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【プロフェッショナルに聞く 第10回】 税理士法人タクトコンサルティング 税理士 本郷尚 × タミヤホーム 田宮明彦

不動産や税務、建築、労務など、さまざまなプロフェッショナルに、これまで積み重ねてこられたキャリアと実績をお聞きする「プロフェッショナルに聞く」。第10回は、税理士の本郷尚様がご登場くださいました。

資産税の第一人者であり、多数の著書を著している本郷尚先生。実際にお会いしてみるととても気さくで笑顔の素敵な方で、日頃から相談者の心に寄り添ってきたことがわかります。本郷先生の若かりし頃のエピソードや、「資産税一本で行こう」と決めた時のこと、会計の神様・飯塚毅先生との思い出など、本郷先生がこれまで歩んできた人生についてお聞きしました。

<プロフィール>
本郷 尚氏
税理士法人タクトコンサルティング 税理士
1947年生まれ、神奈川県出身。大学在学中に、税理士試験合格。1973年、税理士登録。1975年、横浜に本郷会計事務所開業。その後、東京に進出。2002年、税理士法人タクトコンサルティングとして新たに組織を発足。資産税に特化したコンサルティングに強みをもつ。『相続の6つの物語』『資産税コンサル、一生道半ば』を始め、著書多数。


税理士になれば、かっこいい車に乗れる!? 若き本郷青年が税理士を目指した理由

田宮「本郷先生は、いつごろ税理士を目指すようになったのですか」

本郷様「高校生の頃です」

田宮「随分と早い時期にご決断されたのですね。何かきっかけがあったのでしょうか」

本郷様「親戚が経営する会計事務所に遊びに行った時、税理士の仕事について教えてもらったのが一番のきっかけです。かっこいい車に乗っていて、こんな車に乗れるのなら目指そうと思いました」

田宮「高校生らしくて微笑ましい動機ですね。その後、すぐに勉強を始めたのですか?」

本郷様「大学進学と同時に税理士試験の勉強を始め、在学中に合格しました」

田宮「では、卒業してすぐに会計事務所に就職なさったのでしょうか」

本郷様「そうです」

田宮「当時から資産税を専門にしようと考えていらっしゃったのですか」

本郷様「いえいえ、当時はそこまで考えていませんでしたよ。たまたま入った会計事務所の先生が国税庁出身で、不動産鑑定士の資格も保有していたことから、不動産鑑定の案件を多く担当しました」

田宮「不動産鑑定の案件とは?」

本郷様「ちょうど、税務署の路線価評価に関与するようになったんです。それで不動産鑑定の依頼が多数舞い込んだんですね。私はまだ若かったから、先生に連れられて、いろいろな現場に行って調査しました」

田宮「そうだったんですね。それで相続税や資産税の経験を積むようになったのですね」

本郷様「おっしゃるとおり。相続が絡む問題も、この時期に多く経験しました」

田宮「その後、本郷先生は独立されたと聞いています」

本郷様「最初の会計事務所に丸5年勤務した後、28歳の時に横浜で独立しました。ただ、この頃も『資産税一本で行こう』までは考えていなかったですね。過去の経験から資産税関係の案件を多く依頼していたので、自ずとそれが強みになっていったように思います。法人税や所得税など一般的な会計事務はあまり好きでなくて、資産税以外の依頼が舞い込んだ時は他の税理士にまかせていました」

10年間経営した横浜の会計事務所を明け渡し、裸一貫で東京に進出!!

田宮「ここで改めて本郷先生に教えていただきたいのですが、資産税というのはどのような領域を指すのでしょうか」

本郷様「よく『相続税専門』という看板を出している税理士がいますが、相続税というのは資産税の一部になります。相続税は亡くなった方から財産を受け継いだ際にかかる税金のことで、資産の譲渡や売却、組み替えなどは資産税になります」

田宮「なるほど、勉強になります。本郷先生の場合は、資産税全般をご専門とされているのですよね」

本郷様「そうです。今で言えばM&Aも資産税の領域です。田宮さんは『不動産M&A』という言葉をご存知ですか?  不動産取引のスキームの一つで、あの言葉は私が作ったんです」

田宮「本郷先生が作られた言葉なんですか? ということは、M&Aの分野でも豊富に実績を積んで来られたのですね」

本郷様「そんなに大したことはしていないですよ」

田宮「本郷先生、独立・開業された後のことをもう少し詳しく教えてください。横浜から今のオフィスに移られたのはいつ頃でしょうか」

本郷様「横浜から新橋のオフィスに移転したのは1994年、現在の明治安田生命ビルに移転したのは2012年です」

田宮「どのような経緯で東京進出を果たしたのでしょう?」

本郷様「横浜に事務所を構えて10年経った頃、東京進出を考えるようになりました。当時の売上比率が資産税4割、一般の会計事務が6割。私はすでに資産税の仕事が好きになっていて、一本に特化したかったんですね。それで、6割の会計事務を当時の副所長にすべて渡して、新橋のオフィスに移転しました」

田宮「まさに裸一貫で再スタートを切ったのですね」

本郷様「そうですね。当時はすでに資産税関係の本を何冊も出していたので、『東京でもやっていけるだろう』という読みがありました。ただ、資産税に特化した事務所はほとんどなかったので、業界では異端児扱いでしたね」

