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田舎暮らしに慣れた都会人の東京生活#4 「キミ、歌ってみない?」

「キミ、歌ってみない?」
某音楽Pにそう言われたのは6月初旬だったように思う。
まだ静岡にいた頃だ。
僕のイチナナのライブ配信を見て、何かを感じてくれたらしい。
「え、僕がですか?」
「そう、たぶん君はすごいものを持ってると思うから」
「僕がですか?!いやいや…」
確かに歌うのは好きだし、カラオケも好きだけど…。
でも、その程度だ。

東京に戻ってきてから二度、カラオケで歌を歌わせて頂いた。
「素晴らしい。すごい。他の人が手に入れられないものをもう既に持っている。本格的にやりましょう」
いや、この僕が?
信じられない。
歌が特別上手いわけでもないこの僕が?
頭の中の整理ができない。
でも、なんかめっちゃ褒めてくれている。
信じられないけど、ワクワクはする。
やってみるしかない。

そんなやり取りをしながら7月、東京に来てから沢山の一流の方と打ち合わせをさせて頂いた。
もうずっと、わけがわからなかった。
なんで僕がこんなところに?
まるで大人の中に子供が一人、混じっているかのような感じ。
わけがわからなすぎて、緊張さえしなかった。

14日、ひとつの通過点的な日がやってきた。
それは僕にとって言わずもがな初めての経験であり、東京に来てから、日々それを意識しながら生活してきた。
ボイストレーニングだ。

事前の打ち合わせで、ボイストレーナーさんから課題を与えられていた。
その課題を家や移動中にし、なんとかついていければと思ってやってきた。
でも大丈夫かな?
まだ右も左もわからない状態。

場所は幡ヶ谷の「東京自由学園」。
音楽や芸能などを学びながら高校卒業資格が取れる面白い学校の中にあるスタジオで行われる。

スタジオには立派な機材が並べられており、もちろん、こんなところで何かをするのは初めてだ。
音楽Pが見守る中、レッスンが始まる。

”ピッチ”とか”ダイナミクス”とか、音楽用語を用いながら細かく丁寧に教えて下さるボイストレーナーさん。
ついていくのに必死だ。
課題曲の2曲を、細かい指導を受けながら歌っていく。

「飲み込みが早いですね。正直もうあんまりやることないかもしれないです。次の段階にいきましょうか」
「あ、そうなんすか」
飲み込みが早いと言われているその理由もわからず、そう答えるしかなかった。

レッスンが終わり、家へと向かう帰り道。
今はまだ、始まっているものを理解できるほど頭の中の整理が出来ておらず、音楽Pに手を引かれるまま歩き出すことしかできない。

僕は一体、何者になっていくのだろう。
ボヤッとした輪郭が見えてきた。
僕はそのワクワクの方へ。

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