すべてから解き放たれる時間を
いつもより、ゆっくり。ていねいにお茶を入れる。
まず、やかんで湯を沸かす。
湧いた湯は湯のみ茶碗に入れる。器を温めるため、熱すぎている湯の温度を下げるため。
準備しておいた急須には、緑茶の葉をぱらりといれておく。
湯のみ茶碗が、いいあんばいに温まったら、茶葉を入れておいた急須の中に少し温度の下がった湯を戻す。
急須からただよってくる、お茶の香りを感じながら、ほどよい水色になるのを待つ。香りや水色を見るのに自信がないときは、そっと急須のふたをずらして中を見る。緑茶の葉が、はらりとふっくら戻ってあれば、飲みごろかと。
温めておいた湯のみ茶碗に、そっと。急須から茶を注ぐ。
うちにある急須だったら、一度に湯のみ茶碗3杯分の緑茶を入れると、程よくおいしく入れられる(気温にもよるけれど)。
*
今日、こんなにもていねいにお茶をいれたのは、おやつを真剣に食べようと思ったから。
先日、奥村まほさんによるおやつの楽しみ方を知った。
わたしも毎日、おやつの人だ。食べるの好き、なにか作るのも好き。
けれど、まほさんのように「食べる前によく眺める」なんて、これまでしたことなかったかも……
今日のおやつは、お気に入りの塗りの皿にのせてみた。この塗りの皿は、和菓子用なのだけれど、我が家ではここにプリンがのることがある、チョコレートならべるときもある。
塗りの器が好き。
「ふふふ。しめしめ。塗りのおさらは、きょうもきれいね。何をのせても、高級に見えるわ」とうっとりしてきた。器は見るけれど、おやつは眺めて来なかった気がする。
うっとりとお皿をながめ、うっとりとおやつもながめられれば。
うっとりxうっとりで、食べ過ぎも防げる気がしてきた。
よし。
おやつも、真剣に愛でよう。真剣に食べてみよう。
そうしたら、あわせてのむお茶も、真剣にいれたくなった。
そして、冒頭。
いつも、真剣におやつを食べるわけではないけれど、たまには。こんな風に、真剣におやつを食べてもたのしい。
のんびり、おやつのときも、器に盛って食べてみよう。
おやつを食べているとき、私は自由です。あなたは自由です。すべてのものから解き放たれています。
そして、今日のおやつ!
月餅を緑茶で。
うっとりと、ゆっくりと。
もぐもぐ、むぐむぐ。
今日は、格段においしかった。
すっきりと。なにもかもから、解き放たれた時間だった。
また、やってみよう。
次のおやつは、何にしようかな。
どの器に入れようかな。
飲み物は、どうしよう。
たのしみがまた、増えた。
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タイトル上の写真は、のびつまさんの作品。やわらかな色であったかな景色に、こころほぐされる。写真、つかわせていただきました。ありがとうございました。
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