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ありがとう。ビル・ウィザース。

ソウル界のレジェンド、ビル・ウィザースが亡くなった。81歳だった。


米ソウル歌手のビル・ウィザースさん死去 消えゆく太陽:朝日新聞デジタル


ビル・ウィザースの音楽との出会いが何時だったのかは覚えていない。

恐らく中学~高校生くらいの時、J-Popに絶望して、洋楽を無節操に聴きまくっていた時にどこかで出会ったのだろう。

気づけば僕の記憶の中に、あのむさくるしい顔があった。


しかし、当時の僕はクイーンやデヴィッド・ボウイのような「見目麗しめのロックミュージシャン」に夢中だったので、ビル・ウィザースのようなおっさん臭いミュージシャンはまったく心に刺さらなかった。


顔が小学生の頃の担任、T田に似ていたせいもあったかもしれない。
T田は当時としても珍しい体罰教師だった。

僕自身は非常に大人しい小学生だったので、T田にぶたれたりしたことはなかったのだが、同級生の容姿を茶化したクラスのすこしヤンチャな女子が、T田に髪の毛を鷲掴みにされ、引きずられている姿をみてドン引きしたのが強烈に記憶に残っている。

ちなみにT田は金八ヘアーだった。
金八ヘアーのビル・ウィザースを想像して欲しい。


いかん、話が逸れてしまった。



僕がビル・ウィザースに再会したのは去年。

当時の僕は色々な事が重なり、すっかり塞ぎ混んでしまっていた。


その朝も、目が覚めてからずっと気分が悪かった。

このままだと、これで一日が終わってしまう。
そんな予感がして、僕はAlexaにリクエストをした。

「Alexa、元気が出そうな朝の曲を流して」


Alexaがセレクトしたのは、ビル・ウィザースの『Lovely Day』だった。


朝の光のように優しく、それでいてファンキーでグルービーなベースライン。
繊細かつ力強いストリングスとホーンセクション。
可憐で慎ましやかなエレピ。
そして囁くように、楽しげに歌うビル・ウィザースのボーカル。

すべてが僕の心に染み込んでいった。
自然と笑顔がこぼれ、僕は叫んだ。


「ビル・ウィザース、めっちゃいいな!!!!」



それから、気分が落ち込んだ朝は『Lovely Day』を聴くことが恒例になった。

『Lovely Day』を聴くと、自分のどうしようもない毎日が、とても素敵なものに感じる事が出来た。

不思議な事に、この曲は晴れの日にも雨の日にも、どんな朝にもぴったりとマッチする。

どんなに味気ない日でも、この曲が食卓のアジシオのように、美味しくて深みのある一日にしてくれた。


ごめんよ。ビル・ウィザース。
T田みたいな顔してるからってずっと敬遠していたよ。

あんたは本当に素敵なおっさんだよ。
僕はこれから一生、『Lovely Day』を聴き続けるよ。
ありがとう、ビル・ウィザース……。


ビル・ウィザースは亡くなった。
しかし彼の作った楽曲は永遠に残る。

この世の中には無数の僕がいるはずだ。
そして無数の僕の心の中には、無数のビル・ウィザースがいる。

そうして彼は、これからも存在し続けるのだ。


ありがとう。ビル・ウィザース。

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