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言葉とイメージの狭間で

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ヨーロッパ文化史に関する話題を中心的に扱いながら、人間がいかに考え、行動するのか?を、言葉とイメージという2大思考ツールの狭間で考える日々の思考実験場
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2021年1月の記事一覧

無縁、あるいは、あらゆる法権利の放棄

道を自由に歩いてよいのは、法的に許されているからなのか。 空気を自由に吸いこんでも咎められることのないのは、法的に認められているからなのか。 また、他人を殺めてはいけないのは、法で決められているからなのか。 他人を誹謗中傷したりするのがいけないのも、法がそう定めているからなのか。 自由と法、やってはいけないことと法の関係をあらためて考えてみてもいいのかもしれない。 コロナ禍で不要不急の外出の流れをとめる/減らすには、法の改正が必要なのか、を問われているいまの状況だからこ

イベント「コモンズを民主化する ―― ヨーロッパの公共サービスはなぜ再公営化されたのか?」

ようやく発表できる。 『水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと』の著者・岸本聡子さんを招いて、2月5日(金)にオンライン・セミナー・イベントを開催することになりました。 この企画進めているあいだ、ずっと岸本さんのお話が聞ける機会を紹介できることを楽しみにしていた。 それくらい、岸本さんの本で紹介されている、ヨーロッパにおける水道をはじめとする、公共交通や電気や給食サービス、住宅などの生活インフラに、誰もがアクセスできるようにするための、市民運動をベースとし

わたしとわたしたちの危機

高所恐怖症だ。 丈夫そうな柵があったり、ちゃんと窓がある高層ビルの上とかは平気なんだけど、柵がなかったり、あってもその柵が頼りなさそうだと足がすくむ。 落ちちゃうことイメージが頭から離れなくなる。 でも、そのことに気づいたのはそんな昔のことではない。物心ついてからとか、大人になってからとかというレベルではなく、せいぜいここ7-8年のことだ。 ようは昔は高所恐怖症じゃなかった。 だから、はじめて高所がこわいと感じたときは、「あれっ?」と思った。 後天的高所恐怖症だ。 特に何

Bonne année 2021

2021年、あけましておめでとうございます。 2020年、社会が大きな危機に晒されるなか、デヴィッド・グレーバーに出会えたことは僕にとって大きな出来事だったと思う(その彼が9月に亡くなってしまったことも含めて)。 グレーバーが『民主主義の非西洋起源について』で書いていた、こんな言葉が新しい年になったいまでも僕の頭のなかを占拠している。 何かが起こっている。問題は、それに呼び名を与えることだ。この動きの主要原理の多く(自己組織化、自発的結社、相互扶助、国家権力の拒絶)は、