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『VTuberの哲学』の感想 Ver. 0.1 「面白い」よりも「ありがとう」と言いたい

謎に趣味 VTuber 活動を5年も続けています。
珠響そうきです。

昨日、『VTuberの哲学』を粗く読了したので、感想を書きます。

書誌情報

山野 弘樹:VTuberの哲学,春秋社,初版,2024年3月20日

どんな本?

  • VTuber のあり様を定義化・言語化する本

  • 哲学の素養はなくても楽しめる

  • 持って回ったような言い回しが少ない

  • 具体事例が豊富で読みやすい

  • 自分のVTuber観や推し活のスタンスを再発見できる

  • VTuber の起源を辿る本ではない(今に着目している本)

正直、VTuber ファンならサクサク読める部分あるので、私の感想なんて読む前に一度目を通してみてください。

「面白い」よりも「ありがとう」と言いたい

全体の感想としてはこれ
本音と書いてマジでこれ

本を読んだ感想で第一が「ありがとう」なこと、まぁないと思う
だけどすげぇ助かる内容の本だった

「面白い」理論は本当に実態を表してるのか?

多分、何人も VTuber を見ているような人は、この本の主張に、大筋の部分で同意できると思う

多分、VTuber を見てない人からすると、「面白い」不思議な文化だなと見られるのだろうが
ずっと、VTuber を見てる身からすると、「確かに」「まぁ、そうだろうな」という主張が続く

我々は、VTuber が1人の人格を持った人間だと扱っている一方で、フィクショナルなコンテンツとしても楽しめる
その微妙な視聴実践を無難に(褒め言葉)言語化してくれているなと感じた

既存の論文や論考でありがちな

  • 既存の2次元カルチャーとの違いを強調してフロンティア感を出す

  • アバターによるジェンダーの超越を説く

  • VTuber の配信方法、イベントなど事実の羅列に留まっている

などが、なかった

これの何がありがたいかというと
VTuber に詳しくない人に VTuber を説明するとき、それも、アカデミックな文脈で説明するとき、前述の特徴があると、無難な VTuber 像が伝わらなのだ

VTuber に関して、〇〇とか△△な研究・考察があって~、でも自分が思う VTuber は□□で、××な部分に興味があって~(などなど)

今までは、□□の部分で、自分なりのスコープを定めて、どういう存在かというのを自分の言葉で説明する必要があった
これからは、『VTuberの哲学』をサッと引用すればいい

だから、感想として最初に出てくるのは「面白い」じゃなくて「ありがとう」
いやほんとうに

推しについて考えさせられた

本の内容が同意できる内容ばかりなので、内容とかじゃなくて、ただただお気持ちだけ書いてしまった

内容的な部分で、考えさせられたのは
第5章の 3.3、VTuber と鑑賞者が相互にアイデンティに影響を与える部分である

そこでは、ファンの存在によって、〇〇でいられるといった事例を
歌詞などを引用して考察していた
(まるで、信仰心の量で存在力が変わる創作物の神様みたい)

そこで、少し引っかかる
「こういう、THE・アイドル的なノリ苦手なんだよな」

VTuber を見始めた当初のこと
なぜ、5年以上(もうすぐ6年だ)も VTuber を鑑賞し続けていてコメントをしないのか
ハッとした

コメントをする、特定のファンコミュニティに入り名前を得る
これらは、人間関係なのだ

私は人間関係や社会的な事柄を忘れるために趣味に没頭するタイプ
人間的な営みを強く感じる芸能人やアイドルなどは全然ハマれない

一方、私も人間である以上、人間への興味は捨てきれない

そう、だから、VTuber にハマったのだ

リスクを負わなくても、人間自身に関する深い話を聞ける
人間の面倒くささが、バーチャルなアバターと設定によって濾過されている

それを思い出して、自分が特に好きな VTuber を振り返ると
ファンネームが無かったり、ファンの決まり事が挨拶くらいだったり、(全肯定じゃない、意見が一致しないという意味で)独立した別の存在であったり、メンバーシップに力を入れてなかったり、コメントや反応をあまり求めてこなかったり

無理やり共通項を見出すなら、ファンのロールに準じなくても楽しめる配信が好きなのかもしれない

自分の推し活の態度について内省させられた
自分は未だに萌えの文化の中にいるのかも

おしまい

大体、言いたいこと言えたので、このへんで終わり

正直、バックボーンになっている哲学を全然分かってないので、またいつか、この本に帰ってきたいと思います

あと、最後に
この、極力エラーが出ないように丁寧に、概念を言語化する過程は読んでいて、プログラミングの良い設計を読んでいるような気分になりました
多分著者はプログラミング得意だと思います(適当)

本当にいい本でした

ではでは

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