金木犀の香りのありがたみ
金木犀の香りが好き
花の匂いとかあんまり分からないけど、金木犀はすごく好き
秋の散歩道でフッと香るあの香りが好きなのだ
あの香りを楽しめるってだけで、秋が好き
胸いっぱいに吸い込んで幸せな気持ちを家に持ち帰るのだ
ただ、金木犀には欠点があって、当然金木犀が咲いている外でしか香りは嗅げないし、もっと言うと秋にしか楽しめない
もっと家でも、もっといつでも楽しめたら良いのに
ずっとそう思っていた僕は、ついに発見してしまった
そう
無印良品の金木犀の香りがするお香を
「こりゃあ良い!家でも!秋以外でも!金木犀の香りが楽しめるじゃないか!」
そう思った僕は、興奮しながらレジで会計を済まし、家に帰り早速お香を焚いた
お香から登る煙を見つめながら僕は思った
「ん?これはお寺の匂いでは…?」
残念なことに金木犀の香りはあまりしない
さらに残念なことに
「もっと近くで直接煙を嗅げば金木犀の香りがするのでは?」
そう思った僕は、超至近距離で煙を鼻から吸った
すると煙が目と鼻に滲みて、鼻は痛いわ、涙目になるわでパニックだ
しかし、そんなこんなでパニックになっていると、フッと金木犀の香りが漂ってきたのだ
「これだ…これだよ…ありがとう金木犀…ありがとう無印良品…」
金木犀と無印良品に最大限の感謝をした
だって、これで本当にいつでも家で金木犀の香りを楽しめるから
夢が叶った瞬間だ
でも、大好きな金木犀の香りをいつでも楽しめるって、本当に良いことなのだろうか
あの香りは秋しか楽しめないから嬉しいのではないだろうか
あの香りは外でしか楽しめないから楽しいのではないだろうか
きっと、いろんな条件が揃わないと出会えないからこそ、あんなにも魅力的なのではないだろうか
このお香を日常的に使ってしまうと、金木犀の香りにも慣れてしまって、来年の秋はワクワクしなくなってしまうんじゃないだろうか
そう思い始めると、なんとも複雑な気持ちになってしまった
金木犀の香りに飽きが来ないように、このお香は買い足さず、ある分だけを今のうちに使い切ろうと思う
金木犀の香る来年の秋が来るのを待てるように
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