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【転載】 Vol.23 しいたけ菌の渇きを潤す方法

榾木に寄り添うことは難しいです。椎茸菌はしゃべらないので、こちらが察してあげないといけないのですが、知識や経験がないと彼ら彼女らの要求を正確に理解することは出来ません。 寄り添うということは理解するということ。無知のまま寄り添っても、有難迷惑になる可能性は高いです。手間を掛ければ良いということではありません。必要な手間を掛けてあげる必要があるのです。

今回は榾木への水やりの方法をまとめてみました。方法を間違えると毒にもなってしまう水やり。必要なことは具体的な方法ではなく、考え方。農家にとって必要な知識をすこしだけご紹介したいと思います。

椎茸は栄養を他生物から摂る従属栄養素

植物は、二酸化炭素を吸って酸素を吐き出します。もうすこしだけ細かく説明すると、光を使って水を分解し、使い道のない酸素は外気へ廃棄、水素イオンはエネルギー源の作成に使われます。そのエネルギー源と空気中の二酸化炭素を使って糖を作成。すなわち、植物にとっての水は栄養素。水を飲んで日向ぼっこをしていれば、それだけでお腹がいっぱいになるというわけです。

そこへいくと、微生物の椎茸菌にとっての水は栄養素ではありません。水を飲んで日向ぼっこをしても、お腹はふくれず。そこは僕ら動物と同じです。それでも水が必要な理由は、生物が持つ多くの酵素はその反応に水の存在が必要だからです。ただ、僕ら動物は老廃物を水と一緒に体の外へ排出させるため、水の補給は減った分だけ必要。その点、微生物の椎茸菌はあまり積極的に水を摂取したり排泄したりはしないので、ただただそこに水があればいいのです。

植菌直後は散水と被膜で保湿する

そうなると、植物と微生物では水のやり方も変わってきます。植物は餌を上げるように。微生物は乾かないように。原木栽培の椎茸菌の場合は、榾木が乾かないように水をあげます。イメージ的には、子供の皮膚を乾燥から守るための保湿クリームを塗ってあげる感覚で水をあげます。榾木には導管と呼ばれる樹木時代の水の通り道があるので、切り口を湿らせてあげると効果的。ただ、水が榾木の内部まで浸透するには時間がかかるので、一回の水やりは1時間ほどの散水が必要とされています。

逆に水をあげ過ぎると、椎茸菌は榾木から水を排出させようとします。そのときは散水をしてはいけません。元気な榾木なら数日で適度な水分量に椎茸菌が自分達で調整します。逆に元気のない榾木は、いつまで経っても排水はされず。それは榾木の重さを確認することで知ることができます。原木並みの重さは弱っている証拠。水のあげ過ぎはもちろんのこと、腐朽不足や休養不足、菌の不活性も考えられます。

発生中は水やり厳禁で低湿度を保つ

それでは具体的に、散水はどのくらいの量をどれくらいの頻度で行えばいいのかと言えば、椎茸の品種、榾木の腐朽度、菌の活性具合、環境の温湿度、等々、それらを踏まえて決めるので、一概にこれといった数字は出せません。大切なことは、榾木に耳を傾けること。抽象的ですが、榾木を毎日よく観察することでしか、その数字は出てこないと思うのです。

以上となります。ご家庭で原木栽培に挑戦されてる皆さんにとって、このお話が何かしらの参考となったら幸いです。

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