これから必要なコミュニティは「共創分散型」|読むPodcast「田中健士郎の働き方ラジオ」#140-2
こんにちは。「読む働き方ラジオ編集室」の藤本ゆう子です。
コミュニティについて語られた、「議論メシ」主宰の黒田悠介さんのゲスト回。
後半は、コミュニティマネージャーとこれからのコミュニティについてです。
コミュニティ運営に興味がある人やコミュニティを盛り上げたいと思っている人は、ぜひ読んでみてください。
前半はこちらです。
黒田悠介さんのプロフィール
求められるコミュニティマネージャーとは?
田中 健士郎 (以下、田中):コミュニティマネージャーに求められていることについて、お伺いできますか。
黒田 悠介(以下、黒田):コミュニティのタイプによりますが、例えば、クラウドファンディング(以下、クラファン)できるコミュニティマネージャーは強いと思いますね。
クラファンして、コミュニティ内で資金を集められれば、プロジェクトはけっこう簡単に立ち上げられます。クラファンって、半分は既存の人のつながりで到達するじゃないですか。
コミュニティ内で資金とプロジェクトメンバーを集められれば、キャピタル(資本)とヒューマンリソースの両方を調達できるんです。これは、事業やプロジェクトの新しい立ち上げ方になると思います。
田中:なるほど!
黒田:キャリアの相談をして、転職したいメンバーを企業につなぐような、エージェント的なコミュニティマネージャーもおもしろいですね。
田中:コミュニティって、相互コーチング的な要素がありますもんね。
黒田:どういう企業で、どう面接をすればいいのかまで、ケアできるコミュニティマネージャーがいると、新しい選択肢を提示できる気がして。コミュニティマネージメント×キャリアアドバイザーみたいな、職種が誕生するかもしれません。
田中:コミュニティマネージャー×〇〇って、増えそうですね。
黒田:コミュニティの外と接続したり、価値を最大化したりということを考えると、別のスキルセットとの掛け算にならざるを得ない気がします。
他業種からコミュニティマネージャーへの転職っていうのも、あり得ますね。キャリアアドバイザーやファンドマネージャーから、コミュニティマネージャーになるとか。
コミュニティは成長より発酵?
田中:コミュニティって何もしないと、内側の力が強くなる感覚がありまして。居心地がいいけど、続け過ぎると、発展性がなくなったり限界集落のようになったりする。
コミュニティの成長って何だろうという「問い」があります。
黒田:コミュニティの成長って、イベントの回数や参加人数で考えられがちですが、それって見せかけというか、本質ではない気がします。広告を出せば、一時的に人数は増えるし、インフルエンサーがいればすぐに数千人集まりますから。
コミュニティでは「成長」より、「成熟」とか「繁栄」のほうがしっくりきますね。
畑の土が豊かになって、どんな種を蒔いても、いい感じに芽が出る状態は、いいコミュニティだと思うんです。
田中:なるほど、普段から耕してる感じの。
黒田:そのためには、風が何かを運んできたり、雨が降って土壌を潤したりする必要があって。やっぱり土だけじゃ駄目なんですよね。
土を「耕す」という言葉自体がカルティベイト(cultivate)といって、カルチャー(culture)と同じ語源なんです。だからコミュニティを耕すことは、つまりカルチャーを作ることなんじゃないかな。
カルチャーができてきたコミュニティには、何を蒔いても芽が出たり、おもしろいことになったりする。
田中:めちゃくちゃ、わかります。ライダーゼミでも、知らない間にカルチャーができる感じがありますね。
この「働き方ラジオ」もカルチャーに影響があると、メンバーに言われました。ワクワクすることや内発的動機づけが大事だよねと発信したら、みんなが自分のワクワクって何だろうって考え始めて。
この話もメンバーが聞いてくれて、コミュニティの解像度を深めて浸透していく気がします。
黒田:すごく大事な話ですね。ミッション・ビジョン・バリューを言葉にしたら、みんなが従うというわけじゃない。
手を変え、品を変え、言葉を変えながら、しつこく言わないといけない。それをメンバーが受け取る状況を作る必要があるので、メディアで継続的に発信するのはすごくいいと思います。
カルチャーを作るのは、そんなに簡単じゃないので、時間がかかるんです。議論メシも1か月では作れない。6年経って、今のコミュニティになったので。
「発酵」と一緒だと思いますね。発酵期間が1年必要なものは、どんなテクノロジーを使っても3日では作れないんです。
田中:じっくり発酵を待てる人が、コミュニティマネージャーに向いているかもしれないですね。
黒田:発酵させようと頑張ると、かえって駄目にしたり、自分が疲れたりするんです。
田中:わかります。発酵って、あとで気づくのかもしれないですね。
栄養はコミュニティで起こる小さな奇跡
黒田:私の発信も、実はメンバー向けのものが多いんです。
田中:6周年のコメントは、メンバーへの愛をすごく感じました。黒田さんが6年もコミュニティにはまってる理由は、何だと思いますか。
黒田:それは、ここでしか得られない「栄養」があるからだと思います。コミュニティのディスカッションを通じて、ちょっとした奇跡が毎日何かしら起こっていて。人が変わる瞬間を目の当たりにしたり、私もメンバーも気づいていないことが、数年後に何かにつながったりするんです。
