破壊してやる【ショートショート】#8
まずボクは、自分の正しさを人知れず相手に押し付けることから始める。
それは、もっともらしいことを言うのだ。弁の立つボクはもっともらしいことを語る。
「何が正しいとか間違いとか、いいとか悪いとか、正義も悪もこの世の中にはなくて、自分が信じていることだけがある。だから、ボクが言うことを聞く必要も言ってしまえばなにもない」とか。
ボクは言葉巧みに「お前たちはこの世に洗脳されている、世界は何でもありなんだよ」というボクの正しさで、相手を再洗脳しようとする。
間違ったこのクソのような世界を正さなければいけない。ボクの使命はスクラップ・アンド・ビルド、ぶち壊して創り直すことだ。
ボクの名前は翔太、高校二年生。愛読書は村田沙耶香。特に好きな作品は「コンビニ人間」で、成績は上の下。彼女はいないが、ボクをおもしろがってくれる友達に囲まれている。
ある日、ボクは仲の良い友達の拓也と口論になった。
「お前は間違っている!暴力は間違っているし、何でもありなんてあり得ない!」
「そうか、拓也はそう思うんだな。じゃあ、それがお前が信じている“正しさ”ってだけなんだよ。別にその考えが絶対ってわけじゃない。人間の考えなんてどうでも良いんだよ」
「何だよそれ!じゃあ、翔太の言ってることもどうでもいいってことだよな!」
「そうだよ、どうでもいいんだ!わかってきたな拓也!」ボクは嬉しくなった。
「わからねぇよ、翔太の言ってることは狂っている!」
拓也はくるりと背を向けと、校舎の中に入っていった。
校舎は古き正しさをインストールする場所、あの中は本当に気持ちが悪い。時代遅れの正しさに洗脳された先生の目は死んでいる。生きながらに死んでいるヤツらもありだけど、ボクはそれを完全に否定する。
破壊してやる。世界を破壊してやる。そしてボク自身も破壊してやる。
スクラップ・アンド・ビルド。ボクは破壊と創造の神、シヴァ神の生まれ変わりなのだから。
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