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ぬるい生き物の言葉【ショートショート】#5
午前10時、快晴、二日ぶりに風呂に入る。
上半身裸のままで畳の上に仰向けで寝転がる。両腕はバンザイしている。
目は閉じている、チーチーと鳥の鳴き声がする、車の走る音。遠くで田植えをしている機械の音。微かに肌を空気が通り過ぎる。
あぁ何もしたくない。植木鉢に水をやりたくない。アルバイトに行きたくない。飯も食べたくない。生きたくもない。
わたしは仰向けに寝ている、家には誰もいない。わたしひとりだ。
梅雨はまだ来ない、初夏の午前。
頭に浮かんできた言葉を書き留めたい欲求が現れた。なんの意味もない言葉を書き残したい。
わたしはぬるりと上半身を起こし、テーブルに腰掛ける。身体感覚は寝転んでいたときと同じ状態をキープさせている。
気だるく、重い。おでこを時折テーブルに預け、その重さから逃れる。キーボードを打つ指の動きは生ぬるい。意識を覚醒させてはいけない。違う生き物になってしまう。
わたしはこのぬるい生き物として、言葉を残したいのだ。この生き物が存在したということを忘れないために。
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