プレッシャーを感じた

引越しは完了した。僕は短期転勤族だ。次の事業所は8ヶ所目。北海道から移り住んできたが、新居が寒いのである。暖房を付けたいところだが、まだ電気は使えない。その業者を待っている。故に外出もできない。凍えそうだ。

引越は無事に終わったが、外は雪が積もっている。大丈夫。車のタイヤはスタッドレスだ。北海道と比べれば雪も少ない。引越し休暇を利用して観光地も巡った。写真も撮った。だが、なにかしっくりこない。気持ちの問題だと思う。

僕は写真が好きだ。引越し前の北海道の暮らしは最高だった。故にここと比べてしまう。よくないことだ。ここにはここのいいところがある。そう分かっていても気分は乗らない。けれども写真は止めたくない。その気持ちを抱えたまま撮り続けると決めたのである。

仕事もはじまった。待遇はリーダー。部下は3人。作業内容は”お掃除”100%だ。引継ぎ期間は3ヶ月。長いのである。前任者は同い年の姉さん。異動経験はゼロで勤続16年。僕とは真逆の経歴の持ち主だ。故に引継ぎ期間も分からなかったそう。

現場の雰囲気は穏やかだった。皆もいい人。問題なくやれそうだ。ただ変化は一切求めていないように見える。僕の技術的な知識や経験は求められていない。すこし淋しいが、その余力を写真に充てられると考えればいい仕事内容だと思えた。

すこし遠くまで撮りに行った。そこは国営公園だ。古民家も保存されている。被写体としては最高だ。縁側で干されている白菜を撮った。すこし暗いがF8.0は譲れない。戦う相手はいつも手振れだ。真剣勝負と言ってもいいだろう。

有給を使ってスキー場にも出かけた。ゴンドラに乗って山頂を目指すが、カメラも一緒だ。僕のカメラは67中判フィルム機。大きくて重い。何より目立つ。

ストックは車に置いてきた。自由になった手にはカメラ。もちろん板は履いている。滑っては撮り、滑っては撮り。たまに登って撮る。かなり楽しい。コケたら洒落にならない。大事なカメラが壊れる。そのリスクを取っての撮影が楽しかったのだ。

車通勤はすこししんどい。渋滞するからだ。朝から通勤ラッシュ。距離は短いが時間はかかる。帰宅時も同じだ。アクセルよりブレーキを踏んでる時間の方が長い。

その代わり、すこし都会だ。心なしかスーパーの品揃えもいい。毎日の料理もワンランク上がった気がする。魚も旨い。1時間ほど車で走れば漁港もあるので、そのうち行ってみたいのである。

引継ぎ期間も残り1ヶ月を切った。すこし早いが前任者の送別会が行われた。プラスして僕の歓迎会でもあるが、主役は完全に僕ではなかった。

僕は後釜を埋められるのか。業務的には問題ないと思う。苦手な作業もあるが、はったりを突き通す自信はある。恐れるものは何も無いはずなのに、僕を不安にさせるのは職場の雰囲気だろう。歴史を感じるのだ。

淡々と積み上げられた空気感がそこにはあった。それは悪いことではない。むしろ良いことだ。職場がうまく回っていれば尚更だ。リスペクトに値する。それを壊してはいけない。守りたい。強くそう思う。僕の不安は、そこから生まれるプレッシャーだろう。

そもそも、今回の人事異動は必要だったのだろうか。僕の行き先の確保が一番の理由ではなかろうか。そう思うと申し訳なくなる。僕に出来ることは何か。そこから考えたいのである。

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