関わった人が何かを始めて、大きな節目に議論メシに相談を投げかけてくれることもある。そういうことが、たまらなく嬉しいんです。その「栄養」は、個人や会社では得られない気がします。
100万人が使うようなサービスをやっていた時期もあるんですけど、手触り感がなかったんですよね。1人1人と向き合えるコミュニティは、手触り感がある。その手触りがなかなか良いというのが、続いている理由かもしれないです。
田中:逆に、コミュニティって、向き合わないと続かない感じがしますね。良くも悪くも自動化できない。驚くほどできないですよね。
黒田:できない!結構、カロリーを使います。
ZoomのファシリテーションをAIで自動化したことがあるんですけど、全然ダメでした。
やっぱり人間にファシリテーションして欲しいし、対話の相手は人間がいい。人間にしかできないわけじゃなくて、人間にやって欲しいんです。大抵のことはAIでもできそうですが、人がそれを求めていないんですよね。
これからのコミュニティは「共創分散型」
田中:メンバーが自律的にコミュニティを盛り上げるほうが、持続的な気がして、僕がコミュニティと少し距離をとったことがあるんです。でも、気づいたら、すごい勢いでコミュニティの熱量が下がってしまって。
そのときに言われたことが、コミュニティの主宰者はインフルエンサーや教祖ではないけれど、最初に火種を作った「種火(たねび)」みたいなものだから、火がなくなったときに取りに行けるように、とりあえずそこに火を焚いておいてほしいと。
黒田:なるほどなぁ。いい例え。
田中:そのときから、メンバーに任せるけど、自分なりの火は持つようにしていて。自分もコミュニティでチャレンジしたり、みんなとコミュニケーションを取ったりするようになったんです。
黒田:めちゃめちゃ大事なことだと思います。私もなるべく自分のニオイは消したいと思っているものの、完全に消しちゃいけないと思いますね。
田中:自律分散型のコミュニティなら、メンバーが主役の場を作りたくて。あんまり主宰感を出したくないんですけど、バランスが難しいですよね。
黒田:私も自律分散型のコミュニティと言っていたんですけど、「自律」はもういいやと思って、最近言わなくなりました。
「自律」は、現実に合ってない気がして。メンバーの体験を考えたときに、自律であることは本質的な価値ではない。分散はしておきたいですよね。おもしろさや熱量につながるので。なので、「分散型コミュニティ」って言っています。
田中:なるほど!同じようなことを、ライターゼミでも感じたんですよね。そこにズシンと座っていて欲しいみたいなことを言われて。僕が手を動かすというわけじゃないけど、そう考えると、自律とはちょっと違うなと思っていました。
黒田:自律分散型コミュニティは、メンバーに自律を強いちゃうと思うんですよね。私がやらなきゃいけないみたいな。
田中:まじめな人ほど、頑張ろうとしますからね。何かやりたいんじゃなくて、いつの間にか、「やらなきゃ」になっちゃう。
黒田:「個」にフォーカスしすぎなくてもいいかな。もう1つ何かを入れるとしたら、「きょうちょう」とかがしっくりきそうですね。コミュニティなんだから一緒にやろうよということで、「きょうちょう分散型」。
田中:「きょうちょう」の字は・・・
黒田:どの字にしようか、まだ決めてないです。「協調」だと、ちょっと同調的な部分があって、そろえる感じが出ちゃう。
田中:協調性があることが、褒められたころのような。
黒田:あんまりよくないなー(笑)
田中:この議論をラジオでするのいいですね(笑)
黒田:「きょうそう(共創)」分散型にしましょうか。
田中:「共創」、いいですね。共に創るけど分散している、「共創分散型」。いいじゃないですか!
メンバーが主役になるような、居場所みたいなものが、これからすごく求められると思うので。こういう場がたくさんできることが大事だと思います。
黒田:コミュニティを増やすには、運営のナレッジを広めることも必要だと思います。
議論メシの「問い」を立ててディスカッションする方法って、すごく抽象度が高くて、割とどんなコミュニティにも当てはまるナレッジなんです。この方法で、コミュニティを立ち上げたり、盛り上げたりできる。
いろいろなコミュニティがあれば、自分にぴったりのコミュニティが世の中に1つくらいはあって、孤独や足場がないような状況から脱せられるんじゃないかと思います。
「議論メシ」主宰の黒田悠介さんのゲスト回、
2023年11月25日放送分(後半)をお届けしました。
コミュニティに入って、「よくわからない」「馴染めない」と感じる人もいるのではないでしょうか。
私もその1人でした。
でも、焦らなくていいんだと思いました。
発酵のお話のように、時間をかけたほうがうまくいくこともある。
食べ物でも、発酵すると簡単には腐りません。
でも、発酵しすぎると、おいしくなくなります。
それを防ぐには、新たな素材や温度管理が必要なんです。
コミュニティへの入会は、「新たな素材」の役割を担うことかもしれません。
自律を強いない「共創分散型コミュニティ」なら、自分1人で頑張るのではなく、みんなでやればいい。
これぞ、コミュニティの醍醐味ですね!