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第十一走目:ランニングハイと意識高い系サロンと、時々肉店主

2023/08/27
6.0km - 8.0km
20分

そういや、昨日祖母の面会時に何故急に退院が決まったか聞いた。

いやーもうびっくりした。頭が真っ白になって。真っ白っていうか、日付と曜日がわからなくなって。完全にボケたんよ。焦ったあ。

は?私大抵そうなんだけど?

詳細を聞いたところによると、ボケたと焦った祖母が主治医に相談すると「術後の経過も良いですし、入院していると話す量が減るから認知症が進みやすいのでそろそろ退院期かもしれませんね」とあっさり決まったらしい。因みに祖母は95歳、大腸がん手術術後経過の入院である。そもそも入院していたら日付の感覚は狂うやろ。日付云々でボケているなら私はすでにボケている。
せんせー、頭開いて好きに弄りまわって頂いて構わないので、私この病室に入院していいっすか?で、この子、意識高い系発症してるみたいなんで、主催者しか内容理解できてないアホほど高いオンラインサロンにぶち込んでいただけます?と言おうと思ったが不在とのことだった。

さて、アホでボケで意識は低くても最善は尽くす。走れると思った瞬間に最高の状態になるように準備する。テンションの上がる曲のプレイリストを作る。ランニングマシンの整備。
鏡で舌を確認する。うーん血気両虚っぽい。
気虚なら肉類、血虚なら血を増やす食べ物だったはず。確か黒い食べ物とか貝類だったはず。まあ面倒臭いので昼飯は肉。んでガンガンに血を巡らせればいい。血行も良くする。今日はストレスとなるものは全部排除していく。うん、なんか昨日よりも頭が働いている気がする。

早速焼肉屋に急ぐ。おっさんの店員の接客が感じ悪すぎてひく。名札を見ると店主とある。世も末か。
しかし仕方がないのである。彼は店主ゆえに肉の注文が入れば入るほどその部位を削がられているのである。ラストオーダーの頃にはまるまるとしたその体は三分の一になる。だから客が入ると腹立たしいのだ。
ハラミとカクテキが次第に私のテーブルに運ばれる。カクテキが思っていた量の三倍ある。これもまた店主が肉を食べさせないための策に違いない。
忘れていたが私は体調を崩すちょい前から食欲がなかった。しかし店主が身を削ってくれたので無理やり食う。全ては私のランニングと店主のためだ。なんだか筋張っていてまずい。店主、接客は止めて肉業に専念してはどうだろう。他の店員の接客はめちゃくちゃいいので、逆に店主の態度に腹が立ったので「こうね」という謎の部位を注文してやった。ざまあみろ店主。謎の部位を削がれてバックヤードでメソメソしておれ!
などと考えながらままごとの食事のように機械的に食べた。レジの人の接客が1番良かった。名札を見ると「岡田」とある。店主と同じ体格をしている。店主、そろそろ岡田くんにその座を譲ってはどうか。

黒いと言えばコーヒーだ。血流的にNGだった気がするけど。気分転換に車をかっ飛ばしてスタバに行く。スタバはどこに行っても確実に接客がよくて必ずコーヒーがある。現世に許されしギリギリラインの天国だ。家におきたい。なんなら左の計算機とノートを見比べて真剣に考える男と、マックをカタカタしながら髭を引っ張る右の男の間でランニングマシンをガタガタさせたい。
はれて私も意識高い系の仲間入りである。我々はこれで「計算機とスイカフラペチーノの消費とマックのキーボードが社会に与える偉大なる因果関係」についてのオンラインサロンを開く。月額150万である。
「我々の考える偉大さに比べたら多分安いものだ」と左の計算機男がろくろポーズをとりながら言った。
右の男は「現世に許されしギリギリラインの天国が考えたワラメロのフラペッティーノは24時間もかけることなく愛と地球を救うことが可能である」とweb記事を書いている。
私はいつも通りのアホ面で「まさしく」と言いながらフラペチーノをすすっている。しまったコーヒーを飲みに来たんだった。

帰り際昨日途中だった買い物を済ませ、帰宅後疲れたのでそのまま2時間寝る。起きる。晩飯の時間。食欲ない。なんなら胃が「よう食べはりますな。あんな、こっちが食欲出さへんってのは準備できてまへんってことなんですわ。準備中の看板出してるのに、それをまー肉だの細かい氷のスイカの砂糖水だの。その上、お好み焼き食べるゆーの?ええ加減にしなはれ!」と言うので、えらいすんまへんでしたと謝り、一口で断念。

時はきた。
無理はしない。ペースを落としても途中で止めてもいいから走る。とりあえず6.0kmから。
朝作ったプレイリストをかける。

1.氣志團/喧嘩上等
おお、たぎる。一曲目から喧嘩上等なのがら私らしい。尾野真千子のリーゼントも可愛い。かかってこいよって一緒に歌っちゃう。足が上がる。いけるいける。

2.glim spanky/怒りをくれよ
急に私の導火線に火が点く。鏡の中の私がほらかかってこいよと煽りながらニヤリと笑っている。最近遭ったいらつきがフラッシュバックする。足りない。これじゃスピードが物足りない。0.5kmスピードを上げる。

3.superfly/force
さらに思い出す。最後まで走るとかそんなのもう考えてない。抑えていた普段怒りのみで足が上がる。力を与えてしまったな。当然、0.5km上げる。寧ろ0.5で止めた手の私の理性を褒めたい。

4.b’z/兵、走る
前回のラグビーのテーマ曲だった。
この時になったらもはや砂煙とラグビー選手が私を止めようとする幻想が見えだす。もはや理性など微塵も残ってない。体は巨大で肌の色は緑と化している。ハルクだ。ハルクと化した私は敵を避けて走ったりしない。打ち返す。
「私の秘密を教えようか?いつも怒ってるんだ」
ハルクのセリフだが、私そのものだ。いかにこれでも普段私が怒りを抑えて冷静に振る舞っているか。込み上げる思いから0.5kmまた上げる。そういえば、今思い返すと幻想の中の敵チームが日本のユニフォームだった気がする。ごめんよ、ブレイブジャパン。治療費はバカから貰ってください。

5.嵐/brave
同じくラグビーのテーマ曲。ちょっと冷静に戻る。4曲目と5曲目逆だったなと思うが、櫻井くんのラップでボール後ろに投げてる自分が見えて、ちょっと嬉しくなっちゃう。きゃは。

6.レニークラヴィッツ/are you gonna my way
グランツーリスモ3でよくかかる曲。高速で聴いたらスピード違反しちゃいそうな曲。でもギターで挫折した曲。前奏の時点で8.0kmを連打する。それでも足りない。走りたい。足がレーシングタイヤになってしまっている。私はハルクでF1カーで意識が高くてヤンキーというキングオブキメラと化した。かかってこいや、スマッシュじゃゴルァァアアアと叫びながら走る。

途中で20分がきてしまった。やばい、レニークラヴィッツやばい。走り足りない。これがランナーズハイか?足が「もうちょっと走ろうよぉ」と貧乏ゆすりするのをなだめながらこれを打っている。最終的に単なるヤンキーになっていた気がするが、楽しかった気がする。うん、今も楽しい。
コツは掴んだ。ランニングをしている時はハルクになっていいのである。怒るのは得意だ。よし。ランナーズハイが近づいてきた気がする。楽しい。明日もやってやろうじゃないか。

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