バズーカが欲しくなった

医療系の研究施設で働いている。僕は短期転勤族だ。今の事業所は10ヶ所目。仕事は順調。ライフワークとしている写真も絶好調だ。この地に多い寺社仏閣に通いながら、それ以外のスポットも周っている。

無人島にも行ってみた。船で20分程。キャンプ場があるので上陸も容易だが、戦時中の遺構もあるので写真スポットとしても人気だ。

島の中には干潮時にだけ行ける場所もある。加えて帰りの船に乗り遅れると大変なことになる。故に細かくスケジュールを組んだ。すべてのスポットを巡るオリエンテーリングのようで、少々撮らされてる感もあったが、それはそれで楽しかった。やはりスタンプラリー的な撮影もおもしろいのである。

とはいえお気に入りの1枚も撮れた。やはり遺構は魅力的だ。僕のテーマとの相性もいい。美しい理由を探したくなるが、おそらくシンプルなものだろう。感情の出処は自然風景のそれと変わらないと思う。

すこし遠かったが、自衛隊の航空祭にも足を運んだ。展示されている戦闘機を目当てにしていたが、ブルーインパルスのデモ飛行も凄かった。観客席から無数に天へと伸びるカメラのレンズ。僕のはすこし短かった。それでも撮りまくった。

けれども、お気に入りの一枚はブルーインパルスではなく、高高度の旅客機だった。筋状の雲をバックに、飛行機雲を引きながら飛ぶジャンボジェットがこの日一番美しかったのである。

山奥の草原にも行った。久しぶりに日本離れしてる景色と出会った。北海道のそれを思い出したのである。どこを切り取っても美しい。この日、カメラに取り付けていたのは45mmレンズ。僕のカメラは67中判フィルム機。フルサイズ換算だと24mmの広角レンズだ。

写真は引き算と言われているが、広角レンズでのそれは難しい。どうしても意図してないものまで映り込んでしまう。それが出来るのは北海道の一部だと思っていた。だがしかし、ここでもできている。それが嬉しかった。

構図を決める上で大切なことはバランスを取ることだと思っている。けれども、それと同等に不要なものを画角から追いやることも大切だ。手っ取り早い方法だと、ボケさせてしまうこと。デジタル処理で消してしまうことも有りだと思っている。けれども、不要なものを画角に入れないことが一番である。

北海道から離れてからというもの、僕がいつも感じていた旗色の悪さはこれだった。いろいろと工夫はするが、どうしても余計なものが入ってしまう。そのためにレンズを変えることも負けと感じていた。余計なものをバランスの中に取り込むことでごまかしていた節もある。

余計なものは極限まで省いた方がいい。僕は『僕の思う最高の1枚』を目指して撮っている。おそらくそれは余計なものが全く写っていない写真となるだろう。だがこれは、理屈で分かっていても難しい。撮らない勇気も必要になってくるだろう。90点の写真を撮ってしまったら、満足して120点を目指せなくなってしまうからだ。

やはり北海道へ戻らないとダメなのであろうか。そう思いつつも、広角レンズを使わなければいいだけのこととも思っている。故にバズーカのようなレンズも欲しくなった。ときには道具に頼ることも必要なのかもしれない。予算は無いから、中古で良い物を見つけようと思う。

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