”でこぼこ”が好き

医療系の研究施設で働いている。転勤を繰り返して、今の職場は6ヶ所目。次の職場もすでに内定している。1年以内にそこへ移り住む予定だ。その勤務地は北海道。僕は写真が好きだ。これは願ってもないチャンスなのである。そのため今は写真スキルの向上に力を注いでいるというわけだ。

最近になって被写体となるものの条件みたいなものが見えてきた。秩序の淡い部分を選べばいい。さすれば追い求めている『僕の思う最高の1枚』に近づくことができるだろう。そう信じている。

そのため分かりやすい被写体に頼った写真作りからは距離を置いている。もちろん景勝地には行くが、近所の撮影も疎かにはしていな。公園を多く撮っているのはそのためだ。それに加えて最近では住宅街でも撮っている。

ここではマナーにも注意しなくてはならない。マナーというか法律だ。当たり前だが私有地には入らない。グレーゾーンも然りだ。著作権や肖像権の知識も知っておく必要がある。

誰かの作品をコピーするような撮影は禁止だ。”オマージュ”や”映り込み”等の言い訳も通用しない。肖像権が該当する場合はほとんどないが、プライバシーの問題もあるので、基本的に人は写さない。映り込ませたとしても、誰だと特定できないくらい小さくしているつもりだ。

公の場所からの撮影はOKと認識している。だからといって、その正義を振りかざすつもりはない。誰かが傷つくであろう行動は合法であっても控えている。

写真は大事だが、それは僕の中でのこと。おそらく他人にとってはどうでもいいことなのだ。そこと争うほどの情熱は持っていない。報道写真家なら失格とも思える発言だが、僕は自分のために撮っている。そもそも他人の強い不幸の上に成り立つ写真は、僕の追い求めている『僕の思う最高の1枚』ではないだろう。

制約が多いと思われるかも知れないが、実際はそうでもない。グレーゾーンでも許可を求めれば断られたことも無い。むしろ優しく対応してくれる。畑のキュウリの写真は最高だった。水を抜いた田園もすばらしい。鉄柱に刺さった空缶にも心奪われた。水路の上のフェンスに至っては不思議と見返してしまう写真となった。

公園でも同じように撮っている。花も撮ったが、それには普遍的な良さがあるので、感想もそれに引っ張られてしまう。これは今後の課題だ。樹木もいい。土の生え際が好きだ。ごつごつとした樹表がいいのである。良すぎて構図の精度が甘くなってしまったが、それをカバーするくらいの魅力がある。

僕は何に惹かれているのだろうか。樹は好きだが突出したものではない。花や石と同レベル。それも被写体としての話だ。そもそも「ごつごつとした樹表」では腑に落ちない。単に”でこぼこ”したものが好きなのだろうか。

そう言われてみると、以前に撮った「もぐらの巣穴」には妙に惹かれた。あれも”でこぼこ”していたのである。それならばと意図的に”でこぼこ”したものを狙ってみた。

家の近くには大きな池がある。そこに流れ込む川には橋も設置されているが、簡易的なものだった。すべり止めの”でこぼこ”がついた鉄板の橋だ。それを撮ってみたのである。

ブルーアワーに合わせて撮ったので、すこし反則気味だったが、思った以上にいい写真となった。被写体には”秩序の淡い部分”を選べばいいと思っていたが、それに”でこぼこ”も加えたいと思う。理由は分からないが、僕の追い求めている『僕の思う最高の1枚』には欠かせないと感じた。

気が付けばハイエンドのカメラに気負いはしなくなっていた。まだまだ使いこなせてはいないと思うが、いい変化だと思う。この調子なら北海道へ行く頃にはだいぶマシになっているだろう。早く行きたいような、行きたくないような。またすこし写真の好きの度合いが強くなった気がする。

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