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コミュニティは試着できるベースキャンプ?|読むPodcast「田中健士郎の働き方ラジオ」#140-1

「読む働き方ラジオ編集室」の藤本ゆう子です。

今回はコミュニティについて。
問いでつながるコミュニティ、「議論メシ」主宰の黒田悠介さんのゲスト回をご紹介します。

「コミュニティとは何なのか」

言語化しにくいコミュニティの魅力を、絶妙な例えでお届けします。

「コミュニティってどうなの?」「なんでコミュニティに入るの?」と疑問に思っている人は必見です。

トークが進むにつれて、コミュニティの解像度があがっていきますよ。

黒田悠介さんのプロフィール

黒田 悠介(くろだ ゆうすけ)
問いでつながるコミュニティ「議論メシ」を主宰。
ハンチング帽とメガネがトレードマーク。

対話で課題を解決する「ディスカッションパートナー」としても活動。
キャリア論『ライフピボット』を出版。
経営者やキャリアコンサルタント、フリーランス研究家を経験し、コミュニティ論とキャリア論を発信し続けている。

問いでつながるコミュニティ「議論メシ」とは?

田中 健士郎 (以下、田中):今回は「働き方ラジオ」の大きなテーマの1つでもある、コミュニティについて深堀りしたいと思います。
さっそくですが、「議論メシ」について、簡単に教えてください。

黒田 悠介(以下、黒田):「議論メシ」は6周年を迎えたコミュニティです。メンバーは300人ちょっと。平均年齢は私と同じ38歳くらいで、10代から70代まで幅広い年代の人が集まっています。

6年間で開催したイベントは約1,200回。月15回くらいは何かしらやっています。テーマ(問い)についてディスカッションをして、新しいアイディアが生まれる場を作り続けているんです。

田中:以前、ライターゼミとコラボイベントを開催しましたよね。「ライターが生き残るには」という「問い」を、議論メシのメンバーと一緒に考えました。ライターだけではわからなかったことが見えてきて、「問い」の力はすごいと思いました。

黒田:ありがとうございます。「問い」があることで人が集まるんです。「問い」には人の頭を勝手に駆動するハッキングツールのようなところがあって。最近の言い方をすると、「プロンプト」ですね。

人間にとっての「問い」は、AIにおけるプロンプトのようなものです。例えば、「今日の晩ご飯は何食べる?」と聞かれたときに、思わず考えてしまうように、強制的に脳を動かします。それを活用すれば、人の頭を使っていろいろな人とコラボレートできると思っています。

田中:なるほど!コミュニティは社会に必要とされているのか、なぜ必要なのかも伺えますか?

黒田:コミュニティには、大きく2つの流れがあると思います。

1つは、企業がマーケティングやブランディングの一環として、コミュニティを使うものです。ファンの熱量を外に伝える「ファンマーケティング」という言葉が生まれていますね。

もう1つは、個人のニーズです。コミュニティらしいコミュニティがない中、人工的でもいいから、何らかのコミュニティに所属したいというニーズがあり、オンラインサロンが立ち上がっています。

終身雇用が当たり前でなくなる中、自分のキャリアや人生を預ける場所がなくなっている。地域コミュニティもそれほど強くない。都心だと、地域に根ざして生きることは、あまり親和性が高くないですからね。

企業のニーズと個人のニーズが合流して、コミュニティが盛り上がっていると感じます。片方だけのニーズを満たしてるコミュニティもありますし、両方を満たすものもありますよね。

コミュニティはキャリアを試着できるベースキャンプ?

田中:「議論メシ」は、どういう位置づけですか?

