【FC町田ゼルビア】大分トリニータ戦雑感【2023 J2第10節】

難敵の秋田、磐田と勝負が続いた4月の3連戦。最後のお相手はラスボス大分トリニータ。日程くんって怖い。

スターティングメンバーはセンターバックにカルロス グティエレスが戻った。池田樹雷人は捻挫の模様だ。システムは磐田戦と同じだが、サイドハーフの髙橋大悟と平河悠の配置に入れ替わりが見られた。

立ち上がりから西川幸之介を加えてビルドアップを行う大分に対し、ゴールキーパーにプレスを仕掛けて高い位置でのボールの奪い所を探る町田が印象的だった。ビルドアップの出口役の野嶽惇也が町田のファーストディフェンスを突破したところに髙橋があわや警告と思わせる背後からのタックルを振る舞う姿は、この試合がいつもと異なるものであることを表していた。おそらく藤原優大の退場もメンタル的な背景になっているだろう。

大分はボール保持でWMシステムを採用している。つまり3バック軸、中盤はボックススタイル、ウイングバックの高さがトップ付近のポジショニングをベースとしていた。

M側はビルドアップユニットで、上述の通りゴールキーパーが参加する。それにより3バックと2バックが併用可能な構造を備えている。またセンターハーフがスペースに移動して菱形を形成する動きが上手かった。

大分はこの構造を自陣の深い位置でのビルドアップで最大限に機能させる。スローテンポなボール回しで相手を引き付け、M側からW側のアタッカーユニットにパスを通し、数的リソースが足りている状態での速攻へと展開する。そのアタックは姿変われど今も疑似カウンターと呼ばれ続けている。

特にスピードとドリブルが特長の左ウイングバック藤本一輝にボールが渡るのは危険なため、町田もスピードのある平河を右に置いておっくんとのユニットで対抗したと思われる。また、大分のビルドアップはセンターバックが右肩上がりとなる傾向があるため、守備のポジショニングに信頼を置ける髙橋を左サイドで起用したのも論理的だった。

試合序盤の大分は慎重だったように思える。何度か町田のファーストディフェンスを突破しチャンスに繋げたにも関わらず、ギアを上げていない風に見えた。すると15分辺りから町田が攻勢に回る。町田のボール非保持は424。ボール奪取を兼ねたファーストディフェンスは大分のボール前進を制限させていた。

2トップの中央封鎖とサイド誘導。サイドハーフの大外レーンへのパスコースを遮断しながらセンターバックに牽制する動き。そして稲葉修土または髙江麗央がカット目的で高い位置で待ち構える町田のグループ守備は、大分にとって点や線でなく面で守られている圧を受けていたに違いない。

結果、町田がショートカウンターや、541構造の穴を突いた縦志向またはビルドアップでボールを前進をさせる展開に変わっていく。その中でリスタートの数も増えていった。

23分のデザインされたコーナーキックからの先制点はこの試合の分水嶺となった。ゲキサカなどの報道コメントや、トレーニングで誰が指示していたなどの郡司さんのネタバレ記事がたまらない。先制点はメンタル面で町田にとって会心のバフを、そして大分に痛恨のデバフを与えた。

33分には大分のゴールキックからのビルドアップを内誘導し、相手のペナルティエリア内で縦パスをカットした荒木駿太が2点目を奪った。

大分の手詰まりと町田の攻勢は続く。39分にはゴールキックのロングボールを跳ね返し、稲葉が中盤の予防的マーカーの頭を越す技ありのダイレクトパスを繋げて速攻。最後は右に流れたエリキが3点目を決めた。

15分以降から前半終了まで大分はシュートを撃つことが出来ず、まさに町田がハメた展開となった。

その要因はWとMが分離したことにある。町田のハイプレスによって中盤がWへの供給ラインを背中で、守備陣がラインコントロールで消しながら大分のビルドアップを制限させていた。つまり8v6が6v6となり高い位置での奪取を成功させていた。

つまるところビルドアップにいくつか問題がある。配置は洗練されているが、擬似カウンターに囚われすぎ、あるいはそれしかないと言えるかもしれない。奥行きの利用は元からビルドアップ開始位置が低いことが多いため備わっていない。それとおそらく4v2の突破に慣れ過ぎていて同数対面は凡庸となっている。結果、町田との6v6を制することが出来なかった。

中盤を省略したアタックも備わっていないようだ。そもそもウイングバックがこちらのサイドバックをピン留めしているため、裏抜けは数的不利で効率が悪い。

言い換えると大分は、これが高強度のなかで出来たらダントツでJ1行きだよね、というビルドアップのオプションが未修得だった。なので町田の快勝なことに違いはないけども、対戦のタイミングが良くて勝利することが出来たのでは?との不安も残っている。決着は後半戦でということです。

時間が来てしまったのでここまでじゃ。

なお試合の後半は大分のボール保持が433(2323)に変わり、途中から高さも加わって町田は失点することになる。433を体験するのは初めてだと思うので、もしかしたら分析続けてこっそり追記するかもしれません。

何はともあれお見事でした。

貴方の心の中にいる神に祈りましょう。
それでは🙏

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