田宮「新橋に移転されたことで、何か変化はありましたでしょうか」

本郷様「ガラッと変わりましたよ。まず、一般的な会計事務は一切やらないのですから、経験不問で税理士募集をかけたところ、銀行出身や保険会社出身など、さまざまなバックグラウンドを持つ税理士があつまりました。『経験がまったくないのですが』と言う税理士に対しては、『どうぞどうぞ、経験はうちの事務所で積んでください』と話して。たとえるなら、梁山泊のような自由気ままな事務所になりました」

田宮「にぎやかで楽しそうな雰囲気をイメージしました」

本郷様「多少名前が売れていたこともあって、新橋に移転してからすぐに、いろいろな方が相談に来られるようになりました」

田宮「本郷先生が相談者と向き合う際に大切にしていることはありますか」

本郷様「昔流行ったドラマで、『事件は現場で起きている』と言う決めゼリフがありましたが、税理士の世界も同じです。相談者の現場に課題があります。頭で考えるのはもちろん大事だし、税務の知識も同じぐらいに重要です。しかし資産税の場合は、相談者の懐に飛び込んでみないとわからないことがたくさんあります。なぜなら、資産を取り巻く人々の『思い』に寄り添わなければ、課題解決の道筋が見えてこないからです」

田宮「本郷先生は、常に相談者の心に寄り添っていらっしゃるのですね」

本郷様「一人ひとりに心情があります。過去のしがらみを引きずっている方もいるし、悩み苦しんでいる方もいる。それらの思いを理解した上で解決のお手伝いをするのが、私たち税理士の仕事なんです」

田宮「特に相続の場合、どのように遺産を分割するかで揉めてしまうことが多いのでしょうか」

本郷様「そうですね。ただ、相談者の思いは複雑で、『節税になればいい』というものでもないんです。わかりやすい例をお話しましょう。旦那さんの生命保険金の受取人を奥さんにすると、次の相続――つまり息子さんや娘さんの相続の際にも相続税が発生してしまいます。だから節税を考えるのであれば、お子さんを受取人にした方が有利です。でも奥さんは自分が受け取ってから、子どもたちに渡したい。つまり、このご家庭にとっては、節税にならなくても奥さんが生命保険の受取人になる方が良いのです」

会計の神様・飯塚毅先生にいただいた3つの言葉を、今も心に深く刻んで――

田宮「本郷先生のお話をお聞きしていると、税務に対する強いプロフェッショナリズムを感じます」

本郷様「最初から今のような考え方を抱いていたわけではないんですよ。数多くの相談者と向き合い、経験を積む中で育まれた考え方なんです」

田宮「本郷先生には、尊敬する税理士の先生はいらっしゃいますか」

本郷様「尊敬する税理士と聞いてすぐに思い出すのが、株式会社TKCを創業した飯塚毅先生です」

田宮「飯塚毅先生、名前はよく存じ上げています。飯塚先生がご存命中に国税局と戦った実話をもとに小説家、高杉良氏が書かれた経済小説『不撓不屈』が有名ですよね」

本郷様「よくご存知ですね。飯塚先生は会計業界で神様のような存在でした。飯塚先生に東京進出について報告に行った時にいただいた言葉は、今でも忘れられません。温かな笑顔で『利他に徹しなさい。お客さまのために尽くしなさい。金銭欲や物欲、名誉欲は捨てて、新しいことを生み出す“創造欲”に生きなさい』とおっしゃってくださいました」

田宮「とても心に響きます」

本郷様「先にお話した通り、資産税に特化するという決断は、業界にとってはイレギュラーで、私は異端児扱いでした。けれど飯塚先生はそんな私を認め、このような言葉をかけてくださったのです」

田宮「なるほど。本郷先生のご決断の意味を理解したからこその言葉だったのですね」

本郷様「飯塚先生はこうもおっしゃってくださいました。税法を駆使して、節税の抜け道を探すのはやめなさいと。なぜなら、それは世のため人のためにならないからと」

田宮「とてもまっすぐな先生だったのですね」

本郷様「当時は私も若かったから、儲けたいという気持ちもあったし、世間に認められたいという気持ちもありました。『節税のナンバーワンになってやる』と思ったことだってあります。でも飯塚先生は、逆のことをおっしゃった」

田宮「利他に徹する。創造欲に生きる。そして、法の抜け道を探さない」

本郷様「税理士として経験を積めば積むほど、飯塚先生にいただいた3つの言葉が重くのしかかってきました。そしていつしか、私自身の信条になったのです」

田宮「本郷先生の言葉が、私の心に深く染み渡ってきました」

本郷様「田宮さんはまだ若いし、これからやりたいことがたくさんあると思います。夢は大きくていい。触れ合う人物を大事にしてください」

田宮「私も本郷先生のように利他の心に徹し、お客さまのためにできることを一つひとつ実践していくつもりです。先生、本日はありがとうございました」


タミヤホームでは、年間1,000件の解体工事を手掛けています。
また、解体工事だけでなく、解体工事発生前の、空き家や相続、不動産に関するお悩みを解決する無料相談窓口も開催しています。
解体工事や鍛冶工事、相続、空き家、不動産についてお困り事がございましたら、お気軽にご相談ください。



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