【FC町田ゼルビア】ベガルタ仙台戦から振り返るバランス公式7+3の考察【2023 J2第1節 開幕したよ!】

お前ポポ期を黒歴史にして書き残してねえじゃねえか!と仰る方もいるかもしれませんが今年もよろしくお願いします🙏

まずはおさらいで、町田ゼルビアの昨シーズンを数字にすると以下となる。

【2022シーズン】
順位15位(勝ち点51)
14勝9分19敗
51得点50失点

得点をいまいち重ねられない一方で、総失点を抑えることが出来なかった。

今年はどんな結果となるのだろうか?新たに就任した黒田剛監督はJ2優勝(勝ち点90)と総失点を30以内に抑えたいと目標を語っている。

また、就任会見などで青森山田ベースで臨むことを、そしてプレシーズン中は守備改善の実施を明言している。

開幕が近づくにつれ情報が非公開になるなか、この「走る前提」のチームは目標に対してどのようなメンバー構築で初戦を迎えるのか気になる所だった。

7+3の公式

仙台戦は7人の「チームプレイヤー」と3人の「個人主義者」を先発に選んだ。

「個人主義者」とは決してネガティブな意味ではなく、ナーゲルスマンが用いたスタンドプレーで違いを生み出せる選手のことである。

「3、4年前の私は、無失点に大きな喜びを感じるほど成熟していなかった。たくさんのゴールが決まる試合こそ、価値があると思っていたんだ。でも、今は違う。無失点への野心を感じている。
(略)
私は攻撃思考の選手と防御思考の選手を分けて考えていて、今はピッチ上のそのバランスがうまくいっている」

『ナーゲルスマン流52の原則: サッカーを変革する若き新世代監督の、常識に囚われない“フレキシブル”思考』P108

ここでの「個人主義者」とは、「目立つプレーを好む選手」のことだ。彼らも守備のタスクを実行するが「チームプレーヤー」に比べて自由が大きい。時にスタンドプレーに走ってしまうが、うまくいけば違いを生み出せる。
「個人主義者」がいないと攻撃が予定調和になるし、逆に多過ぎると守備が不安定になる。

『ナーゲルスマン流52の原則: サッカーを変革する若き新世代監督の、常識に囚われない“フレキシブル”思考』P111

町田ではミッチェル・デューク、エリキ、平河悠の3人が「個人主義者」に該当するだろう。

デュークは高さとパワーで、エリキと平河はスピードにより違いを生み出すために起用されている。

その他は「チームプレイヤー」に該当し防御思考の比率を高める選手たちだ。髙橋大悟もこちらに含めた。彼の動きに注目してみるとゼルビアを更に楽しめると思う。

2次キャンプから合流したエリキが先発起用なのには驚いた。そして縦型2トップでなくサイドハーフ。バランスが崩れそうと思ったが、試合は無失点ドローだった。

青森山田っぽさやミョンヒさんのアイデアが垣間見えるボール保持を行う町田に対し、仙台がひっくり返して主導権を奪うみたいな我慢比べはかなり面白かった。

後半の始めにメタられた!と思いきや、耐え難きを耐え、忍び難きを忍び作戦で失点せずに盛り返す町田が見られる日が来るとは思っていなかった。

この展開に黒田監督が思考する攻防バランスの答えが潜んでいそうだ。というわけで少し振り返ってみよう。

町田のボール非保持の特徴

仙台のビルドアップは3-1ベース。センターの菅田真啓が少し前に上がる形も見せる。

町田は第1プレッシャーラインを仙台のDFとエヴェルトンの間に設定。走る前提の個人主義者、デューク、エリキ、平河たちがタスクを担う。高い位置から奪いにいくこともあるがライン設定は思ったより高くない。

更に髙橋大悟はエヴェルトンをマークしながらも、1stプレスの補間または4人でプレスする形も見せた。

奪取が目的のプレスは組織的と言うよりかは単発的に近いがそこから連動して迎撃する形に見えた。

そこに門番のセンターハーフ2名が加わり、基本的に6人でビルドアップを妨害する。

対する仙台はGKが積極的なビルドアップ参加を行わないので7対6での攻防が始まる。

蛇足だが今年もJ2でGKを含める効果的なビルドアップを見るのは稀有だろう。

サイドバックは1stプレスでは基本的に守備ラインにセットされ速攻に備える。前プレで上手くハメられる時は7人での対人性の強い妨害へと移行する。

町田がビルドアップ妨害を突破されたパターンは主に2つ。1つは守備の基準点をバグらされて大外にボールが渡るケース。2つ目はセンターハーフがボールを奪えずに裏返されるケース。

