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ひよこ王子。

3月のはじめ。聞き覚えのない単語を聞いた。

面白いエピソードではないし、実際話を聞いているときは地獄だった。

”ひよこ鑑定士”

この資格を聞いたことがあるだろうか。

正式名称は、「初生雛鑑別師」というらしい。

一言で説明すると、

ひよこのオスメスを見分ける職業だ。


沈黙を恐れる男

この職業を知ったきっかは、数日前にPCR検査関係の仕事をしたときのこと。

3人体制で行う仕事だったのだが、そこに30代後半から40代前半ほどに見える男性がいた。彼はこの手の仕事に明るいらしく、手取り足取り教えてくださる親切な方だった。仕事自体はデリケートではあるが、単純作業で仕事量も少なく案外すぐに終わるものだった。それにも関わらずとんでもなく長い時間の契約であった。22時から朝の9時まで現場にいるのだが、2時半くらいには仕事が終わった。やることもないので本を読んだり、夜食を食べたりして休憩をするのだが、その男性は雑談が好きならしく、もう一人いた年配の女性とずっと話していた。というよりは彼が一方的に話し続けていただけだが。その時に盛り上がっていた話題が「ひよこ鑑定士」だ。

男性(Tさん)と同様によく仕事場に来ている大学生が1人いるらしい。

その大学生は就活生だが、やりたいことが無くて悩んでいる旨をTさんに相談したところ、Tさんはひよこ鑑定士を紹介したそうだ。ひよこ鑑定士はレアな職業なので需要に対して供給が少なく、儲かりやすいという話をTさんは信じていた。私も気になって後から調べると、儲かるかどうかは正直怪しいが、供給が少ない、すなわち資格取得者が少ないというのは本当だった。数年前の調べでは、ひよこ鑑定士は国内に183名しかいない。資格取得が難しいうえに、取得まで3年以上かかるというのがかなりネックだ。しかし、取得が難しいだけに資格の効果は絶大なものらしく、海外ではかなり重宝されているという。Tさん曰く、最も稼いでいるひよこ鑑定士は現在イギリスで働いているらしく、2000万円を超える年収があるだとか。

ひよこ鑑定士の仕事は至ってシンプル。

雛がオスなのかメスなのかを選別する。
資格を手にしたものは1時間に1000羽以上の雛を見分けることができるという超人らしい。肛門を見て瞬時にオスかメスかを見分けるが、その精度はほぼ100%。私も画像で見てみたが全く違いがわからなかった。

Tさんはその就活生を青汁王子ならぬ、ひよこ王子として有名にしたいらしい。

もし人生を何周でも繰り返せるなら、17周目あたりにひよこ鑑定士を目指すのもありかもしれない。

この手の話をTさんは朝の9時まで5時間近くずっと話していた。

地獄だった。


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