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「模倣」と「創造」

先日1件の問い合わせがあった。

内容としては「日傘の作り方を教えてほしいが、今後レッスンの予定はあるか?」というものだった。

数年前まで、日傘制作と並行して、日傘づくりのレッスンを不定期でリクエスト開催していた。

今は新規申し込みを一旦休止しているという状況。



◇ ◇ ◇ ◇

私は、昔から人に何かを教えることは好きだった。

だから数年前であれば、「もちろんいいですよー!」と快諾していたけれど、今回は早々にお断りした。

断った理由の2つは、お問い合わせ頂いた方にそのまま書いた。

① 今は自分の作品制作や、その他の業務で私の時間的余裕がない

② アトリエはとても狭く、お客さまを安心してお招きできるような環境にない



でも、実は伝えなかった理由がもう1つある。

それは、「今、日傘の作り方を人に教えたいのか?」と自分の心に問うたら、心がNOって言ったから。

別に意地悪で「誰にも秘伝のノウハウを教えないぞ!」ということではなく、今の私に、日傘作りで人に教えるようなことは何1つないと思った。

何か未知のことを知りたい(ノウハウを教えてほしい)と思ったとき、私もその道のプロに教えを乞うことはある。

実際、私が日傘づくりを始めたとき、「どこかに教室はないだろうか?」と探したものだし。



何となく見よう見まねで日傘を作ってみて、それなりに形にはなったけれど、これは果たして本当に「日傘」と言っていいものだろうか?

正式な作り方を知らなかったから、長い間、堂々と日傘を作っていると言えなかった自分がいた。

だから、私のことを「傘職人」と言ってくれる人は何人もいたが、そのたびに

「私はリメイク作家だけれども、傘職人ではないのです。」と言い直しをしていた。

そのことについて、なんとなく負い目があり、それをずっと払拭したかった。

だから、実は、傘職人に「傘づくりのノウハウを教えてもらえないか」「弟子にしてもらえないか」と過去に何度か問い合わせたこともあった。

何件か関西圏で傘のメーカーを当たってみたものの、結果はすべて玉砕。

こちらの問い合わせに対し、スルー(回答なし)もしくは門前払いであった。

「こんなに日傘づくりについて熱い思いを持っているのに、なんで伝わらないのか?」

ひどく惨めだったし、心底悲しかった。

でも、今なら断った側に気持ちがわからなくもない。

どこの馬の骨かもわからない中途半端な人間に、なぜ傘づくりを教えてあげにゃならんのだ?



結局、傘の正式な作り方は、今もわからずじまいだ。

そんな状況でどうやってモチベーションを上げ、今も日傘づくりを続けているのか。

その理由は、先生を探すのはやめたけれど、日傘そのものにとことん向き合うことで問題は解決したから。

もっと簡単に言うと、市販の日傘を買ってきて、それを来る日も来る日も細部に至るまでとことん見て、目で全体と細部を学び、模倣する。

動画のように作り方の一部始終はわからなくても、完成品は手に入る。

そして、どうやって作られたのかを想像し、再現を試みた。

1度でうまくいかなくても、何度もやり方を変えてチャレンジしてきた。

そういった試行錯誤の末、今では作品として日傘を世に出すことに抵抗がなくなった。





「模倣」から「創造」は始まる。


私の傘は、市販の傘のように機能面でパーフェクトではない。

けれど、もちろん日傘として日常に使ってもらえるように工夫して作っている。

同時に、「アート」として愛でてもらえるように創造した作品である。

プロダクトであり、アートである。

それが私の日傘の個性だ。

(オーダー頂いたお客さまの写真より)



応用(アレンジ)は、基礎があって初めて活きるものである。

この言葉を聞くたび、基礎が全くない自己流の私は、傘の業界でも、アートの世界でも、異端児だろうな…と苦笑する。

でも、それもひっくるめて、自分の手で生み出すものを心から愛している。

また、これはタラレバ話にはなるが、もし正式な傘の作り方を過去に教わってしまっていたら、今のように自由な型破りな作品づくりはできなかったかもしれない。



着物日傘を1枚の絵に見立てるとすれば、傘の骨組みが絵のフレーム、生地の部分がキャンパスのようなもの。

使われなくなった着物をリメイクで組み合わせ、1枚の絵を作り上げる。

色とりどりの傘が並ぶと、その光景はなんとも面白い。

絵のように平面ではないから、日傘を上から見たり、裏から見たり、下から見たり、色んな見方ができる。

時間帯によって影ができたり、光が当たったりすることでも、日傘は表情を変える。

そうやって来てくださった方々が面白がって、私の日傘を見てくれる光景をよく妄想する。

いつか、海外でそんな展覧会がしたい!



◇ ◇ ◇ ◇

これは2019年の秋、奈良町で行った親子展の光景。

当時はまだ海外から観光客がたくさん来ており、親子展にも世界中から観光客が立ち寄ってくれた。

展覧会にお越しいただいた方々に「お国はどこか」と聞いてみると、フランス、マレーシア、中国、ロシア、アルゼンチン、スペイン、オーストラリアなど実に多彩な顔触れだった。

早く以前のように、海外とも自由な人の行き来ができる世の中になりますように!



今日は思うまま書いたので、オチがないけど、ここまで読んでくれてうれしい!

ありがとう!

Tammy


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