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繁忙期に入る前に

繁忙期が佳境になる前に。先輩(わたし)が置いていったツールの動作確認をしてほしい、と後輩から依頼をうけた。昔の勤務先近くにあった居酒屋で、一番高い刺身の盛り合わせと、日本酒1合を飲ませる約束で、ツールを送ってもらった。

ほんとうに、これ。私の作ったツールだろうか。

コードを開いてみると、ところどころに自分の残したメモ(コメントアウト)の跡が残っている。最後の方に日付をこっそり仕込んであるあたり、確実に私のしごとだ。(日付は2年前になっていた)

それなのに、さっぱり思い出せない。こんな動きをしてたツールだろうか。繁忙期にとりあえず、報告を作るためだけに作ったツールは、動きも中も、美しさに欠ける。

コードが膨れていたので、適当に切って。あらためて作り替える。それなのに、思ったように動いてくれない。

今回、新しく付け加えた機能が、わたしの手に余っているからなのか。はたまた、コードをとりあつかうのが、久しぶり過ぎるのか。(どっちもだ、という気がしてならない)

昔作ったツールたちをひっくり返して、コードを読んで。似た動きをしていた部分を張り合わせて、なんとか作っては見た。けれど、美しくない!動きも鈍い。とりあつかうデータ量が、2年前の倍近くに増えているから、この動きでは望む速さで集計が出来上がらない。

さすがに、3年も過ぎると勘がにぶくなる。統計についての知識も、ひからびた。ツールなんて、もう、作れないみたい。

いつまでも、慕ってくれる後輩たちを、かわいく思う。そのことが嬉しい。でも、仕事に関わる仲間として、後輩たちと関わることは無理みたい。

結局、ツールの設計だけを簡単に作り直した。やっつけで切り貼りしたツールも、念のために添付した。そして、後輩にメールを入れた。

「繁忙期になるけれど、身体に気をつけて、がんばれ。そして極力、休め。ツールやアイデアで、繁忙期を手伝うことはできないけれど、愚痴は聞く。これまでも、頼ってもらえてうれしかった。ありがとう」

メールに、そう書き添えて、送り終えた。

ああ。わたしはもう、技術者をやめたんだな。ぽつんとさびしくなった。

けれど、さびしくなるほど打ち込んでいた時間の全てが。ただの「自分」でいるための時間になった。ますます、自分のままに過ごしていこうと、少しすっきりした気分にもなった。

席を離れて、戻ってきたとき。メールの返信に気づいた。

開いてみたら、後輩から。ツールと設計について、お礼が書いてあった。そして、文末に書き添えられたメッセージに嬉しくなった。

「春が来たら、現場の酒をもちこみます。その時は、愚痴や仕事の話聞いてください。嫁もつれてゆきます」

嫁!! 結婚したらしい。結婚祝いは何にしようか。あ、でも。まだ春までは時間がある。ゆっくり、考えよう。

今日は、こんな一日。

#繁忙期 #後輩 #かわいい #結婚祝い #頼る #卒業

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昔のツール引っかきだしたり、うだうだとコードながめたり。かちかちしていた頭の中、表せそうなイラストや写真を探して、Sakuさんのイラストにたどり着く。

うん、わたしの頭の中、こんな風。イラストをお借り出来て嬉しいです、ありがとうございます。

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