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9歳の彼女はそのとき
【小説】
彼女はそのとき9歳で、産まれて間もない末の妹を背負い、6歳になるすぐ下の妹の手をひきながら、抱えきれないほどの荷を背負う父母のあとを懸命に歩いていた。
少し歩を緩めれば、父母との距離は離れてゆく。自分ががんばらなければ、妹たちとともにこの地に置き去りになるかもしれない。彼女は弛みそうなおんぶ紐を右手でしっかりと握りしめ、左手で次女の手をひいて汗だくで歩いた。
自分たちが
忘れてしまっただけなんだ
【詩】
いつものカウンターで最初の一杯を飲む
まだ外は明るく少しだけ罪悪感を覚える
アルコールが空腹の胃で吸収されすぐに
脳のある機能を麻痺させまた別の機能を
日常とはまた別のsenseを目覚めさせる
グラスの氷指でかき回しながら探してる
霧のなか形を成さない粒子を凝視してる
曲が鳴る連続写真のような光景が浮かぶ
二杯めの9千キロを旅してきた酒を飲む
考えるべきことはたく