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冷たい布団、赤い頬。

気づけば年が明けていた。
いや、嘘だ。気づけば年が明けていた演技をした。

息子を寝かしつけた後、居間で過ごすこともできたがそうはせず、狸寝入りをした。

年明けのタイミングを両親と過ごし、「おめでとう」「今年もよろしく」と声をかけ合うのが億劫だった。

めでたいことは何ひとつとしてないし、今の立場的に今年もよろしくを言う側過ぎるからだ。

家を追い出される形で盛大に実家に舞い戻り、心労を振り撒いている。

今年もよろしく、ではライト過ぎる気もする。

年が変わったところで状況は何も変わらないとわかっていながら、それでも淡い期待をしていた。

やはり変わらない。
モヤモヤとした感情を抱いたまま年の境界を跨いだ。

年末年始を息子と過ごすことができた。
凧揚げをし、福笑いをし、雑煮やすき焼きをたらふく食べた。

それは一つ一つを独立して見れば幸せな時間だ。

でも「妻がいない」という枕をつけると途端に悲しく響く。

妻はどんな気持ちで年末年始を過ごしただろうか。それを考えるとこわい。

明日、息子を妻のもとに送り届ける。

風呂上がりで頬や耳が紅潮した息子と冷たい布団に潜り込み、手を握る。

明日もいっぱい遊んでから帰ろうと話す。

きっとこれから息子に悲しい思いをたくさんさせるのだろう。多分それは避けられない。

だからそれ以上にたくさんの幸せを感じて欲しい。悲しみを消すことはできなくても、幸せの割合を増やすことはできるはずだ。

そろそろ寝よう。
息子の布団に潜り込み、密着して寝よう。

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