黒田:対象は、どちらかというと個人です。「議論メシ」には「キャリアの試着室」のようなところがあります。

会社では、みんな似たような経験をしているので、自分のスキルや経験って特殊性が少なく感じるんです。ところが、コミュニティの中で自分の経験や知識を伝えると、めちゃめちゃ喜んでもらえる。

「キャリアの試着室」は自分の位置づけや、貢献できることを試すところです。

田中:いきなり転職ではなくて、自分のキャリアにつながるものを試着するような。

黒田:そうですね。例えば、コーチングしたいときに、メンバー向けにコーチングをしてみる。イベントやワークショップをやりたい人が、いったんやってみて、テストマーケしてみる、プロトタイピングしてみる。そんな使い方ができます。

田中:挑戦を試着するように気軽にできるところ。ライターゼミでも、似たようなことがあります。Podcastを始める人がいてメンバーがリスナーになったり、キャリアカウンセラーを目指してる人がワークショップをしたり。試着室のニーズはありそうですね。

黒田:あとは、ベースキャンプ的なところもあります。登山するときって、ベースキャンプを建てて、そこから頂上にアタックするんです。ベースキャンプで仲間と落ち合って、ご飯を食べて、エネルギーを蓄えて山に登る。すると、成功率が高い。

失敗しても、戻ってきてベースキャンプで体力を蓄えればいい。試着室とベースキャンプ、両方の意味合いがある気がします。

田中:確かに!ふもとから1人で登り切るのは大変ですけど、ベースキャンプから行けば、かなり高い山でも挑戦しやすくなりますね。

議論メシは、起業家が多いのですか?

黒田:フリーランス、会社員、経営者と3割ずつくらいです。世代も幅広いので、バランスがいいですね。

好奇心旺盛で、アイディアや経験を惜しげもなく人に伝えるGiverが多いです。

田中:ライターゼミも似ています。Giverが入ってくるのか、入ってからGiverになるのか。

黒田:Giverが集まるところに、Giverが来やすいというのはあると思いますね。議論メシは、メインコンテンツであるディスカッションそのものが、Giveの場なんです。

ディスカッションでは、自然と自分のノウハウや考えていることが出る。Giverではない人も、結果的にGiverの振る舞いをすることになる。

コミュニティは「まち」や「森」?

田中:ライターゼミは、メインコンテンツが明確ではないんですが、コンセプトに「まち」というのがあります。

最初、オンラインサロンやサービスのように見せたときに、うまく回らなかったという経験があって。悩んでいたら、メンバーが「みんなで作ろうよ」と言ってくれて、「まち」というコンセプトが浮かんできたんです。

自分が「まち」を良くしようと動くと、結果的にチャンスが得られたり、成長につながったりする。そこに身を置くと、自分から挑戦したりGiveしたりすることが、自分にも返ってくる。どんどんGiveが当たり前になるような、循環がありますね。

黒田:「まち」のメタファー(比喩)はステキですね!コミュニティをどういう例えで話すかは、けっこう個性が現れますよね。

ライターゼミは「まち」ですが、コミュニティを「森」と言う人もいます。森にいる生物多様性のように、生物同士が依存し合って、うまく循環してる様子ですね。

議論メシでは、「公園」と言うこともありますよ。サッカーで遊んでる人や砂場で遊んでる人がいて、少し疲れたらベンチに座ってもいい。関与の仕方がいくらでもあって、「これをしなきゃいけない」ということはない。

どんな例えを使うかで、どういう眼差しでコミュニティを見てるかがわかる気がします。

田中:「まち」「森」「公園」には共通点がありそうですね。

黒田:コミュニティについて伝えるには、一面的にでも切り出す必要がありますね。「試着室」や「ベースキャンプ」もメタファーの一種です。

「おでん」って言う人もいました、笑。出汁がカルチャー。味がしみていくこともあれば、逆に牛スジみたいに味を出してくれる人もいて。いろいろな人がいることで、おいしくなっていく。

田中:おもしろい!ポカポカ温かい感じもいいですね。

黒田:メタファーを聞くと興奮しちゃうんです。個性が出ますよね。この人の見立てはこうなんだ。「まち」って言ったぞ!と、ちょっとテンションが上がってしまいました(笑)

田中:企業だと「船」と例える人もいますよね。

黒田:目的・パーパス・ビジョンがはっきりしていたら、目的地に行く乗り物にしたくなりますよね。

私たちがやってるようなコミュニティは、目的地をあえて明確にしていません。明確にすると、メンバーを目的地に行くための手段にしてしまう。特に、議論メシはメンバー自体が目的なので。

