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言葉とイメージの狭間で

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ヨーロッパ文化史に関する話題を中心的に扱いながら、人間がいかに考え、行動するのか?を、言葉とイメージという2大思考ツールの狭間で考える日々の思考実験場
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2021年2月の記事一覧

この気候危機のなか、水さえも私物化され、金融商品化されていく

今日知って驚いた。 アメリカ・シカゴの先物取引所「シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)」は、2020年12月7日、ナスダックと提携して世界で初となる水先物を上場したという。 増大する水不足のリスクに備えて、需要量の大きい農業や製造業を中心にして水資源の管理に役立つとされているが、足りないものを資本のある一部のものが先物買いしてしまえば、水にありつけない者がたくさん出るだけだ。 ただでさえ、水道サービスが民営化されていて、料金が高騰していて、コロナ禍でも水で手が洗えない

「ホモ・サケル」シリーズとサステナビリティ

世の中の悪事や問題が生まれるのは、その悪事や問題に直接関わるプレイヤーにだけ原因を求めても仕方がない。 つまり、悪事や問題の原因として特定のプレイヤーを個別に排除していく対応では、この世から悪事や問題を廃絶することはできないということだ。 求められているのは、誰か/何かに問題の原因を押しつけてしまうやり方ではなく、この社会全体の構造あるいはシステムに潜む悪事や問題が生まれるプロセスやしくみを取り除くアプローチなんだと思う。 サステナビリティの問題として僕ら全員に問われてい

規制の再強化と自律性の再生

1980年代にはじまった新自由主義経済のさまざまな規制緩和により、多くの公的インフラが世界各国で民営化された。 また、規制緩和により国境をこえたグローバルな取引がはじまって、多くの地元の産業が衰退し、雇用は減退したり給与額が低下したりということが起こった。 小規模農家の困窮と二酸化炭素排出量の増加いち早く規制緩和によって自分たちの生活が脅かされるであろうことを感じとり行動したのは、貧しい小規模農業者たちだった。 農業ビジネスのグローバル化により、1993年には、73ケ国の

ルールとセオリー

昨日の岸本聡子さんと林篤志さんをゲストに迎えてのオンラインセミナー「コモンズを民主化する」は、とても深いお話が聞けて、僕自身、さまざまな刺激をもらえて、やってみてとてもよかったと思う。 その内容は別途レポートするとして、その中でも議題の中心のひとつとしてあったのは、コモンズの利用に限らず、時間の猶予なく突きつけられている気候変動やそれに複雑に絡みあった経済格差や人権、移民などの問題の回避に向けて、限られたコモンズ(物理的なものだけでなく知的なものも含めて)をどう効率的かつ倫