いずれの対応もDF陣がリトリートをしてからの守備となる。キャンプでは1stプレスの際からラインの上げ下げを徹底してきたらしい。

サイドからの侵入ではクロス精度の難にも救われレベルの高い対応を見せた。エリキをサイドハーフに配置しても問題は無さそうな印象を受けた。

センターハーフを越えられての侵入はさすがにマズイのだが、シュートコースを制限させつつ、最後はポープ・ウィリアムが黒田監督の求めるシュートを身体に当てる活躍を見せピンチを凌いだ。

町田のボール保持の特徴

町田は縦志向とポゼッション志向のハイブリッド。

ポゼッション志向の元がポジショナルプレーなのか非ポジショナルに区分されるのかはまだ特定できない。それは時間とスペースを紡げていないためであり、開幕戦を見る限り非ポジに該当すると思う。

ただ選手の流動性の意識は以前よりも高い。数的優位を作り出す数々の流動パターンはおそらくミョンヒさんが裏ボスとなって仕込んできてはいる。

その話はおいおい。ビルドアップで深い意味が作れるようになる頃に追ってみたい。

仙台は532ブロックを形成することを優先としながら牽制目的でプレスを仕掛ける。そこまで積極的でないゆえ縦展開やサイドを変えることは容易だった。

しかし仙台の5バックが整っている状態での定位置攻撃は相手を崩すまでに至らなかった。

なので個人主義者に焦点を当ててから単騎またはチームプレイヤーが援護をするアタック傾向が増えた。

中でもロングボールのターゲットマンとなり陣地回復が望めるデュークへの依存度は現状高い。

左サイドでボールをキープしエリキとユニットを組む形のアタックは相手の脅威となっていた。ただしデュークが寄ることでゴール内のリソースが不足していたし、後半は相手の左サイド攻撃の影響でアタック数を減らしていた。

平河の右サイド突破も脅威的だった。カウンターやイーブンな縦パスを先に触りクロスに持ち込むまでがエグい。

と言っても相良竜之介は根性で持ちこたえていたし、平河本人やサポートに来た奥山や髙江を含めたクロス攻撃は精度が欠けていた。

個人主義者たちがそれぞれの特徴を活かして走り回るなか、トップ下の髙橋大悟は常にバランスを取っていた。

個人主義者たちのサポートとポジションの入れ替え。ビルドアップ隊の参加や出口役。なんちゃらロールの一員、サイドアタックの平行サポートとサイド変更役。

29分に巡ってきた決定機を外して地味な印象に終わってしまったのが切なすぎるほど攻守に渡り様々なタスクをこなしていた。

あとはボールをロストした後に被カウンターとなる場面が少なかったのも特徴だろう。

縦ポンからのセカンド攻防が多いためと言うのもあるが、個人主義者たちがゲーゲンプレスを、チームプレイヤーたちが予防的マーキングを行っていたからと言う理由も大きい。

走る前提を厭わない選手達を補強できたのと、プレシーズンからのトレーニングの成果が出ているのだと見て取れた。

まとめ

町田がピッチ上でバランスを保つための7+3の公式。ボール非保持ではガッツリ前プレと言うところまではいかず致命的なリスクは避けているプレスだと感じた。

そして中長距離のカウンターからひっくり返せる駒が揃っているため、ある程度押し込まれるのは許容。という考えありきでの424プレスを形成していた思われる。

ボール保持ではカウンターとクロス攻撃の志向を強めつつ、個人主義者たちにボールを集める。そのサポートとしてまずは髙橋大悟が加わり、続く形で後続のチームプレイヤーたちが援護に回る。

チーム全体の守備への切り替えも高い水準で行えている。

と言う形でベースとなるものは披露できていたのではなかろうか。

走る前提のチームだからこそのサイドにエリキなのだろう。2トップにすると6+4となり不安定となるのかもしれない。

相手によっても7+3の公式でいくのか、割合が変わるのか見届けたい。

ゆくゆくは相手によってプレスの形を変えるとは思う。まずは7+3のまま中盤の構成のみ▽になったりしそうな気はする。

そしてボールコントロールの精度やチームプレイヤーによるチャンスメイク。センターハーフがボールを奪えずに裏返される問題が解消できればもしかしたらもしかするかもしれない。

というわけで今年はできるだけ書いていきたいと思います。

貴方の心の中にいる神に祈りましょう。
それでは🙏

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