課題の解決、教職員の働き方の改革、児童一人ひとりの学び方に寄り添った教員の情報共有のあり方について試行錯誤を重ねています。

今回は、継続してkintoneを活用してくださっている「大日向小学校」と昨年12月からプレ開校しているフリースクール「サイボウズの楽校」の情報共有のあり方をそれぞれご紹介。教育の現場でのIT活用の参考にしてもらいたいと開催しました。

◾︎日々の記録アプリが、記憶を鮮明に蘇らせてくれる

今回は、大日向小学校教諭・秋山真一郎さん(以下、秋山さん)から2023年度の活用と成果の報告。プレゼンテーションの中では、児童の記録、職員のマスターデータ、今後やってみたいことについてお話しくださいました。

大日向小学校・秋山真一郎さん

大日向小学校は、長野県で5年前に開校した私立の小学校。一人一人を大切にするイエナプラン教育を取り入れており、子どもたちをスタッフ全員で見ることを大切にしています。

そのため、スタッフが見聞きしたことや子どもの様子をつぶさに記録していくことが重要です。多様な学びや大事にされている現在、一人一人の情報を残して共有していくというのは、どこの教育現場でも求められていることかもしれませんね。

教室での活用については、大日向小学校の稲井咲紀さん(以下、稲井さん)が紹介してくださいました。

稲井さん「kintoneで『日々の記録』アプリを作り、子どもたちの作品や頑張ったことなどを入れています。言葉では表現しきれないものも写真などで保存できるため、振り返る際に役立っています。」

2023年度 イエナプラン教育のためのICTキントーンを活用した学校教育モデルの実証実験報告会

『日々の記録』というアプリに全て情報を集約しているとのこと!そのアプリがこちら。報告会の時点で1000件近いレコードが入っていました。

『日々の記録』アプリのレコード一覧

なんとこのレコードは、教室でも入力され、随時更新されているしているんです。一般的には、時間をおいて職員室等で記入されがちな子ども達の記録。kintoneにしたことで、スタッフが見聞きしたその時に、新鮮な情報を保存することができるようになりました。別途時間をとって記憶を呼び起こす必要もないので、時間的な負担も大きく軽減されました。

1年に2回ある評価の際にも、具体的なエピソードがkintoneから取得できるため、「スムーズに記録が書けるのが良い」とのことです。また、学年が上がっても紐づけられた情報を呼び出せるので、子どもの成長を追っていけるのが楽しみなんだとか。

以下は実際のレコードの詳細画面。メモと写真があれば、後で誰が見返してもわかりやすいですね。

実際に活用している『日々の記録』アプリ。稲井さんは「作文や絵日記などはなるべく残しておきたいので、写真で保管してすぐ呼び出せるのがとても嬉しい」と笑顔で語ってくれました。

◾︎『日々の記録』アプリが「みんなでみんなを見る」を可能に

大日向小学校には「じゅうたんの部屋」と呼ばれるものがあり、この部屋での学びも『日々の記録』アプリに書き記しています。
この部屋は、子どもたちの学び方について話す場所です。教室での授業に加えてサポートが必要だとグループリーダー(クラス担任)が判断した時、じゅうたんの部屋へ招待し、1対1で教える時間を持ちます。子どもたちがより学びやすくなる方法を一緒に考えるのが特徴です。
スタッフと児童が1時間ほどじっくり向き合って話すので、以下のことがとても重要になってくると言います。

じゅうたんの部屋での活用

じゅうたんの部屋で前回とは別のスタッフと学ぶ時にも詳細な情報が引き継がれるため適切なアドバイスができると好評です。「先週は掛け算だったけど、今週は割り算をする」といった細かな情報も入れておけるので、どのスタッフでも切れ目のないサポートが可能です。
グループリーダー(クラス担任)も『日々の記録』アプリを見ることでじゅうたんの部屋での学びを知り、その子にあった声掛けをすることができます。

大日向小学校が大切にする「全員で見る」教育に、kintoneが活きているのがわかります。

このように記録されています(内容はダミー)

アプリを使う中で、児童情報を文字にする良さを感じたという秋山さん。
アプリから子ども達の成長を感じられることや、スタッフ同士で記録を継ぎ足し最新情報を取得できるためスタッフ間の引き継ぎ時間を節約できるのも大日向小学校の「一人一人の児童を見る」スタイルを後押ししていると話します。大切な情報を漏れなく、しかも特別な引き継ぎのための時間を設けずに共有できるのは大きなポイントですね。

全スタッフでもっとkintoneを便利に使っていくために、記録時間を確保することやスタッフ同士で協力し合いながら情報を打ち込んでいけたらと話していました。

今年度使ってみて感じたこと

このほか、スタッフの働き方の改善にどのようにkintoneを使えるかも試行錯誤中。「定額働かせ放題」という言葉まで使われてしまう教職員の働き方を見直し、自分たちで安心して休暇取得や勤務ができる状態にするため、kintoneで「勤怠管理」アプリを作ろうと試行錯誤を続けています。
アプリで働き方や休暇の取り方を共有できれば、先生同士での働き方、暮らし方改革ができるかもしれません。

子どもの自律を大切にする大日向小学校で、大人も自律した勤務管理をー。今後どんなアプリができ、どのように活用されていくのか楽しみです。

◾️今後について

一方、秋山さんは学校が5年目に入り、ノウハウが蓄積されてきた今だからこそ、大日向小学校なりのアウトプットの仕方を考えて、kintoneに蓄積している情報を子どもたちに役立つよう活用していきたいと考えています。

今後したいこと①子ども達の発達と成長の記録

大日向小学校は中学校も併設されており、小・中学校の9年間をみる仕組みづくりが必要だと感じているようです。
今あるものを上手に活用しながら、子どもたちの発達と成長がわかるような記録方法の整備、および整理をしていきたいと話していました。

今後したいこと②スタッフの「おとも」に

もう1つはもっとスタッフの「おとも」になるツールとして使っていきたいとのこと。もっとみんなに使ってもらえるようにできることを模索していきたいと話していました。

今後したいこと③学校の「知」の集積場として

また、学校の「知識」「既知」を集積し、それを皆が上手に活用できるようにしたいと考えています。

「これまでのGoogleのスプレッドシートは、検索ができるので、データをどんどん個別に作って、後から探してみられるのがとても便利だと感じていました。ただ別々にデータが作れる分、整理が必要だったんです。kintoneは、ポータル上でどんなグループがあって、どんなやり取りがされているのか、情報の全体像が見られる。ここがとても気に入っているポイントの1つです。また、少しずつアレンジしていけるツールだからこそ、今あるものをよりよく、まだないものを早く仕立てていきながらより良い学校の運営や働き方を実現していきたい」と話していました。

大日向小学校・秋山真一郎さん

kintoneでチーム全体の情報を共有できれば、誰がどのように動いているか、どこで何が起こっているかを把握しやすくなります。”kintoneは情報の全体像が見える”という秋山さんのコメントから、私たちサイボウズのメンバーも改めてkintoneを使っていただくことの良さを感じることができました。

続いては、昨年12月にプレ開校したフリースクール「サイボウズの楽校」でのkintone活用について。大日向小学校パートで挙げられた課題や今後の展望の参考になるアイディアが出てきました。
次の記事でご紹介します。