田中:主人公はメンバーですよね。それぞれの人生に目的がある

黒田:本当にその通りです。議論メシを手段にして、その目的を叶えてくれたらいいかなと。

田中:めちゃめちゃ共感します。当初、僕は企業のメタファーでライターゼミを始めたんです。ミッション・ビジョン・バリューなんて作っちゃって。でも、ビジョンを掲げても、コミュニティでは、はまらなくて。

よく考えると、関係性がそもそも違うんですよね。パーパス(目的)を達成するような組織ではないんだと、気づきました。

黒田:周りにあまりコミュニティがないので、振る舞いがわかりにくいですよね。何かお願いするときに、取り引きモードで「いくらでやってくれますか?」と言ってしまうような。

でも、そういうことじゃない。組織より「村」に近いんです。「お互いさま」「持ちつ持たれつ」みたいなところがある。

資本主義から贈与空間へ!おいしい大福を作る人たちって?

田中:黒田さんはその辺の肌感があって、議論メシをスタートされたんですか?

黒田:いや、むしろなかったです。ディスカッションパートナーという肩書きで活動する中で生まれました。

基本的に1時間いくらでディスカッションする、ゴリゴリに資本主義の世界でやってきたので。

取引じゃなくて「贈与」なんだと気づいたときが、一番大きな転換点でしたね。「500円あげるから500円のものをください」という資本主義的な世界でしたが、そうじゃないと気づきました。

親子関係と似ています。子供を育てるときに、いつか私の面倒をみてくれるからという取引でやってないですよね。

田中:確かにそうですね。クラウドワークスはフリーランスが多くて、ライターゼミはそこから作ったコミュニティなんです。だから、最初は取引モードで入ってきた人が、だんだん「あれ?これ何なんだろう?」となって、贈与モードに変わっていく瞬間を見るのが、けっこう好きなんです。

案件を取るとか、お金を稼ぐとか、目の前のことを一生懸命やってきた人が、温かい贈与的なコミュニティに気づいて、ほっとする瞬間。

でも、長期的には稼げるようになる、絶妙なコンビネーションもあると思います。

黒田:それで言うと、和菓子の「大福」みたいなんだろうと。餡子(あんこ)の部分が贈与で、外側が取引というイメージです。

議論メシでも、共同創業者を見つけて起業するケースや、一緒にやったイベントが盛り上がって、マネタイズできたケースがありました。

中は贈与空間ですが、そこで得たアイディアやスキル、つながりなどを持ち出して、外で稼げるようになることはありますね。

田中:大福の餡子を練って、おいしくする活動(贈与)をして、いいものができると、高く売れる。

黒田:そうそう。取引を否定するのも良くないし、全部を取引にするのもつまらないので。
併せ呑むところがコツだという気がしますね。


「議論メシ」主宰の黒田悠介さんのゲスト回、
2023年11月19日放送分(前半)をお届けしました。

私は1年前、このお話でいう「資本主義的」な考え方で、オンラインコミュニティ「ライターゼミ」に参加しました。

当時は、
「条件のいい仕事はどこに転がっているの?」
「私にも教えて!」
と思っていました。

あー、書いていると恥ずかしい(赤面)。

でも、おいしい仕事が転がっているわけではなかったんです。
そのことに気づくまで、半年ほどかかってしまいました。

当時の私は、固くて、味がしみていない小豆(あずき)のようでした。
まだ餡子(あんこ)にはなれていません。
大福なんて、夢の存在です。

どうすればいいかわからなかったけど、
ただ、まわりの餡子が何をしているのか、見ていたんです。

そんなことをして、半年が過ぎたころ、
いつの間にか、みんなと同じお鍋に入って、コトコト煮込まれていることに気づきました。
そして、気持ちが穏やかになり、ワクワクしてきたのです。

「このお鍋の中にいてよかった」

田中さんと黒田さんのお話を聞いて、そんなふうに思いました。

おいしい大福、作りましょう!

後半はこちらからどうぞ。


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