【FC町田ゼルビア】決戦!水戸ホーリーホック ~541撤退への振る舞い考察~【2023 J2第22節】

前半戦を首位で折り返したことで、本気で対策を講じてくる相手との2巡目バトルを見ることができます。ありがとうございます。

J2が突き付けてきたのは541撤退。これまでの試合から見ても、町田がボールを保持する局面が多い形で時間を進めても乗り切れると考えるのは容易に想像がつく。

選択肢を制限する水戸の守備

立ち上がりから町田が簡単にボールを保持できる展開であり、水戸の陣地への侵入は容易かった。しかし、そこからの振る舞いは苦労することになる。

水戸のミドルゾーンでの1列目、2列目の主な振る舞いはステイ。町田のパスルートをロングボールまたは大外に制限させる狙いを持っていた。ロングボールで来るならば数的有利のセンターバックに加えて、武田英寿が挟み込む形で抑え込んでいた。サイドの守備は町田のサイドバックを放置する、あるいはウイングバックに任せることが選択できた。したがって水戸の2列目は3レーンの幅で中央封鎖しつつスライド守備を実行する。

お互いが縦志向の応酬をするなかで、町田は効果的なボール循環とポジショニングを探す作業を続けた。ビルドアップの形で四角形の2-2、菱形の3-1を使い分けながらボールを外に逃がしたり、保持者が立ち止まったり前進することで相手がどこで喰らい付くのかを見定めていた。しかし水戸の陣形が崩れることがないため、武田が上がってくればそれでよしと言わんばかりに縦のボールを選択しパルプンテで何が起こるのか試していた。

町田の次なる手はセンターハーフの行ったり来たりの動きだった。たまにアタッカーユニットに加わったり、内レーンでサイドアタックのサポートと逆サイド展開を実行するアタックを織り交ぜる。これによりサイドが活きてくることになる。平行パスのエラーからの被カウンターをトリガーに水戸にも影響を与えつつ、町田の幻のゴールとなる36分のロングスローへと続くサイドアタックも生み出した。

町田の前半の動きを見てみると、ビルドアップでパスミスをするリスクを冒さないことをプレー原則とした町田らしい振る舞いの連発だった。541撤退守備に対してはボール保持で相手の1,2列目を支配することがセオリーだが、外への展開や中に刺し込んでもボールがすぐに戻ってしまう現象は他の試合でもたびたび垣間見える。ただそれが失点しないに繋がっているのが町田の強みでもある。

一方で水戸は蹴っ飛ばしより時折見せるビルドアップからの攻撃が効果的だった。もともとボール保持を特長とするチームであり、こちらのファーストディフェンスやデュエルを剥がすことに長けていた。こちらの攻撃を封殺するために541撤退の戦略を選択してはいるが、守備全振りではないとの空気を出しつつ前半をスコアレスで折り返す。

後半の町田の動き

前半の町田のサイドバックは、黒田剛監督が試合後インタビューでポジション取りを「あまりにも低過ぎる」と表現するほど攻撃を自重していた。水戸のカウンターに備えると言うよりは、ビルドアップの出口役としてボールロストへのリスク回避の意志が強く出ていた。得点を取るためにはポジションを修正する必要があったし指示もあったようだが、確認する前に被コーナーキックからのカウンターで町田が先制する。ポープ ウィリアムのキャッチからのロングフィードとエリキの裏抜けスピードは541撤退の意味を否定する計算された一撃となった。

スコアが動いたことで得点を取りにいかなければならない状況の水戸は、安藤瑞季の根性を中心にファーストディフェンスが町田のビルドアップユニットに喰らい付き始める。町田はセンターバックが奥行きを作り、サイドバックの位置も高くなることで水戸のプレッシングを回避していた。そして再び押し込む町田であったが、ロングスローのセットプレーが水戸に対策されていて、前に残す安藤を起点に被カウンターに繋げられる不安さを見せていた。

そして65分に水戸が同点ゴールを決める。町田の自陣深くのスローインを跳ね返し合ってからの梅田魁人のスーパーなドライブシュートだった。ゴール自体は黒田監督のなかでも防げないものと扱われた。ただ水戸のスローイン守備を回避できなかったことや、スローインに繋がる手前のプレーで水戸のビルドアップを妨害できなかったところに責はあった。そして水戸に541撤退の意味を取り戻させてしまったのは悔やまれる。

同点にされてからの町田はセットプレーとクロスからの攻撃のみに期待するしかなかった。失点前に疲労が著しい髙江麗央を逃げ切りのための稲葉修土と交代させていたため、地上戦で541撤退を攻略する余裕はなくなっていた。更に決定的な場面が生まれなくなると、前半から水戸のビルドアップを防げなかったことが仇となり、ゲームの主導権も失ってしまった。後半戦は3-2ビルドアップに対するプレッシング、とりわけセンターハーフを如何にプレス参加させるかを見直す必要がありそうだ。

最後まで献身的に動く両チーム。町田は87分に荒木駿太→沼田駿也、下田北斗→松井蓮之、ミッチェル デューク→藤尾翔太の交代を行いチームの活性化を図る。しかし与えられた時間が少なく試合はこのままドロー決着となった。この遅い交代はデューク、エリキ、平河に対しての依存度が高いのが現状という証左を示していた。

おわりに

町田からしてみれば0-0で進めて構わない、少ないチャンスをものに、1-0で勝てればいいを実行していたものの、541撤退の趣旨と違うところで同点となってしまったのは何かやるせない。前半戦の内容を踏まえて町田を止めるなら5バック!の風が吹くのは当然なのでどげんかせんといかんのだが、非論理的にはどうにかなっちゃうので、論理的にどうにかしちゃえるのか引き続き注目したい。

水戸はやっぱりボール保持が面白いチームだった。前回対戦でウイークポイントとなっていた右サイドもビルドアップ自体も改善されていた。今後も5バックで残留争いの活路を見出すのだろうか。

貴方の心の中にいる神に祈りましょう。
それでは🙏

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