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たのしいことも、みつかる。この春

「水を多く触るから、やっぱり手がぼろぼろになる。よく効きそうなハンドクリームって、なにかあるかな。前にもらった、はちみつのハンドクリーム、また分けてくれない?」

「いいよ、またいつものお店でパフェをおごって。あのお店で待ち合わせね」

これが、いつもの。彼女と私のやりとりだ。

冬が始まる前に、一度。彼女用に調合したハンドクリームを手渡した。そろそろ、あのハンドクリームが無くなる頃あい。

彼女は、どうしているかな。

そんなことを考えていた日。彼女からメッセージが来た。

「ハンドクリームは、まだあるけれど。あのパフェ、食べに行こう」

彼女は、お花屋さんではたらいている。フラワーアレンジメントを作ることを、主な仕事にしている。

いつもの年だと、3月には手がかさかさになってしまうくらい、多くの花を扱っている。それなのに、今年はさっぱりらしい。

「おかげで、手が荒れないまま春になりそうよ」

彼女は笑っていたが、お花屋さんの中は深刻になりつつあるという。ニュースでちらりと読んだときは、そんなものかと思っただけだった。けれど、友人の口からきくと、言葉だけだったニュースが自分の内へ染みこむ。

花を育てる農家は、多くの花が使われることを見こして花を作る。3月に合わせて作ってきた花は出荷時期を迎えた。それなのに、売る先がいつもより少ない、らしい。

売る先が少ないから、お花屋さんでの仕入れの量も減る。フラワーアレンジメントにして売れていく、お花の量もかなり少なくなっているという。

「せっかくだから、お花を買おうか。ひとりぶんは、少しだけれど。みんなで、ちょっとずつ買えば増えるんじゃないかな」

「大丈夫、気にしないで。オフィスや学校、お葬式などで、それなりにお花は出ていくから」

そう彼女は言ったけれど、やっぱり気にかかる。

街に出た時に、お花を買ってかえろう。いつもは、週に1度しか買わないけれど、しばらくは週に2度、買うようにしてみよう。

今、部屋の中には。いつもの倍の量の花。

花びんがたりないから、ガラスのコップや陶器の器も活躍中。

あちこちに、ぱらぱらと花を活ける。
部屋の中に、春が持ち込まれた。

花があると、目がたのしい。ほわっと感じる香りも素敵。

この機会に、これからも花は週に2度、買うことにしようかな。もしかしたら、3度にしてもいいかもしれない。

おもいがけず、花だらけの部屋に満足。

こうして、またひとつ。たのしいことが増えた。

緊張を強いられる場面が増えていたから、お花にうっとりして帳消しにしよう。

今回の外出自粛騒動(?)にも、いいことがあった。と記録しておく。

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本文上に花束の写真を使いたくて、探していたら出会ったオゼキカナコさんの作品。

真の意味で「やりたいこと」を考える時、本当は「仕事」という視点を取っ払わないといけないと感じる。

そうだな、と。ふむふむする。

「やりたいこと」に制限をかけず、まずは自分の内にある「やりたい」気持ちを認めていこう。自分にも、そう伝える。

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