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らっきょうを漬けたくなる気持ち

スーパーにふらりと立ち寄ったある日のこと。赤い蓋の大きな瓶やらっきょう酢がばばんと売られているとなりにこそっと何個かだけ洗いらっきょうの1kg袋が売られていた。

らっきょうっていつ出回るものなのかも知らなかったが、今だったのか。そうかそうか。

昨年はじめて梅を漬けてそのかわいらしさにすっかり虜になった私は、「じゃあもっとミニこいらっきょうはさらにかわいいに違いない」と思い、今年はらっきょうも漬けようとざっくりと心に決めていた。何も調べたりはせずに心に決めただけ。

ざっくり決めたわりには夕食がカレーのたびに早く自分が漬けたらっきょうをルーとごはんの境界線上にちょこんと添えたいという気持ちが湧き上がる。桃屋の瓶詰めらっきょうには決して手を出さず、自分で漬けるその日をいまかいまかと待っていたのだ。

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ついにその時がきた。

はやる気持ちを抑え、まずはよくらっきょうについて調べようと一旦買うのを我慢してスーパーを後にした。らっきょうを我慢するためにうっかり包装紙の両端がキャンディーのようにくるくると捻り閉じられた、バナナとクリームがスポンジにたっぷり挟まったバナナクリームサンド的なやつとピクニックのカフェオレを買ってしまったではないか。

家に帰ってバナナクリームサンドを頬張りながららっきょうについて色々と調べると、どうやら洗いらっきょうよりも土付きのらっきょうの方がいいみたいだった。

しかし、近所のスーパーを全て回っても土付きらっきょうは売っておらず、断念して洗いらっきょうを買った。でも、土付きをどうしても買いたくって、「ポケマル」という農家さんから直接野菜や果物を買えるサイトで購入した。

鳥取の土付き。以前鳥取近くに住んでいた時はまだおばさん化が進行していなかったので、らっきょうなど見落としていたが、鳥取はらっきょうの一大産地である。あの時すでにおばさんだったらよかったのに。

あの頃は、よく垂れ目の後輩「ふじぴー」とキャンプをしていた。鳥取砂丘横の柳茶屋キャンプ場で、バーベキューをしたとき、彼は最初にコンロいっぱいにウインナーだけを焼き切った。そのときコイツは果てしなくかわいいと思ったのだった。

そんな話まで思い出してしまったが、とにかく土付きのらっきょうも買って、瓶やらも買い足してしてたら思いがけず5000円くらい使っちゃったんだ。でも漬けたいんだもの。仕方ない。次はまた1年後になるんだもの。今漬けたら1年手作りらっきょう常備生活がはじまるんだもの。

せっかくだからがっつり漬ける過程をブログにまとめた。ちなみにひそかにYouTubeに動画もアップした。時系列でつぎはぎしただけの動画だが、急に自分の日常を記録しておきたくなったのだ。

らっきょうを漬けるのはなかなかに骨の折れる作業だったが、楽しいでしかなかった。

こんな風にらっきょうに振り回されるなんて。だって、私らっきょうが届いて、開封したとき泣きそうになるほど嬉しがってしまったもの。土付きらっきょうがびっしり箱詰めされている様が妙に感動的だったのだ。どうしてしまったのか今の時代にそぐわない表現ではあるが、私はおばさん化が著しい。涙腺の緩さも涙腺が緩む事柄もおばさんじみている。

でも、おじさん化よりもおばさん化していく自分の方が自分らしいなと思ったりもする。きっと来年の今頃にはハーブのポプリを作り、パッチワークのコースターを作り、アロエで作った虫除けスプレーを吹きかけているのだろう。

その姿が、見えすぎてこわい。
未来の私の姿をさらに細かく観察すると足元には自作のわらじスリッパを履いている。わらじスリッパを脱いで寝床に向かったと思ったら、梅干しの種を詰めた自作の枕に頭をのせた。

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